歴代開発担当が語る20年「あのマシンで思い出す あの日は、とても、アツかった」エプソンダイレクト20周年記念インタビュー(3/5 ページ)

» 2013年08月27日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]

トライアンドエラーの連続だったハイエンドモデル「Endeavor Pro3000」

photo Endeavor Pro3000。初のLGA775プラットフォームであるIntel 925Xチップセットのリリースと同日に投入されたフラグシップモデル。先代のPro2500からボディ設計を一新し、発熱が高かったPrescott世代のシステムも不安なく運用できる高度な放熱性能と静音性、ツールフリー構造による高度なメンテナンス性を両立していた

ITmedia 続いては「Endeavor Pro3000」(2004年6月発売)ですね。ようやく記憶に新しいものになってきました。

茅野氏 Endeavor Pro3000はLGA775に対応したIntel 925Xチップセット(開発コード名:Alderwood)の発表と同時に投入したモデルです。時期は2004年6月になりますね。CPUソケットはLGA775に、グラフィックスカードはPCI Express接続となったアーキテクチャの大きな変わり目の時期で、CPU、マザーボード、グラフィックスカードはすべて最先端に、ボディもシャシーレベルから一新して、文字通り新たなフラグシップになるべく気合いを入れた意欲作です。

手塚氏 このケースは2013年現在も続く「ツールフリーでの優れたメンテナンス性を実現」したことが大きな特徴になります。これまでパーツをネジ止めしてきたのですが、作業を何度もやるとなるとお客様はもちろん、開発側も疲れます(笑)。それならネジをなくす方法を取り入れられないかと開発に着手しました。

茅野氏 ツールフリー化とともに大きな課題だったのが放熱です。とにかくPrescott世代のCPUの熱は、これまでのNorthwood世代以上に大きいものですから、それは大変でした。どこに吸気の口を開ければ効果的かについて、カバーを手作りして検証しました。放熱性能はさまざま試行錯誤をしつつ、評価に評価を重ねて仕上げたのを思い出しますね。

手塚氏 検証といってもすべて型を作って試すということはできませんので、まずはサイドパネルにしてもダクトにしてもハンドメイドです。ダクトにスプリングを入れてサイドパネルと密着できるようにしたことや、光学ドライブのわきに吸気口を開けて、エアフローを前から後ろへとスムーズに流すためのダクトも作りました。排気ファンには25ミリ厚の12センチファンを採用し、できるだけ低回転でも風量を稼げるようにし、騒音もできるだけ抑えています。さらにいえば、1ミリと肉厚のスチール板金を用いたのも評価いただいた点ですね。コスト高にはなりますが、肉厚にすることで光学ドライブやHDDなどの共振を防ぎます。すべては最高峰の性能と安定性を追求するためです。

photophotophoto 持参してもらった当時の写真資料。Prescottの発熱を効果的に放熱するため、ボディの放熱/エアフロー周りに試行錯誤を重ねた様子が伺える

「Endeavor Pro4000」開発経緯に見る、ハンドルの奥深さ

ITmedia Endeavor Pro3000は、パフォーマンス、冷却性能、メンテナンス性、静音性、いずれも抜群の完成度だと感心した覚えがあります。そして、とても重かったことも……。

手塚氏 そうなんですよ。スチール板を厚くしてしっかりと作ったために見た目以上に重たくなってしまったので、次からは若い者に任せようということになりました(笑)。

photo Endeavor Proシリーズを担当する庄司哲氏。ハンドルの歩留まりの悪さから海外のハンドル製造現場に滞在し、自ら選別したという苦労話をさわやかな笑顔で語っていただいた

エプソンダイレクト技術部商品技術1グループ主任の庄司哲氏(以下、庄司氏) 私は後継モデルの「Endeavor Pro4000」よりEndeavor Proシリーズを担当しました。Pro4000はEndeavor Pro3000のコンセプトを踏襲しつつ、さらに改良を加えて完成度を高めたモデルになります。大きな特徴は、ストレージのフロントアクセス機構(※)を採用し、メンテナンス性をさらに高めたことと、やはり前モデルは重かった……ということで、少しでもお客様の利便性を高めるべくハンドル(※)を用意したことです。

 (※PCケースを“ただの箱”と思う人はいるかもしれないが、それは大きな間違いである。長期間継続利用し、拡張や交換、清掃などの整備を前提とするならば、PCケースの耐久性・剛性、拡張性や整備性は非常に重要な要素である)

ITmedia フロントアクセス機構はとても使いやすいですよね。当時からこういうPCケースが欲しいという声をPC自作をするユーザーからもよく聞いていました。ハンドルもあるとないとでは大違い。デスクトップPCは可搬の機会が少ないと思われがちですが、自作PCユーザーであればおそらく月に1度はパネルを開けますので。

庄司氏 はい。このハンドルは意外と苦労した部分です。ここにある「Endeavor Pro4700」(2009年10月発売)はアルミダイキャストのハンドルを装着していますが、Pro4000は、もう少し角張った形状で、材質は亜鉛のダイキャストで作っていました。ダイキャストは仕上げに削る必要がありますが、削ると気泡が出てきたりし、歩留まりがとても悪く……。仕方がないのでハンドルを実製造してもらう海外の二次メーカー(製造メーカーの下請け)まで足を運び、Pro4000のため自身でそこから選別する事態になりました。


photo 「Endeavor Pro4700」はWindows 7のリリースに合わせて投入されたモデルだ。Endeavor Pro4000シリーズにてストレージのフロントアクセス構造を採用したほか、ボディの設置や移動の負担を軽減するキャリーハンドルを用意した。梱包箱からハンドルを使ってスッと取り出せるよう、梱包箱も工夫を凝らしたという

ITmedia それは大変でしたね。なぜ亜鉛ダイキャストだったのでしょう?

