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» 2019年06月04日 10時00分 公開

仕事は「自らの方法で」する時代 企業でMacの利用が増えている理由 (1/2)

人は感情で動く生き物だ。海外の成功している企業では、ルールで縛ることよりも先に「心地よく働けること」を重視している姿勢が目立つ。IT業界の動向に精通するジャーナリスト、林信行氏が企業のMac利用と、モバイルデバイス管理システム(MDM)で注目を集める「Jamf Pro」を解説。

[林信行,PR/ITmedia]
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 「働き方改革」がしきりに唱えられる日本だが、本当に価値のある働き方とはどんなものだろう。

 ただ就業時間や倫理規定を見直しても、かえって社員たちの負担を大きくしてしまうことも少なくない。本質的に働き方の質も改善しようと考えているなら、従業員の働き方の多様性を認め、働くときの「気持ち」にも配慮する必要があるのではないか。

 生産性の質を高め、自分が打ち込んだことが形になることを実感し、やりがいを感じる。これを上回る「働き方改革」はないように思う。

 しかし、毎朝、満員の通勤電車で“不条理”に耐えることに慣らされた日本のビジネスパーソンは、自分のやり方に合わない方法で疑問を抱いていても、「しょうがない」と耐えながら、その方法で仕事を続けてしまい、思ったようなパフォーマンスが発揮できないことが多いように見受けられる。

 人は感情で動く生き物だ。海外の成功している企業では、ルールで縛ることよりも先に「心地よく働けること」を重視している姿勢が目立つ。

 例えば、Googleでは、新たに人を採用するときに、本当に馬が合いそうか同僚となる人たちが繰り返し面接を行う(チームに1人相性が悪い人や、他の同僚の足を引っ張ろうとする人がいると、それだけで生産性が大きく落ちるのは自明だろう)。

 また、従業員が心地よく働けるように、休憩時の食べ物やレクリエーションといったものをふんだんに用意していることでも有名だ。最近では従業員向けに瞑想やマインドフルネスといった心を整えるためのプログラムを提供している会社も増えている。

 こうした企業を実際に訪問してみると、それぞれ優秀であろう社員たちが、ずっとPCに張り付いたままの人もいたり、ずっと話し込んでいる人がいたり、レクリエーション設備で遊んでいるように見える人がいたりと、街中で見かける人々がバラバラにいろいろなことをしているのと同じように、全くバラバラな働き方をしている(それでも、彼らは組織のミッション、つまり使命で結ばれていて世界に影響を及ぼす大きな成果を出している)。

 「知識労働者にとって必要なものは管理ではなく自立性である。(中略)自らが使命とするものを自らの方法で追求することを許さなければならない。ということは、責任と権限を与えなければならないということである」。これは『P・F・ドラッカー理想企業を求めて』で語られた知識労働者の理想の働き方の像だ。

 働き方の多様性を尊重し、働いている間の気持ちを配慮する方法は他にもいろいろとある。人によって仕事にかける時間も異なれば(じっくり考えながら進めるのが好きな人もいれば短期集中型もいる)、そのスタイル(慎重に進める人もいれば、大胆に進める人もいる)、さらには使う道具にも柔軟性があった方が、働く人たちのモチベーションが高まることも、これまた自明のはずだ。

 モチベーションが上がる勝負服のスーツに、お気に入りのノートやペン、使い込まれたICレコーダーやデジタルカメラ。皆それぞれに自分のやり方にあった道具があり、それを使うことで心も奮い立つ。

 しかし、そんな中、会社の方針でお気に入りが自由に選べない道具もある。PCはその代表例だろう。

仕事で自分の好きなPCを選べる「Choice Program」の波

 シェアが3%を切り、会社が倒産しかかっていた時代のAppleを知っている世代には信じられないかもしれないが、今、MacはFortune 500(フォーチュン誌が年1回発行する、総収入に基づきランキングした全米上位500社のリスト)に入る世界トップ企業でもかなり広く支持されているPCだ。

