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» 2007年04月27日 11時00分 公開

ナナオイズム:第1回 「ナナオイズム」はいかにして生まれたか――。その原点に迫る (1/3)

高画質・高品質で定評のあるナナオの液晶ディスプレイ。常に最高を追い求める彼らの姿勢は、PC向けから医療向けまで徹底して貫かれている。そんな「ナナオイズム」は、どのようにして生まれ、どのように進化するのだろう。これまでの歩みを辿りながら、ナナオの素顔に迫る。

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欧州で培った高品質と信頼性を逆輸入

 石川県の小松空港より車で約30分。日本海からの潮風を受けながら国道8号線を走ると、突如見慣れた製品ロゴを配したナナオ本社ビルが姿を現す。

ナナオ本社ビルの写真 のどかな田園風景に突如現れるナナオ本社ビル

 高画質・高品質なディスプレイのメーカーとして定評のあるナナオの歴史は、1968年にナナオの前身である羽咋電機が設立されたことに始まる。当時は白黒テレビのOEMやカラーCRTを用いたテーブル型インベーダーゲーム機の開発などを行っており、後のディスプレイ事業とアミューズメント事業の柱となる。

 1973年、商号を「ナナオ」に変更し、1979年には七尾電気の株式を取得して子会社化した。今でも地元では七尾電気として親しまれているという。

 1985年5月、同社は自社ブランド「EIZO」で欧州向けにPC用CRTディスプレイの販売を開始した。EIZOは「映像」の意味で、映像分野で一番になるという決意表明として命名されたという。欧州で市場参入した理由は、たまたま当時の営業担当者がヨーロッパ好きだったからという冗談のような本当の話もあるが、もちろんそれだけではない。世界に名だたる有名ブランドがしのぎを削る欧州には、良いものを長く使うという文化が根付いている。ナナオが目指すこだわりの物作りは、まさにそこにあった。

 まずは欧州各国でのニーズに応えられる物作りを目指す。それを目標に、営業担当者は開発部門と密に連絡を取り合い、CRTディスプレイを担ぎながら取引先を走り回った。その結果、今も引き継がれる品質に対する高い意識が生まれた。物作りに対するナナオの理念、それを「ナナオイズム」と呼ぶならば、それはヨーロッパの文化に育てられたと言えるかもしれない。

「EIZO」ブランドで欧州向けに出荷されていた初期型のCRTディスプレイ

 EIZOブランドは、上質なものであれば多少高価でも受け入れるというドイツ語圏で特に人気だ。石川県の本社敷地内にある工場で生産されるディスプレイの半分以上は欧州に輸出されており、スイスとスウェーデンの子会社やその他各国の代理店からユーザーのもとへ届けられている。代理店は、1カ国につき1代理店という一手販売代理店契約を行っている。20年以上の信頼関係を培ってきた代理店からは、単なる仕事上のパートナーではなく、“信”でつながったパートナーであると称賛されたという。

苦戦しても理念を貫く。それもナナオイズム

 そんなナナオも、1985年9月に「NANAO」ブランドで進出した北米では長らく苦戦を強いられた。北米には「WOWファクター」という考え方があり、形状が分かりやすい、ブランド力がある、安い、の3つの視点で製品選定を行う。NANAO製品は、品質へのこだわりから他社に比べて価格がどうしても高くなってしまう。そのため、スタンダードディスプレイは想像していた以上に伸びなかった。

 それでも諦めず市場開拓を進めたところ、ある業態がナナオのディスプレイに目を付けた。金融機関である。金融機関のディーリングルームでは、1人のトレーダーが複数のディスプレイを使用して変動する株などの金融商品の売買を行っている。ミッションクリティカルな場面だからこそ、高い表示性能や信頼性が求められていた。

 早速、北米の子会社とともに金融機関で営業を行ったところ、行く先々で高評価を得ることができた。見た瞬間納得する表示品質、そして液晶ディスプレイの額縁を細く仕上げるという世界初の試みは、WOWファクターの「形状の分かりやすさ」に合致した。限られたスペースに複数台のディスプレイを隙間なく並べて、画面に表示される株価などの情報を同時に目で追わなくてはならない彼らの心をとらえたのだ。

 市場シェアを拡大する目的で価格を下げても、それはビジネスとして健全な姿にはならない。たとえ価格が高くなってしまおうとも、品質や付加価値は下げない。それもナナオイズムだ。

 1991年7月、ナナオはNANAOブランドで日本国内向けにもPC用CRTディスプレイの販売を開始する。その結果、欧州ではEIZOブランドが、日本と北米ではNANAOブランドが存在することになった。

 製品ラインアップが同じにもかかわらず、2つのブランド名があるのはおかしい。そこで1996年4月、EIZOとNANAOを「EIZO」に統一した。1つのブランドを消すという決断は、苦渋を極めた。ただしそれは、ブランドを統一して同じ製品であることを強調するためにも、必要な作業だった。

 当時の顧客でロンドンに本社を置く金融機関が米国でディスプレイの購入を検討した際、米国ではNANAOのブランド名を採用していると知らず、「EIZOはないのか」と質問されたのもきっかけとなった。ワールドワイドに展開するグローバル企業と付き合う上でも、ブランド統一は重要だったのだ。ちなみに、そのときの名残からか、ナナオの英文社名はEIZOとNANAOの両方が入った「EIZO NANAO CORPORATION」である。

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