NASはここまで進化した――QNAPの新OS「QuTS hero」が実現する圧倒的な性能とは?(1/3 ページ)

QNAPのNASといえば独自OS「QTS」の存在が有名だが、エンタープライズ向け機種向けに「QuTS hero」という新たなOSが登場した。この新OSはエンタープライズに求められる機能を余す所なく引き出せることが特徴だ。

» 2020年09月04日 10時00分 公開
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 今やすっかりファイルサーバの選択肢の1つとして定着したNASキット。ベイ数が少なく、手頃なプロセッサを採用した安価な家庭向けエントリーモデルから、多くのベイと高性能なプロセッサを搭載したハイエンドモデルまで、数多くのモデルがラインアップに並んでいる。

 その一方で、NASキットの中核を担うOSはモデル間で共通化されており、ホームユースからエンタープライズ向けまで制御を行うソフトウェア部分は同じだ。しかし、潤沢なメモリと高速なプロセッサを前提としたOSであれば、NASとしてのパフォーマンスをより向上できる。

 QNAPの「QuTS hero」はまさに、高い信頼性とパフォーマンスをOSとファイルシステムの力で実現した、新時代のエンタープライズNAS向けのOSだ。その特徴をチェックしていこう。

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なぜ新OSが必要なのか?

 QNAPのNASキットでは、その初期モデルから独自のOS「QTS」が搭載されてきた。

 QTSはArm系とx86系のプロセッサに対応した、LinuxをベースとするNAS用OSだ。さまざまなRAID構成への対応、オンラインを維持した状態でのディスクの交換、ボリュームのサイズアップ……など、NASの運用に欠かせない機能の他、Webブラウザベースのデスクトップコンソール、パッケージマネージャ「App Center」による機能拡張など、使い勝手の面にも配慮がなされている。

 QNAP製NASキットの特徴の1つは、エントリーモデルからエンタープライズモデルまで、QTSという同じOSを搭載していることにある。そのため、機種が変わっても管理者は使い方を覚え直す必要はない。新機種でもApp Centerで提供される既存のソフトウェア資産を利用できるため、「新機種に買い換えたら以前の機能が使えなくなった」というようなこともない。

 OSが同じということは、プロセッサ、メモリ、ストレージ、ネットワークといったハードウェアの性能差がそのままパフォーマンスの差につながる。「パフォーマンスの高いNASが必要であれば、ハイスペックなNASキット(モデル)と読み書きの速いSSDを購入すればいい」というシンプルな図式が成り立つ。

QTS QNAPのNAS用OS「QTS」はLinuxをベースに開発され、使いやすいWebベースのデスクトップコンソールに定評がある

 だが昨今、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、企業や団体などでテレワークを導入する動きが加速した。このことで、ファイルサーバにより“ハード”な運用が求められるシーンも出てきた。そうなるとSSDを用いたオールフラッシュアレイや、2.5GbE/5GbE/10GbEといった高速ネットワークインタフェースといったハードウェア面の高速化だけではなく、そのパフォーマンスをより効果的に引き出せるソフトウェア的なアプローチも欠かせない。

 そのような背景の元で登場したのが、QuTS heroなのだ。

新OS対応NAS テレワークの普及で、エンタープライズ向けNASはより高いパフォーマンスを求められる傾向にある(写真はQuTS hero対応NASの「TS-h1283XU-RP」)

QuTS heroの特徴は?

 QuTS heroの最大の特徴は、「ZFSファイルシステム」を採用したことにある。

 ZFSはオラクルが開発した次世代ファイルシステム。128ビットアドレッシングを用いることで、最大で16EB(エクサバイト)、TB換算すると1600万TBという、事実上無制限とも思える大容量のストレージをサポートする。

 しかし、ZFSはその最大容量以上に、パフォーマンスや信頼性を向上させる、多くのインテリジェントな機能にこそ注目すべきだ。幾つか紹介していこう。

実ストレージ以上のパフォーマンスを発揮できる「インライン圧縮」

 ストレージ、プロセッサ、ネットワークと、NASのパフォーマンスを左右するコンポーネントは複数ある。だが最終的には、最もスピードの出ない部分がボトルネックとなって、全体のパフォーマンスが決定する。

