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» 2007年11月22日 10時00分 公開

ナナオイズム:第4回 高画質を生み出す魔法の石――EIZOの“映像プロセッサ”に迫る(後編) (2/3)

[PR/ITmedia]
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滑らかな階調表現を実現する12ビットLUTと16ビット内部演算処理

 静止画系の映像プロセッサで提供されるもう1つの機能が、12ビットLUTと16ビット内部演算処理だ。前述したデジタルユニフォミティ補正回路による表示均一性の向上は、従来の10ビットLUTと14ビット内部演算処理でも実現可能だが、デジタルユニフォミティ補正回路の性能を最大限に生かすべく、LUTと内部演算処理の多階調化が行われた。

 以下の図は、PCから入力されたRGB各8ビットの映像信号が内部処理されてRGB各8ビット駆動の液晶パネルに出力されるまでの流れを追ったものだ。演算部の内部処理精度は14ビットから16ビットへ、出力側のLUTは10ビットから12ビットへ拡張されたことで、階調全域での変換誤差が少なくなり、階調表現の正確さに磨きがかかっている。

まずは液晶パネルの個体差がないものと考えて、目標とするガンマ特性(1.8や2.2など)を演算によって決定。目標のガンマ特性を決めただけでは色温度が正しくないため、16ビット精度で色空間演算を行い、白色の色温度とカバーする色域を設定する。出力側の補正では、液晶パネルが持っている個体差を吸収し、滑らかなトーンカーブを描くようにする。12ビットLUTによって、階調性の高い表示が可能となる

16ビット演算と14ビット演算で階調全域のガンマカーブを測定した結果。赤、緑、青の3本の線は、RGBの階調特性を表しており、これが紫の線(ガンマ=2.2)に3本とも重なっていれば、正しい階調が表示できることを意味する。色温度は6500Kの設定だ。上段は階調全域のガンマカーブ、下段は0〜8までと黒にごく近い階調部分を拡大したものだ。上の2つのグラフでは違いがないように見えるが、暗部の階調性を見ると、16ビット演算のほうが確かに優れているのが分かる

 現状でPCディスプレイ用の液晶パネルはRGB各8ビットの出力になるため、画面表示では12ビットのLUT(約680億色中)から最適な8ビットの表示色(約1677万色)を取り出すことになるが、内部演算精度とLUTでの余裕が最終的な階調の再現性を向上させているのは確かだ。とりわけ16ビットもの多階調で内部演算を行っているのはナナオならではの特徴で、デジタルユニフォミティ補正回路の精度を高める差異化技術となっている。

 さらに、この技術を実際の製品に反映させるためには、生産現場での調整能力が不可欠だ。開発部と同じ敷地にある工場では、専用の調整工程を追加している。すなわち、回路技術と生産技術が高い次元で融合することで、これらの映像プロセッサによる高い技術がEIZO製品に搭載されている。

 デジタルユニフォミティ補正回路と、12ビットLUTおよび16ビット内部演算処理による優れた色再現性は、これまでColorEdge CGシリーズの一部機種にしか搭載されてこなかったが、この冬からはFlexScan SXシリーズにも採用され、一般ユーザーの手にも届きやすくなった。DTPやCG、CAD、グラフィックスデザインといった用途で使う液晶ディスプレイを探しているなら、静止画系の映像プロセッサを搭載した高性能モデルはうってつけだろう。

動画表示の品質を高めるオーバードライブとコントラスト拡張

 動画の画質を向上する動画系の映像プロセッサでは、オーバードライブ回路とコントラスト拡張の技術に注目したい。まずはオーバードライブ回路だが、これはPC用の液晶ディスプレイとしてはナナオがいち早く採用し、最近ではかなり一般化した技術だ。液晶分子の応答速度は、白黒間の表示切り替えと比較して、中間階調間の表示切り替えが遅れてしまう傾向にある。オーバードライブ回路とは、液晶画素へかける電圧を一時的に高くすることで、中間階調の応答速度を向上させるものだ。これにより、動画表示の残像感をかなり低減できる。

