歴代開発担当が語る20年「あのマシンで思い出す あの日は、とても、アツかった」エプソンダイレクト20周年記念インタビュー(4/5 ページ)

» 2013年08月27日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]

某社製軽量ノートに負けない! という意気込みでフル独自設計した軽量モバイルノート「Endeavor NA101」

ITmedia さて、こちらの「Endeavor NA101」(2006年6月発売)は、エプソンダイレクトさんとしてはかなり異色の存在に感じますが。

photophoto 2006年6月に発表されたEndeavor NA101は、全面耐荷重試験150キロをクリアするマグネシウム合金ボディを採用するB5モバイルノートPC。12.1型液晶ディスプレイを搭載し、HDD、光学ドライブを装備する2スピンドル機ながら約1.2キロ、最軽量構成時(光学ドライブ非搭載時)で約1.1キロという軽量ボディを実現した意欲作であった

エプソンダイレクト技術部商品技術1グループプロジェクトマネージャーの今藤達也氏(以下、今藤氏) 歴代のノートPCの中でも、このEndeavor NA101は特に手をかけてお金をかけて時間もかけて、ボディ、マザーボード、キーボード、すべてオリジナルで開発したモデルです。ボディのほとんどにマグネシウム合金を使い、天板はプレス、ベースボディはダイキャストで作っています。重量約1.2キロとの軽量さを実現しました。

ITmedia なんと、12型クラスの液晶ディスプレイ搭載で約1.2キロ、長時間バッテリー装着時で12.6時間動作。携帯性なら今でも通用する、なかなかすごいスペックですね。

今藤氏 今だから言いますが、某社ビジネス向けノート Wシリーズを強く意識しました。重量約1.2キロとする基準も最初からターゲットにしていました。ただ、このライバルノートで採用していたボンネット構造のデザインは担当する私としては避けたく、当社の評価基準で押圧して何ミリ沈むか確認し、それでパネルに届かなければいけると判断する評価方法にて、フラットなデザインにチャレンジしました。三重県にマグネシウムの特殊な加工技術を持ったすごい会社がありまして、一部部品だけ実際に作ってもらいテストしてみたところ、フラットデザインでのプレス加工で行けることが分かったためです。もちろんこのボディでも耐荷重150キロをクリアしています。

ITmedia 天板をプレスにしたということですが、その理由は何ですか。

今藤氏 プレス加工とは、金属板を機械で文字通りズシーンとプレスして作ります。対してダイキャストは溶かした材料を流し込んで成型する手法です。プレスは薄くしやすく、結果として軽くもしやすいのですが、複雑な形状は作りにくい。それができる──ことが幸いに分かったためプレス加工を選択し、この軽さを実現できたことになります。

ITmedia なるほど。製造は順調だったのでしょうか。

photo エプソンダイレクトのノートPCとしては近年最大の意欲作といえるEndeavor NA101の開発を主導した今藤達也氏。「ボディ周りで苦労した記憶しかない」という開発過程におけるエピソードを渋く語ってくれた

今藤氏 とはいえ、これがとにかく苦労しまして。天板と画面ベゼルで液晶パネルを挟んでネジ止めする工程のため、裏にネジ受けを設ける必要がありますが、その“あと”が天板の表面に浮き出てしまう課題の対処のため、何度も微調整を強いられました。ダイキャスト部品についても重量調整のために少し削るとヒビが入ってしまうなど……とにかく品質管理はとても大変でした。おかげ様でとてもすばらしいモデルに仕上がりましたが、これに関してはボディの部分で苦労した記憶しかありません(笑)。

ITmedia 相当苦労されたようですが、得たものも大きかったのではないでしょうか。この系譜を継ぐモデルは今あるのでしょうか?