庄司氏 やはり安全性が最重要です。これに至る前にもいろいろ試行錯誤しました。例えば、板金を樹脂素材で覆って低コストに済ますといった案がありましたが、使っているうちに素材に隙間が空き、皮膚を挟む危険があることが分かり、即却下──などです。亜鉛ダイキャストかアルミダイキャストかという選択肢は当時から考慮していましたが、製造メーカーいわく亜鉛のほうがやりやすいと提案してきたこと、コスト的にも亜鉛のほうが有利ということもあってまずはこれにしました。

ITmedia なるほど。ハンドルをつけるというシンプルなアイデアも、実現するにはいろいろと苦労があるものなのですね。

庄司氏 その後、亜鉛のダイキャストはやはり重いということで改良し、現在はアルミニウムのダイキャストに落ち着いています。また、より持ちやすい形状に、塗装に強い形状にといったような細かい課題も解決していきました。お客様が梱包箱からハンドルを使ってスッと取り出せるよう、梱包箱の形をイチから見直したのもこの頃ですね。

正座して“男気”を見せた15周年記念モデル「Endeavor Pro4500 15周年記念限定モデル」

photo Endeavor Pro4500 15周年記念限定モデル。フロントパネルの下段は職人が1つ1つ作成した「平蒔絵」、サイドパネルは「高蒔絵」調の立体感あるシルクスクリーン蒔絵が施されている。図柄は、エプソンダイレクトの“男気”を象徴したという「龍」のほか、「さくら」「月とうさぎ」の3種類。計200台が限定販売された

ITmedia 何気なく使うハンドルですが、実現までの奥深さを感じました。ところで、「15周年記念モデル」もPro4000シリーズでしたね。

エプソンダイレクト技術部商品技術1グループの杉崎将太氏(以下、杉崎氏) はい。15周年記念限定モデルは、屋久杉を天板素材に利用したノートPC「Endeavor NJ5200Pro 15周年記念限定モデル」(2008年11月発売)と、蒔絵を施した「Endeavor Pro4500 15周年記念限定モデル」(2008年11月発売)の2種類を用意しました。

 Pro4500の15周年記念限定モデルは、フロントパネルの下段に職人さんが1つ1つ作成した「平蒔絵」、サイドパネル「高蒔絵」調の立体感あるシルクスクリーン蒔絵を施しています。図柄は「龍」「さくら」「月とうさぎ」の3種類、合計200台を用意し、10周年モデルと同様にシリアルナンバー、名入れサービスなども実施しました。

ITmedia この平蒔絵は1つ1つ、職人さんが直で描いていたのですか?

杉崎氏 はい。1つ1つ職人さんに手作業で描いていただきました。このため、まったく同じものはない一点ものになります。それは、私達と同様、仕事に対して誇りとこだわりを持っている職人さんのところへ持っていき、正座して打ち合わせをさせていただきつつ、お願いしました。

photophoto フロントパネルの下段に職人が1つ1つ作成した「平蒔絵」、サイドパネル「高蒔絵」調の立体感あるシルクスクリーン蒔絵を施してある

ITmedia プロですね……。歩留まりはどうだったのでしょうか?

photo 口調から実直な人柄が伺える技術部Endeavor Proシリーズ担当の杉崎将太氏。外装のスペシャリストとして、Endeavor Pro4500 15周年記念モデル担当時には蒔絵職人の元に通い、正座して打ち合わせをしたエピソードなどを紹介していただいた

杉崎氏 とても質の高い仕事をしていただきました。ただ、我々の製品として考える品質と、工芸品としての品質と考え方が違っていたなどの経緯があり、うまく折り合いをつけつつ、納得していただける品質のものをなんとか予定数作りあげました。

ITmedia なるほど、漆モデルと同様にご苦労があったのですね。蒔絵の「龍」デザインに象徴されるエプソンダイレクトさんの「男気」といったところでしょうか。10周年モデルは2日で完売されたそうですが、15周年モデルはどのくらいの反響だったのでしょうか?

手塚氏 “好評”ではありました。

溝口氏 投入タイミングはかなり悩みましたね。ハイクラスデスクトップPCを導入していただけるお客様は、やはり最新・最強のものがお好きですよね。インテルの新CPU/チップセットが出たタイミングと少しズレがあったため「もう新システムに買い換えてしまった」という声がありました。……こちらは深く勉強させていただきましたね。

ITmedia それはよく理解できます。あくまでもPCですからね。そう考えると次の投入タイミングなどはとても重要ですね。ずばり「20周年記念モデル」のご予定はあるのでしょうか。

手塚氏 検討しております。ただ、2013年8月時点では決定とはっきり言えないのは恐縮ですが、「今年度中(2014年3月末)まで」にご紹介することができるかもしれません。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:エプソンダイレクト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2013年9月9日

インフォメーション

【期間限定】今だけ8GBまたは16GBメモリーが≪半額≫!快適な動作環境をお得に実現するチャンス♪

関連リンク

超小型デスクトップPC「ST180E」や、ファンレス設計のタッチパネルPC「TD160E」など…。オフィスクライアントPCとしてだけでなく、サイネージや店舗・受付など、さまざまなシーンでご利用いただけます。