階調変化時の応答速度をオーバードライブ回路の有無で比較したグラフ(0が黒、255が白)。オーバードライブなし(写真=左)では中間階調の応答速度が遅く、階調によるばらつきが大きいが、オーバードライブあり(写真=右)では階調全域において応答速度が均一化されている

 しかし、オーバードライブ回路もチューニングによって効果は違ってくる。オーバードライブによって液晶分子に電圧をかけすぎると、目的の輝度レベルを超える電圧がかかって画面が瞬間的に明るくなる場合があるのだ。この現象はオーバーシュートと呼ばれている。応答速度の高速化を重視すると、オーバーシュートが大きくなり、画質が低下する原因となる。逆にオーバードライブ回路の補正を抑えすぎると応答速度があまり高速化されないため、効果的ではない。そのため、オーバードライブ回路のチューニングはメーカーの画作りにおけるポイントになっている。

 今秋ナナオは新たな提案として、動画系映像プロセッサで応答速度優先のオーバードライブと画質優先のオーバードライブを用意した。この新型オーバードライブ回路は、2007年11月22日に発売予定の19インチモデル「FlexScan S1932-SE」で初めて搭載され、「Movie」モードでは応答速度優先、「CAD」モードでは画質優先のオーバードライブがかかる仕組みだ。この新型オーバードライブ回路は、今後発売予定のモデルにも順次展開していく計画という。

オーバードライブなし(写真=左)、応答速度優先オーバードライブ(写真=中央)、画質優先オーバードライブ(写真=右)の違い。いずれも横方向にスクロールするグレーの四角形をデジタルカメラで撮影したものだ。写真では分からないが、応答速度優先オーバードライブはブレが少ないものの、エッジに偽色が発生している。もっとも、このサンプルはオーバードライブの傾向を分かりやすく示した特殊な例で、映像コンテンツなどを表示する場合に気になることはほとんどなく、実際は応答速度の高速化によって動画が滑らかに見えることが多い。画質優先オーバードライブでは、適度にブレが軽減されつつ、エッジが美しく表現できており、3D CADソフトなどに適している

 もう1つ、動画系映像プロセッサで提供している機能で、ナナオが力を入れているのがコントラスト拡張機能だ。これは、映像信号をリアルタイムで解析し、映像に応じて明るさ、ゲイン、ガンマなどを適切に補正するもの。例えば、全体的に暗いシーンではバックライト輝度を下げて黒浮きを低減しつつ、その中でも明るい部分のレベルを上げてメリハリのある映像を実現する。

 この機能がない場合、映像コンテンツの暗いシーンなどで黒浮きが発生し、暗闇のシーンがグレーに見えてしまうような弊害があるが、補正のチューニングが適正でなければ、暗部の階調が黒くつぶれてしまったり、明るい部分がすべて白く飛んでしまい、階調表現や色調が損なわれてしまう。したがって、入力された映像信号の傾向を解析し、どのようにコントラスト拡張の補正をかけるかは、オーバードライブ回路と同様、メーカーのさじ加減が重要になる。

 実際、ナナオはコントラスト拡張機能のアルゴリズムを完成させるまでに、長期に渡りさまざまな映像コンテンツを再生し、開発担当者が手作業で細かいパラメータを決定していくという。ナナオの画作りは、映像ソース本来の色調や滑らかさを忠実でナチュラルに表現する“ナチュラルコンフォート”が基本コンセプトだが、コントラスト感と階調表現のバランスの取り方には職人芸とも言える独自のノウハウがあり、これがほかとは違う映像表現力となって現れる。

コントラスト拡張機能のイメージ。コントラスト拡張オフ(写真=左)では、液晶パネルの構造上、バックライトの透過光による黒浮きが発生している。コントラスト拡張機能では、映像の特徴をリアルタイムに解析し、バックライト輝度を下げて黒浮きを低減させる(写真=中央)。さらに暗部の階調はそのままに、明るい部分のレベルを上げて、メリハリのある映像を実現する(写真=右)

 こうした独自チューニングによるコントラスト拡張機能は、AV入力対応モデルの「FlexScan HD2451W」や「FlexScan HD2441W」など採用例が多く、動画表示に配慮して液晶ディスプレイを選択する場合に1つの目安となるだろう。

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