 どの要素がボトルネックとなるかは、同時にアクセスするクライアントの数、データの読み書きの頻度、シーケンシャル/ランダムアクセスの比率、データの転送量など、環境によって大きく異なる。ただ、アクセスするユーザーの多い傾向にあるエンタープライズ用途では、ストレージがネックになりがちではないだろうか。

 シーケンシャル、ランダムアクセス共に優れたパフォーマンスを発揮できるSSDは、エンタープライズ用途のNASにおけるストレージとして最適だ。しかし、SSDのインタフェースで使われる転送速度には限界がある。「NAS用SSD」で主流のSerial ATA(SATA)接続のものなら、規格上の上限値である6Gbps(毎秒750MB)を超える速度は出せない。

 「なら、複数のディスクに並行して読み書きできる『RAID0』を使えばいい」と思う人もいるだろう。確かに、RAID0を使えば同時アクセスによって読み書きする速度を向上できるが、構成しているディスクが1台でも故障すると全てのデータが失われるというリスクがある。

 そのため、エンタープライズ用途においてRAID0は忌避される傾向にある。その代わりに、SATA接続のSSDよりもアクセス速度に優れたPCI Express接続のM.2 SSDやシステムメモリをキャッシュとして使うことで、アクセスの高速化を図ることが多い。

 だが、ZFSには、データを圧縮して保存することでパフォーマンスを向上させる「インライン圧縮機能」が搭載されている。ストレージにおける圧縮というと、ストレージの保存領域の節約、つまり保存容量の削減を目的とするイメージがあるかもしれないが、視点を変えればデータのやりとりに掛かる時間を短縮できるというメリットもある。

 ZFSのインライン圧縮は、メインメモリとSSDの間でリアルタイムに行われる。同時にアクセスするクライアントの数が多いほど効果が出るため、エンタープライズ用途向きといえる。

QNAPのテスト結果 QNAPが実施したデータの読み書き速度テストの結果。クライアント数が多くなるほどインライン圧縮の効果が発揮されることが分かる

実装以上の収納を実現する「データ重複排除」と「コンパクション」

 エンタープライズ用途のNASは、ストレージハブとして利用されることが多い。そのため、とにかく“大容量”なストレージを必要とする傾向にある。

 だが、NASにファイルを集約すれば集約するほど、ファイルの重複は増えてしまう。アクセス権限の管理の都合で、複数フォルダに同一ファイルが保存されることはあるだろうし、バージョン違いのファイル、共通して用いるマスター情報を内包するファイル……と、部分一致するファイルも数多く存在する。特に、NASをVDI(仮想デスクトップ)やVM(仮想マシン)のストレージとして使用する場合は、同じOSであればシステム部分の多くが完全一致データになるだろう。

 そこで効果を発揮するのが、ZFSの持つ「インラインデータ重複排除」と「インラインコンパクション」だ。

 インラインデータ重複排除は、書き込もうとするデータが既存のデータと重複していないかをブロック単位でチェックする機能だ。ファイルシステム自身が実装しているため、利用するクライアントのプロトコルなどに関わりなく自動的に重複排除が実行される。

 そのため、特にVDIや仮想マシンを複数運用している環境では、とても効果が高い。前述のインライン圧縮と併用することで、容量だけではなくキャッシュの効率向上にもつながるため、パフォーマンスの向上も期待できる。

 インラインコンパクションは、繰り返しの多いデータや小さなファイルをまとめることで、ストレージの利用効率を上げる機能だ。「ext4」などNASが旧来用いてきたファイルシステムでは、ブロックサイズを下回るファイルは実サイズが小さくても1ブロック分の容量を取ってしまう。例えば、ブロックサイズが4KBに設定されている場合、1KBのファイルが100万個あると、4GB分の領域が必要となってしまう。

 それに対して、ZFSではブロックサイズに満たない微小ファイルは、まとめて同じブロックに格納できるため、ストレージをより効率的に利用できる。

重複排除設定 ファイルの重複を排除するかどうかは、共有フォルダごとに設定できる
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提供:QNAP株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2020年9月10日