クラウドAIのコスト課題を打破する「Qira」のローカル戦略――Lenovoが見据えるAI PCの普及と進化:Lenovo Innovation World 2026(1/2 ページ)
Lenovoといえば、PCやサーバにおける世界有数の大手メーカーなのだが、最近は「Qira(キラ)」というブランドの元でグループ/デバイス横断のパーソナルAIに取り組んでいる。これは、ハードウェアメーカーだからこその判断が働いているようだ。
最先端AIモデルの開発と、それらAIを活用したソリューションが“花盛り”だ。
そんな中、最大手PCメーカーであるLenovoは、「Qira(キラ)」というブランドの元でグループ/デバイス横断のパーソナルAIに取り組んでいる。「ChatGPT」や「Gemini」のような他社の既存サービスと直接競合するのではなく、あくまでも年間2億台超の出荷台数を誇る同社グループの幅広いハードウェア資産を生かしてマルチデバイス/マルチOS連携を行い横断動作する、ユーザーの意図を理解する、よりパーソナルなAIを目指すという。
「フロンティアモデル」と呼ばれる最先端AIベンダーとパートナーシップを結びつつ、特定のエコシステムに閉じない、よりオープンかつ自社グループの特徴を生かしたAI戦略を推進していく。
対応デバイスが徐々に広がる「Qira」
LenovoがQiraを初めて打ち出したのは、1月に米ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2026」だ。
この時点において「対話型チャットからさらに進んだ『AIエージェント』の時代に最適化されたハイブリッド型AI」として紹介されたQiraだが、9月にドイツの首都ベルリンで開催された「Lenovo Innovation World 2026」の時点において、80以上のPC/タブレット/スマートフォンで展開されている。3月にスペインのバルセロナで開催されたMWC 2026の時点では20機種だったことを考えると、段階的ではあるが対応機種に広がりが見えてきた。
このことにより、ユーザーのフィードバックが増え、それを踏まえた改善も進み、PC版ではアプリのインストールサイズが約67%も削減され、安定性も向上して軽量/効率化が進んだ――LenovoのIDG(Intelligent Devices Group)でAIエコシステム担当のバイスプレジデントを務めるダン・デリー氏はそう説明する。
現在のAIモデルは、クラウド上での動作を前提としたものが多い。それに対して、Qiraはクラウドとローカルデバイスでの協調動作を基軸とする「ハイブリッドAI」であることが強みで、特にローカル側の動作を重視している。
結果として、Qiraを動かすには相応のマシンパワーや動作リソースを要求されることになるのだが、アプリサイズの縮小や安定化により、16GBメモリ搭載のメインストリームPCや他のデバイスカテゴリーへの展開も容易になった上に、さらなる機能追加の余地もできたという。
より具体的にいうと、「Android 17」を搭載するLenovoタブレット/Motorolaスマートフォンや「moto watch ultra」への展開の他、「Gmail」「Slack」「Outlook」といったWebベースのサービスとの連携が可能な「コネクター」の提供、「Notion」や「Perplexity」との統合、さらに「Catch Me Up」(通知要約機能)の強化など、対応デバイス拡大や機能強化が段階的に進んでいる。
Qiraはユーザーの行動を記憶し、その意図を理解しながら“プロアクティブな”動作を行うことを売りとしている。ゆえに、プライバシーと即応性の観点から、基本的にAIのローカル処理を前提としている。これが、ローカル動作するマシンにある程度の負荷を要求する理由にもなっている。
ただし、汎用(はんよう)的なAI処理では収まらない、より高度な計算や処理が必要になる場合にはクラウドへのアクセスが発生する。加えて、デバイス間で作業情報を共有して、別のデバイスに移動しても作業をすぐに再開できる“継続性”も重視している。
ハイブリッドAIを志向している通り、クラウド処理とローカル処理をうまく振り分けている格好だ。
日本未発売のスマートフォン「motorola edge 70 plus」もQiraに対応している。その下位モデルで日本でも発売される「motorola edge 70 fusion」も、ソフトウェア更新によってQiraに対応する見通しだ
Lenovoでは先般、「Smarter AI for All(よりスマートなAIをあらゆる人へ)」をキャッチフレーズとしている。それだけに、Qiraは段階的な機能強化/拡張を行いつつ、対応デバイスも広げている。ローカル処理を重視しつつも、メインストリームPCやスマートフォン、ウェアラブル系デバイスでも利用できるようになってきた。
文字通り、LenovoやMotorola Mobilityのデバイスであれば、どれでもAIエージェント時代のパーソナルAIとしてのQiraを利用できる環境が整いつつある。
なお、Lenovoは中国において独自の「Tianxi(天禧)」というパーソナルAIを展開している。Qiraは中国“以外”の国/地域を対象に提供するもので、Lenovoのルカ・ロッシ氏(エクゼクティブバイスプレジデント兼IDGプレジデント)は「将来的にはLenovo/Motorolaデバイスのみならず、IP(知的財産)の提供を含めた他社製品との連携も模索している」と語った。
現在はまだ発展途上のQiraだが、今後スマートデバイスがパーソナルAIを標準搭載するのが当たり前の世界になると、IPの提供を受ける形を含めて、連携するグループ外企業が出現するかもしれない。
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