冒頭で触れた通り、TS-233はNASキットである。ストレージとして利用するHDDやSSDは別売なので、別途購入する必要がある。TS-233の紹介を本格的に行う前に、使うべきストレージの選び方を紹介しよう。
ストレージを別途買うことをおっくうに感じる人もいるかもしれないが、容量、速度、価格などニーズに合ったストレージを選べるという大きなメリットがある。
しかし、NASキットで使うHDDやSSDは、PCで使うものとは違う視点から検討すべきだろう。NASには重要なデータが多く蓄積されていくため、信頼性の高さやNASキットでの動作確認の有無が非常に重要だからだ。
NASキットで使うHDDやSSDは「NAS用」とされているものを選ぶことを強くお勧めする。その理由は、大きく3つある。
基本的に1人で使用するPCに対し、NASは複数ユーザーが同時に使用する。そのため、同時にアクセスされるファイルは多く、1日に転送されるデータ量も段違いに大きくなる。
その点、NAS用のHDD/SSDは一般的なHDD/SSDよりも高頻度の読み書きに耐えうる設計とされている。
RAIDを構成することが多いNASは、2つ以上のベイを備える構成が一般的だ。デスクトップPCなら、複数のストレージをある程度のすき間を持って設置できる設計となっていることが多いが、スペースの都合からNASでは複数のHDD/SSDが近接して配置されることが多い。
HDD/SSDが近接しているということは、風通しの都合から発熱が大きくなりやすい。さらに、HDDを搭載する場合は、高速で回転するディスクやヘッドシークによる震動が他のHDDに影響を与えてしまいがちだ。このような環境を想定していないSSDやHDDは、すぐに障害を起こしてしまい、最悪の場合早期に寿命を迎えてしまう。
NAS用のHDD/SSDは、互いに近接して設置されることを想定して、高温での稼働や振動の多い環境を考慮した設計となっている。
PCの場合、スリープやシャットダウンなどでストレージが稼働しない時間が生じる。少し乱暴な言い方かもしれないが、HDD/SSDは「週5日、1日8時間使用する」前提の設計で問題ない。しかし、NASは基本的に「24時間365日」稼働するものである。NASでの利用を想定していないHDD/SSDは、あっという間に寿命を迎えてしまう可能性があるのだ。
それに対して、NAS用のHDD/SSDは24時間365日の連続稼働を前提とした設計となっている。
NAS用のHDDやSSDは、複数のメーカーからさまざまなモデルが登場している。QNAPのNASにおいてHDDを搭載する場合、SeagateのIronWolfをお勧めしたい。
家庭/SOHO/中小企業で使われるNAS用のHDDとして、IronWolfは8ベイ以下の環境での稼働を想定して設計されている。具体的には、以下の環境で正常稼働することを想定して設計されているという。
また、MTBF(平均故障間隔)は約100万時間と長時間運用にふさわしい仕様を備え、製品保証も3年間あるため安心して使える。、4TB以上のモデルではさらに、振動を受けた際の性能低下を抑制する「RVセンサー」も搭載している。NASで使うために生まれたHDDといえる。
SeagateのIronWolfは、家庭/SOHO/中小企業で使われるNASに搭載されるために生まれたHDDだ。NAS用HDDに求められる高い信頼性を良好なコストパフォーマンスのもと実現している。今回は、TS-233に64MBキャッシュを備える4TBモデル(ST4000VN008)を2基搭載してレビューを行ったNAS用HDDがPC用HDDよりも高い耐久性を備えることは、他社も同様だ。その上で、IronWolfは他社のNAS用HDDにはない大きなメリットが2つある。
IronWolfのメリットの1つが「IronWolf Health Management」機能だ。
一般に、現代のHDDには自分の状態を診断して報告する「S.M.A.R.T.(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology)」という機能が搭載されている。そのパラメーターを定期的にチェックすれば、故障の予兆を検知できる。しかし、パラメーターは良くも悪くも“パラメーター”であって、それの意味する所や、必要な対処法の検討にはある程度の知見が必要となる。
IronWolf Health Managementを使うと、S.M.A.R.T.による状況の報告だけでなく、障害を予防するためのアクションも提案してくれる。例えば、ホスト・リセットが頻繁に発生した場合、S.M.A.R.T.ではそれが発生したことを示すパラメーターのカウントが上昇するだけだが、IronWolf Health Managementを使うと「HDDの取り付け不備による接触不良ではないか?」と、発生している事象を示唆してくれる。
TS-233では、S.M.A.R.T.情報に加えてIronWolf Health Management使ってIronWolfの状況を日時で実行/分析できるため、障害の予兆をいち早く検知しやすくなっている。
TSS-233にIronWolfを搭載した場合、S.M.A.R.T.情報に加えてIronWolf Health Managementにもアクセスできる。異常がある場合は、S.M.A.R.T.とは異なるエラーコードを表示する
TSS-233では、S.M.A.R.T.やIronWolf Health Managementの分析をスケジュール化して自動実行できるようになっている。毎日テストするように設定しておけば、障害の予兆をいち早く検知でき、それに対する対応も迅速に取れるIronWolfのもう1つのメリットが、「データ復旧サービスRescue」が付帯することだ。これは3年間、1回に限りHDDの故障時のデータ復旧サービスを“無償で”提供するというものである。
通常、HDDの保証は「HDDとして利用できること」の保証であり、保存されるデータはその対象には含まれない。故障したHDDの修理を依頼すると、原因が基板以外にある場合は新品交換対応となることが多いが、その場合、交換によってデータは失われてしまう。
どうしても保存したいデータがある場合は、データ復旧サービスを依頼することになるが、復旧には高度な技術を必要とするため、容量にもよるが復旧費用は数万〜数十万円にもなる。ネットで検索すると、それほど費用の掛からない「安価な」復旧業者も見つかるが、市販の復旧ツールを使うだけの悪徳業者もいる。中には、自らに低評価が付くことを恐れてさらにデータを破壊する業者も存在する。「安いからダメ元で」が、取り返しのつかないことになりかねない。
その点、IronWolfに付帯するデータ復旧サービスRescueにはそういった心配はない。補修用パーツの在庫も潤沢な上、Seagate以上にIronWolfに詳しい会社もない。
TS-233では、ストレージの管理画面からデータ復旧サービスRescueに登録できるようになっている。登録後は登録状況も確認可能だ。
Seagate IronWolfについて、品質テストを始めとするより詳しい説明を確認したい人は、SeagateのWebサイトをチェックしてみてほしい。
本サービスでは、以下のデータは復旧対象外となります。ご注意ください。
TS-233にIronWolfを搭載した場合、ストレージの管理画面でデータ復旧サービスRescue(レスキュープラン)の登録状況を確認できる。登録していない場合は「購入または登録されていません」をクリックすることで登録用のWebサイトにアクセスできる子どもや家族の写真や動画は、二度と撮ることのできない貴重な瞬間の宝庫だ。積み重ねた時間が増えていくにつれて枚数やデータ量も増えていく。しかし、そのような写真や動画は非常にプライベートなものであり、漏えいや流出にも気を配る必要がある。
だからこそ、クラウドストレージに任せきりにするのではなく、自分自身で管理できるTS-233で手元に置いておきたい。クラウドならではの利便性、安全性も、モバイルアプリの活用やRAID1での耐障害性向上、3-2-1ルールのバックアップ、IronWolfのレスキューデータ復旧サービスなどでカバーできる。
大事な瞬間を失わないためにも、TS-233とIronWolfで新生活に備えてはいかがだろうか。
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提供:QNAP株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2022年5月1日