 確かに少し前までは、Macといえば、いわゆる出版社がDTP(Desktop publishing)のために使うPCのイメージだった。クリエイターが使うイメージや、高級ホテルの受付、ラウンジに置かれた高級PCというイメージはあっても、ビジネスマンがバリバリ使うイメージはなかったかもしれない。

 だが、2001年に「Mac OS X」が出てからは、そのイメージは急速に変わり始めた。高い安定性や(Webサーバでもよく使われる)UNIXベースであることが開発のしやすさにつながって支持され、ITベンチャーのエンジニアなどにMacが広がっていった。

 また、2008年のiPhone国内発売以降は、スマートフォンアプリビジネスで一獲千金を狙うベンチャーが増え始め、こちらもまずはiPhoneアプリの開発のために、エンジニアからMacが使われるようになった。

 こんな背景もあり、ソーシャルメディアブーム以後に大きくなったITベンチャー企業ではMacを使う人が驚くほど多い。

 その後、「MacBook Air」など安価に購入できるMacの選択肢が増え、Macは学生たちにも親しまれるようになった。PCを使う理由のほとんどがインターネットサービスの利用になった現在、OSの種類はあまり関係なくなってきたこともあって、単純に価格とパフォーマンスのバランスであったり、質感や製品としての見た目の美しさだったり、ウイルス対策などセキュリティ対策のしやすさだったり、見栄えのするプレゼン資料の作りやすさだったりと、理由はさまざまだが、Macを愛用する人が増えた。さらに業務をクラウドベースに移行する企業が増えてきたことで、最近では事務仕事にもMacが使われている。

 これに呼応するように、Macはあらゆる業界のデファクトスタンダード(実質標準)への対応が進んでいる。ティム・クックCEOがCiscoのイベントで基調講演に登壇するなど業界のデファクトスタンダードを作る企業との関係を深めてきたこともあり、欧米では企業へのMacの浸透は勢いを増している(ティム・クックCEO時代になってから、スティーブ・ジョブズ前CEO時代ほど大胆な方向転換が減ったことを重視する声もある)。

 実例として、従業員の働くときのモチベーションを尊重して、使うPCをWindows、Macのどちらでも選べるようにする「Choice Program」という動きを、IBMが真っ先に採用し、その後、これが他の大企業にも広がりつつある。

 IBMによれば、MacとWindowsが混在した環境を見ると、Windows機の方が管理コストは3倍、サポートコールの本数も2倍多いことなどが分かってきた。IBMは、最近、iOS機器の販売なども行っており、会社としてはApple製品を押している側面が強い。しかし、だからといってApple製品一色にすることはなく、社員の好みを尊重して、一人一人がMacとWindowsのどちらでも選べる「Choice Program」を実施している。

 Apple製品の管理ソリューションを提供するJamfで、長年エンタープライズ市場(企業向けシステム市場)を見てきたアジア太平洋地区ゼネラルマネージャーのジミー・ホァン氏は、「欧米の企業システムは、およそ2〜3年ほど遅れて日本に入ってくる」と語っており、「Choice Program」などの仕組みが間もなく日本にも訪れると予想している。

 ただ、こうしたMacとWindowsの混在環境を実現する上で、常にネックになってきたのが企業のIT部門だ。Windows搭載PCだけでも大量に導入して管理をするのはそれなりに大変なのに、新たにMacの管理もするとなると確かに負担は増える。

 そんな中、米国では前述したJamfという会社のデバイス管理システムが大きな注目を集めている。2002年の創業当初からAppleデバイスに対象を絞り込んで最良の機器管理を実現しようとまい進する少し変わった会社だ。iOSのMDM(モバイルデバイス管理)はもちろんのこと、企業向けWindows管理と同等の精細さでMacの管理・運用ができるツールとして定評を得ている。採用企業にはアクセンチュアやセールスフォース、SAPといった有名企業が多い。特に、SAPは昨年リリースを行い、Choice Programのグローバル展開にJamf Proを利用して、手始めに8万3000台のiOSデバイス、1万7000台のMacそして170台のApple TVの管理を始めると公表した。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2019年6月10日