月1200ドルのAIコストが電気代20ドルで済む? NVIDIA「RTX Spark」搭載PCのデモで見えた“ローカルAI”の実力(2/2 ページ)
NVIDIAがWindows PC向けSoC「RTX Spark」に関する記者説明会を開催した。そのデモンストレーションの様子を紹介したい。
動画の超解像処理もオンデバイスで余裕
RTX SparkのGPUコアは、GeForce RTX 50シリーズと同様に「4:2:2フォーマット」のH.264/H.265コーデックにネイティブ対応するデコーダーとエンコーダーを搭載しており、色情報がより多い動画のデコードやエンコードも快適に行える。
これにLightricksの動画/音声生成AI「LTX-2.5」と、NVIDIAによるAIベースの超解像/フレーム補間/明暗差拡張技術「RTX Video」を組み合わせることで、フルHD(1920×1080ピクセル)/30fpsで生成した動画を、4K(3840×2160ピクセル/120fps)にアップスケールした上でHDR(HLG規格)映像として高速に書き出せる。
出来上がった映像を見比べる。左はフルHD/30fps/SDRの映像で、右はRTX Videoによって4K/120fps/HDRの映像に“変換”したものだが、パッと見でも右の映像の方が明暗差がよりハッキリと分かる
動画関連では、AIエージェントアプリ「Hermes(エルメス)」を使って、Blackmagic Designの動画編集アプリ「DaVinci Resolve」をコントロールするデモも披露された。
このデモでは、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの基調講演を収録した動画素材について、プロンプトで「NVIDIA Spark搭載ノートPCのモーメント(映っているシーン)を探して、Sparkというタイムラインに挿入して」「メディアパッケージを保存して」「選択した要素をリフレームして」と矢継ぎ早に指示をして、SNSでシェアするための動画を制作する様子を見ることができた。
プロンプトを入力すると、オンデバイスで稼働するHermesが指示通りにDaVinci Resolveを操作し、SNS向けの縦長動画が見事に書き出された。RTX Sparkのパワフルさも手伝って、思ったよりもスムーズなことに驚くばかりであった。
ビジネスやプログラミングにも役立つRTX Spark
ゲーミングや動画編集のデモンストレーションに気を取られそうになったが、RTX Sparkはビジネスやプログラミングの効率化にも役立つというデモも披露された。
ビジネスという側面では、昨今のクラウドAIにはトークン(AIが処理するテキストの単位)で従量課金するサービスが多く、AIを活用するほどに課金(トークンコスト)が膨大になるという課題がある。これは見方を変えると、手元のPC/サーバでAI処理を行えば、少なくともトークンコストは大幅に削減できることもあるという。また、処理をローカルで完結させることで、外部に情報を送信することなくAI処理を行えるというメリットもある。
RTX Sparkは強力なGPUを搭載しており、高性能な生成AIを稼働させられるポテンシャルを備えている。メモリ容量が最大128GBで、しかもCPUコアとGPUコアで共有する設計(ユニファイドメモリ)なので「AIモデルがメモリに収まるのか?」という懸念を持つ人もいるかもしれないが、最近はオンデバイス稼働を前提にモデルを量子化(コンパクト化)する動きもあり、メモリ容量を節約しつつ生成AIのメリットを享受しやすくなっている。
毎月6100万トークンをクラウドで使うと月間1200ドルのトークンコストがかかるところ、RTX Spark搭載PCであれば月間20ドルの電気代で済みますよという図。RTX Spark搭載PCの課題は“価格”にあるが、この規模感でトークンコストを掛けているケースなら11カ月ほどで購入代金を回収できてしまうともいう
ビジネスシーンでのデモンストレーションでは、ローカル稼働するHermesがユーザーの「Google Workplace」を操作し、メールの要約、タスクの進捗(しんちょく)管理とアラート提示、スケジュール(タスク)の重複回避……といった作業をユーザーの代わりに行っていた。
連携先であるGoogle Workplace自体はクラウドサービスだが、作業自体は手元のRTX Spark搭載ノートPCのオンデバイス処理で進行する。事前にGoogle Workspace側でデータ共有設定をする必要があるものの、別のクラウドサービスにデータを“投げる”わけではないため、プライバシーやセキュリティの面でより安全に処理できることは間違いない。
プログラミングのデモンストレーションでは、Poolen Roboticsのオープンソースロボット「Microduck」のGitHubページの情報をもとに、Hermesに「このロボットは何ができて、どういうプログラミングができるのか?」という点を解析させ、できることを提示してもらった。その上で、「レポジトリをクローニングして、その構造を理解するところから始めたい」と指示すると、レポジトリをもとにしてサンプルコード(プログラム)を出力してくれた。
従来「プログラミング」というと、自分で技術文献を読んでみたり、サンプルプログラムを実行してみたりといった形で習得していく必要があったが、AIエージェントを活用することでより効率的に学習を進められるようになる。
また、実務でプログラミングする際にも、「どういうコードにすればいいのか?」といった“壁打ち”(相談)もエージェントを相手に行えるので、作業の効率を改善しやすい。
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