今藤氏 このシリーズはとてもコストをかけてていねいに開発したので計4世代続けましたが、このサイズの4:3アスペクト比(※)の液晶パネルが入手しづらくなってきたことから泣く泣く終了になりました。今はこの系譜を継ぐモデルはありませんが、苦労を重ねたおかげでノウハウの蓄積もあります。そのうち、これを生かせる“スペシャル”なモデルを投入できればうれしいですね。

 (※2013年現在は、PC向けディスプレイのほとんどがワイドサイズ/アスペクト比16:9ないし16:10のパネルに移行している。移行期、いや現在も“縦が足りない”などと嘆く人は多い)

塗装メーカーとのコラボレーションにより生まれた「Endeavor NA801」

photo Endeavor NA801。2008年4月に発表された13.3インチワイド液晶を搭載した2スピンドルノートPCである。CPUには、45ナノメートルプロセスルール製造のCore 2 Duo T8100を採用し、外部GPUとしてNVIDIA GeForce 8600M GTを搭載する、ハイスペック志向な構成が特長。マットな質感で、キズが付いても自己修復する特殊塗装を施していた

ITmedia 対して「Endeavor NA801」(2008年4月発売)は一見するとベーシックなスリムノートPCのようですが、何かすごいエピソードがあるとのことで。

エプソンダイレクト技術部商品技術1グループ商品戦略担当主任の原太陽氏(以下、原氏) 完全オリジナルで開発したノートPCはEndeavor NA101のみでして、基本はODM(Original Design Manufacturing)で展開しています。ただ、このEndeavor NA801はそれでも少し特殊なモデルです。天面に自己治癒塗装(スクラッチリペア塗装)を施したことが大きな特徴となります。

ITmedia 自己治癒……とは何ですか。

原氏 ラバー風の厚みと柔らかさのある塗装で、ちょっとした傷であれば反動で自然に治るという特殊なものとなっています。開発当時にそういう塗装があることを知りまして即調査。塗装屋さんを探し当ててODM先と協力して作りました。

ITmedia 具体的にはどんなことがあったのでしょう?


photo 自己治癒塗装を施したEndeavor NA801を担当した原太陽氏。コラボレーション企画ならではの調整の難しさのほか、製造過程や技術面についても的確にわかりやすく説明していただいた

原氏 塗料メーカーさんは国内の会社。その塗料を中国のODM先に輸出して中国で塗装を行う手はずです。ですが、待てど届かず。中国税関で止まってしまっていたようです。これは大変だと塗料メーカーの担当者さんと一緒にODMの工場に泊まり込んで願い倒して再塗装してもらい、さらに税関と長々と交渉してなんとか……という経緯があります。また、その塗料メーカーさんは日本の企業だけあって定める塗装条件や乾燥条件が非常に厳しく、その条件をODMに守らせるという管理もとても苦労しましたね。

ITmedia なるほど。ユーザーの反響はどうだったでしょうか。

原氏 NA801はスペックとしてもぜいたくな構成で、比較的高価な設定だったもあり、大ヒットとはいかなかったのですが、当時からすでにPCをモバイル環境に持ち出して活用するハイスペック志向の方には高く評価していただきました。最近はこういったコラボレーションをしていないので、機会があれば実施したいと思っています。


photo Endeavor Na01 mini。2008年11月に発表され、大ヒットを記録したエプソンダイレクト初のNetbook。ビジネスに使いやすいスペックや質実剛健なイメージの約1.28キログラムのボディ、そして4万円台からとするリーズナブルな価格帯を実現していた

ITmedia そういえば、Netbook(※)「Endeavor Na01 mini」(2008年11月発売)を出されたのもこの頃でしょうか。

溝口氏 弊社は他社さんのNetbookと比べると少し出遅れてしまいましたが、後発ならではのポイントを押さえた仕様と評価していただき、こちらは「大ヒット」しました。

 (※Web・メールといったインターネットサービスを最低限普通にできればOKとする層に向けた低価格志向なノートPCの総称。その手ごろ感から2007年ごろよりNetbookブームとなった。2013年現在は、そのニーズをタブレット/スマートデバイスが担っている)

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提供:エプソンダイレクト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2013年9月9日

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