第1回 「ナナオイズム」はいかにして生まれたか――。その原点に迫るナナオイズム(2/3 ページ)

» 2007年04月27日 11時00分 公開
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蓄積した技術をバーティカルマーケットへ

 日本国内では、特に医用画像表示ディスプレイ「RadiForce(レディフォース)」やグラフィックス市場向けディスプレイ「ColorEdge(カラーエッジ)」シリーズの販売が堅調な伸びを見せ、連結経常利益は従来予想の100億円から115億円、連結純利益は60億円から75億円に増額した。好業績から年間配当の従来予想を上方修正している。バーティカルマーケット(特定分野)での製品立ち上げは順調だ。

 RadiForceは、胸部X線、CT、MRIなどの医用画像のフィルムレス化のニーズに応えた製品だ。医用画像の情報量に適した解像度のディスプレイが選択でき、画面の回転や高さの調節が可能なエルゴノミクスデザインを採用するなど、医用画像を熟知したきめ細かい対応に評価が集まった。

医用画像表示ディスプレイ「RadiForce」シリーズ。カラーやモノクロ、キャリブレーション用センサー内蔵など、医療現場の用途に合わせてディスプレイを選ぶことができる

 もっとも、ナナオの開発者が初めから胸部X線など医用画像の見方を理解していたわけではない。医療の専門家を講師に呼び、セミナーを開催して勉強会を行った成果である。愚直なまでに製品と向き合い、より良い製品を提供するため真摯に取り組む。ナナオイズムの一面がかいま見られる製品の1つだろう。

 価格競争の激しいPC用液晶ディスプレイでも、ワイド型を含む20インチ以上の大型液晶ディスプレイの販売が堅調に推移している。特に24.1インチワイドは国内で人気があり、直販サイト「EIZO Direct」でも順調に実績を伸ばしている。

フルHD解像度も表示できるWUXGA(1920×120ドット)対応24.1インチワイド液晶ディスプレイ「FlexScan S2411W」とWSXGA+(1680×1050ドット)対応21.1インチワイド液晶ディスプレイ「FlexScan S2111W」

 昨年6月よりスタートした世界初の液晶ディスプレイBTO「MyStyle 112」も、徐々にだが法人を中心に浸透し始めた。法人の場合はもちろん、個人の場合でも、顧客ごとに液晶ディスプレイに対する要望が大きく異なる。それらを漏れなく汲み取るため、BTOというソリューションにたどり着いた。仕様のカスタマイズは出荷までに時間がかかるという概念を、国内生産による迅速な対応によって覆したことも評価につながっている。

 このほか、ここ数年は液晶テレビ「FORIS.TV(フォリス)」にも力を入れている。普通のテレビとは違ったスタイリッシュさが売りで、ビジネスモデルは直販中心という、量販店に頼り切らない新規販路の開拓を図っている。テレビ開発のきっかけは、いずれ動画用(テレビ)と静止画用(PC)の両分野のディスプレイが融合される時代が来るとにらんだからだ。大型液晶パネルの低コスト化と高性能化、地上デジタル放送のスタートなど、新しいビジネスチャンスがある分野であったことも背景にある。

液晶テレビ「FORIS.TV」。左から順に、32V型「SC32XD2」、26V型「SC26XD2」、20V型「SC20XD2」

愚直なまでに信じる道を進むことが評価につながる

 こうした物作りの場として、ナナオが選んだのは石川県だ。なぜ石川県なのか。創業の地であることはもちろんだが、それは、毎日地道な作業をこつこつとこなす製造ラインの従業員を見れば分かるという。静かに、しかし着実に作業する県民性は、ナナオの原点であり基礎でもある。一時は海外生産を検討したこともあった。しかし、これまで積み重ねてきた製造工程でのノウハウを継承することは難しく、EIZOとしての品質を保てないと判断して断念した。

 品質が高いと評価されても、技術者は「ごく当たり前のことを普通に続けてきただけ」と答える。質実剛健という表現がぴったりはまるナナオだが、もちろん、ただ言われたことをこなしてきたのではない。

 1997年にCRTディスプレイから液晶ディスプレイへと本格的に移行したとき、CRTはチューニングするところが多かったが液晶にはないと言われた。しかし蓋を開けてみれば、アナログ信号を液晶ディスプレイのデジタル信号へと変換する技術が品質の肝であることが分かった。その変換技術も、信号がデジタル−デジタルになったことで、することがなくなったと思われた。しかし、デジタル信号でも忠実性、品質、液晶特性のリカバリ、独自開発のASICといった「味付け」によって、まったく違う製品が作れることをナナオの開発者たちは発見した。

 同じ液晶パネルを使用しても、チューニング次第で異なる表情を生み出せる。既存技術をさらに向上させようとする前向きな開発者精神が、ナナオの進化を支えているのだ。

 この朴直な精神は、サプライヤーの間でも一目置かれているという。「ナナオが扱えれば、どこの製品でも扱える」と言われるほど、ナナオのサプライヤーの選定基準は厳しい。それだけに、自分たちが求める品質を実現するサプライヤーとは誠実な関係を結ぶ。業界でのナナオへの信頼は厚い。

 現在ナナオの目には、静止画と動画、PCとAV機器の融合という未来が捉えられている。最近はハイビジョン放送やデジタル一眼レフカメラなどが普及し、コンテンツも高画質になっている。YouTubeなどの動画配信サイトを利用するユーザーは日々増えており、自分が作った作品を公開し、ほかのユーザーと共有する機会は増加する一方だ。このような動画配信サイトは今後、より高画質化していくことも予想される。

 そうしたとき、高画質で作り上げたコンテンツを自分の思い描くとおりに見せられるディスプレイは重要となる。映像ソースを忠実に再現する力を生かし、作り手の思いを伝えるメディアとして、ディスプレイは必要不可欠な存在になるのかもしれない。

 ナナオの製品は高価でプロ向けという認識が未だ根強い。しかし、それは単に品質を追求した結果である。最近は、職場でも家でもディスプレイと接する時間が増えている。だからこそ、毎日使える安心感や自分らしいライフスタイルを表現するメディアとして、ディスプレイを再認識してもらえればとナナオは願う。

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提供:株式会社 ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年3月31日