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コラム

クラウドAIのコスト課題を打破する「Qira」のローカル戦略――Lenovoが見据えるAI PCの普及と進化:Lenovo Innovation World 2026(2/2 ページ)

Lenovoといえば、PCやサーバにおける世界有数の大手メーカーなのだが、最近は「Qira(キラ)」というブランドの元でグループ/デバイス横断のパーソナルAIに取り組んでいる。これは、ハードウェアメーカーだからこその判断が働いているようだ。

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ソフトウェアへの投資を重視するLenovo

 Lenovo Innovation World 2026の基調講演の後、筆者はロッシ氏にインタビューをする機会を得た。世界最大手のPCメーカーかつITハードウェア企業として、業界の今後数年を占う示唆的な話があって非常に興味を引いた。

 特に同氏の指摘で面白かったのは、フロンティアAI開発とサービス提供に巨額投資を続けるAIハイパースケーラに対する考察だった。彼らが個人ユーザーに提供している月額20ドル(約3160円)クラスのサブスクリプション式のサービスは、実際の推論コストに対して値付けが“安すぎ”で、持続可能なものではないというのだ。

 確かに、最近は中小企業(SMB)だけでなく大企業のユーザーからも「クラウドAIのトークン課金の負担が段々と重くなっている」という声が聞かれるような状況にある。結果として、「多少高価でもAI PCを導入して、ローカル処理をした方が(トータルでは)経済的」といったように費用削減の観点に立ったIT投資に対する見直しが起きつつあるという。

 ただ、AI PCを導入するにしても、ここ1〜2年はメモリ価格の高騰を主因とする本体価格の上昇が顕著で、価格上昇によるPC需要の減退も見られる。ロッシ氏はこれらの事象を認めた上で、「今後も3カ月〜半年程度は(PC価格の)上昇傾向が続き、平準に向かうのは2027年、そして需給バランスが正常化して市場の回復が進むのは2028年以降」と述べている。

ロッシ氏
インタビューに応じたLenovoのルカ・ロッシ氏

 LenovoはPCやサーバにおける最大手ハードウェア企業の一角を占めているが、ロッシ氏は今後の5年間は相対的にハードウェアよりもソフトウェアに、より多くの投資を行うとも語る。

 Qiraは競合他社との差別化要素になりうる一方で、何より今後のデバイスの価値を定めるのはソフトウェアによる体験の方であり、ハードウェア単体を売る戦略ではなく、パーソナルAIのコンテキストを中心に据え、それを支えるエコシステム基盤を構築するのが重要との認識だ。

 そのためにも、Qiraのようなソフトウェアがよりユーザーに“近い”デバイスに存在する必要がある。今回のQira対応デバイスの大幅拡充に見られるように、ハードウェア業界の最大手企業としてのメリットを生かした製品展開を行うことが重要ともいえる。

Qira
Lenovoは今後、Qiraを中心にパーソナルデバイス戦略を組み立てていく

 他に興味深かったのは、「今後12〜24カ月の間に『AIのためのマシン』が登場する」という話だ。対人インタフェースとしての「マシン」ではなく、他のマシンと“対話”するための新カテゴリーの「マシン」が登場するというのだ。具体的には、ユーザーがメインで利用するデバイスに対してサービスを提供するために、複数のAIエージェントを走らせておくものを想定しているという。いわば「AIエージェント専用ハードウェア」ともいうべき存在だ。これは部屋やオフィスなど、さまざまな環境に設置される「ステーション型デバイス」となり、例えばQiraにおけるユーザーの“コンテキスト”を把握するための「センサー」であり、接点となるとのことである。

 ロッシ氏がこういう話をするということは、Lenovo自身がそういうデバイスを計画し、内部的に準備を進めているものと思われる。恐らく、競合企業も含めて複数のメーカーから同時期にその類いの製品が登場することになるのだろう。

 ローカルAIを動かすAIマシンに注目が集まる昨今だが、それをより手頃な形で導入する礎になるのかもしれない。

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