SX3031W-Hを含むFlexScan SXシリーズ全体の特徴は、プロ向けのカラーマネジメント対応液晶ディスプレイである「ColorEdge」シリーズ譲りの高画質化機能だ。高画質化機能は、画面全体の輝度を均一化する「デジタルユニフォミティ補正回路」と、優れた階調特性を生み出す「16ビット内部演算の12ビットガンマ補正」が中心となる。この2つこそ、FlexScan SXシリーズの核となる差異化技術だ。
両者の詳細はSX2461WとSX2761Wのレビュー記事を参照してほしいが、その効果は実にすばらしい。SX3031W-Hは29.8インチという大画面ながら、デジタルユニフォミティ補正回路のおかげで輝度ムラや色度ムラが非常に少ないのだ。液晶パネルの構造上、画面の四隅で若干の輝度低下が発生するのは仕方ないのだが、あえて注目しなければほとんど気にならない。30インチクラスの大型液晶パネルでは輝度と色度の均一性を保つのが困難なことを考慮すると、表示品質は非常に高いといえる。
16ビット内部演算の12ビットガンマ補正による階調特性も優秀だ。黒から白の無段階グラデーションを表示したとき、グラデーションの一部に「線」が入らない。この線とは階調ロス(トーンジャンプ)の目安で、SX3031W-Hは階調ロスが皆無に近く、階調性が優秀であることを意味する。黒白のグラデーションだけでなく、カラーのグラデーションでも同様の傾向だ。
さらに、シャドウ寄りの暗部階調でガンマ補正の効果が大きい点も特筆したい。普及クラスの液晶ディスプレイは暗部階調が割と大きくつぶれやすいのだが、SX3031W-Hはどんな色のグラデーションでも、シャドウからハイライトの階調がかなり自然に表示される。デジタル写真や実写映像の編集などで、優れた階調性を実感できるに違いない。
画質の調整機能も豊富だ。用途別にプリセットされた画質モードの「FineContrast」には、恒例のText、Picture、Movie、sRGB、Customの設定が用意されている。詳細な調整項目は、色温度(500K単位で4000〜10000K、および9300K)、ガンマ、色の濃さ、色合い、RGB各色のゲイン、RGBCMY独立の6色調整だ。さすがにこのクラスの製品だけあって、調整項目は充実している。
調整可能な項目はFineContrastモードによって異なり、すべてを調整できるのはCustomモードのみとなっている。例えばsRGBモードでは、sRGB規格として定められた色温度やガンマに従う必要性から、輝度しか調整できない(輝度は環境に応じて柔軟に変更できるように、ユーザーが調整可能になっている)。SX3031W-Hは色再現性が高いので、通常の使用で調整する機会があるとすれば、輝度と色温度、ガンマくらいだろう。
FineContrastのモード変更や画質調整は本体のOSDメニューで行うが、付属ソフトの「ScreenManager Pro for LCD」を使うことで、USB接続したPC上から各種設定が変更できるのは、SX2461WやSX2761Wと同様だ。
FlexScan SX3031W-Hは、約30インチの大画面とWQXGAという超高解像度が目立つが、画質面でも普及クラスの液晶ディスプレイとは一線を画す。Adobe RGBの色域を97%カバーしたうえでsRGBの色域も再現でき、さらに画面の均一性や階調性にまでこだわった“EIZOクオリティ”ならではの表示環境は、さまざまなクリエイティブワークを強力に支援してくれる。
ナナオの直販サイト「EIZOダイレクト」での価格が29万8000円と高価なのは確かだが、作業の効率が飛躍的に高まるのは間違いない。業務用途ならば費用対効果は高く、導入コストを比較的短期間で償却できることも考えられる。もちろん予算面をクリアできれば、クリエイティブ派の個人ユーザーやヘビーなPCゲーマーにとっても導入する価値は存分にある。
SX3031W-Hを展示しているショップやナナオの直営店「EIZO Galleria」に出かけて、29.8インチワイドのWQXGAという圧倒的な大画面+超高解像度と、ナナオの独自技術が生かされた高画質をぜひ体験してみてほしい。よくいわれることだが、ディスプレイ選びの重要なポイントは「百聞は一見にしかず」なのだから。
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提供:株式会社ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年3月31日