ファイルサーバは、企業や団体、部門の情報集約を担うという側面も持ち合わせている。しかし、視点を変えると、データが1カ所に集まることになるため、障害が起きたときのダメージも大きくなる。
QuTS heroが採用したZFSの名称は、「Zettabyte File System」の頭文字に由来する。Zettabyteは「ZB」、つまり10億TBのことで、巨大なファイルやボリュームを扱えるファイルシステムであることを示唆している。
しかし、そのような大規模ボリュームを扱うと、例え発生確率が低いとしても、エラーの発生件数は無視できなくなる。例えば、ディスクコントローラーやファームウェアの問題によって、データを正しく書き込めた“つもり”になっていることもあり得る。また、チェックサムを使ってデータの整合性を取っている場合でも、同じブロックに記録していればデータとチェックサムの両方が古いままで更新されていなかった、ということもありがちだ。
そこでZFSでは、ディスク、ファームウェアやI/Oを含めてデータをやりとりする全ての経路でエラーが起こることを想定し、ブロック内だけでなくブロックツリー全体の整合を取る「エンドツーエンド」のチェックサムを採用している。ディスクへの書き込みを行う際には親ブロックにチェックサムを記録し、読み出し時にはメモリ上でチェックサムをチェックし、不正なデータが検出された際には冗長化されたデータから自動的に修復を実行するようになっている。
また、書き込み時には、データブロックの上書きではなく、複製されたデータブロックを新規作成して書き込みを行う「コピーオンライト方式」を採用しており、常に整合性が保たれるように配慮されている。
データの自己修復に必要な冗長化措置として、ZFSではファイルシステム自身にもRAID機能を持っている。中でも「RAID-Z」「RAID-Z2」は、「RAID5」や「RAID6」が抱える問題点を改善したZFSの独自機能だ。
RAID-Z/Z2がデータとエラーの検出と修復用のパリティを複数のディスクに分散して書き込むという点は、RAID5/6と共通している。異なるのは、常に全てのディスクへの書き込みを行う点、そしてデータ書き込み時に、パリティの再計算に必要な既存データの読み出しを行わない点だ。前述のコピーオンライトによるデータの一貫性と合わせて、RAID5/6で発生しうる「ライトホール問題」(ディスク間の不整合)を回避でき、かつ高速に読み書きを行えるというメリットがある。
さらに全ストレージをスキャンし、破損データブロックの発見と自動修復を行う「プールスクラビング」を行えば、潜在しているエラーを自己修復し、さらに信頼性を高めることができる。QuTS heroでは、プールスクラビングを定期実行することが可能だ。
その他、QuTS heroは「WORM(Write Once, Read Many times)」にも対応している。WORMは1度書き込んだら削除や改変ができない、いわゆる「ライトワンス」を提供する仕組みだ。
WORMはファイルやフォルダのパーミッション制御に依存しないため、システム管理者であっても変更できない。指定期間が過ぎると削除できるように設定することもできるため、監査ログなどの保存に最適といえる。
従来のQTSと同様に、QuTS heroではApp Centerによる機能拡張が可能だ。エンターテインメント系からビジネス向けまで、さまざまな機能拡張が用意されているが、エンタープライズ向けNASで特に役立ちそうな機能拡張は以下の通りだ。
他のQNAP NASやクラウドストレージへのバックアップ、一方向/双方向の同期、そしてデータの復元が行える総合的なバックアップツールだ。
QNAP NASにインストール可能なアンチウイルスエンジンだ。その名の通り、セキュリティソフトウェアで定評のあるMcAfee(マカフィー)が開発している。
QNAP NASの中央集中型セキュリティ管理スイート。セキュリティ診断、推奨設定の自動調整、やアンチウイルス/マルウェア対策ツールを統合している。
いずれも、QNAPのNASでVMを動かすための仮想化基盤だ。Container Stationは「LXC」「Docker」を、Virtualization Stationは「KVM」をベースとしている。WindowsやLinuxにしか提供されていないサーバ系ツールを動かしたいというニーズにはぴったりマッチする。
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提供:QNAP株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2020年9月10日