QNAPのNASキットは、チェックすべきポイントを高いレベルで満たすモデルが多い。今回は写真/動画の保存に最適な4ベイモデル「TS-464」を例に、写真を保存する際のパフォーマンスと使い勝手をチェックしていく。
今回はまず、どのくらいの速度で写真をNASに保存できるのかチェックしてみようと思う。607枚の写真データ(合計約4.19GB)をPCからTS-464に転送する際のスピードを幾つかのシチュエーションでチェックしてみようと思う。
検証に利用するPCの主なスペックは以下の通りだ。
搭載しているSSDは、シーケンシャル(連続)の読み出しが毎秒556.35MB、書き込みが毎秒502.83MBというスペックである。この数値にどこまで“肉薄”できるのかが、1つの見どころとなる。
TS-464にはSeagate製の3.5インチHDD「Seagate EXOS 7E8」の4TBモデルを4台組み込み、RAID6でストレージプールを作成し、その上にシンボリュームを構成した(ストレージプールやボリュームの解説は後ほど行う)。シンボリュームには写真保存用の共有フォルダーを1つ作成し、そこに607枚の写真をコピーする。
まず、1000BASE-T対応のスイッチを挟み、最高通信速度を1Gbpsに制限して計測した。結果は以下の通りだ。
この状態で「CrystalDiskMark 8.0.4」でシーケンシャル(SEQ1M Q8T1)の読み書き速度を計測した所、結果は以下の通りとなった。
いずれも、bps換算すると約950Mbpsとなる。通信規格の理論上限に近いパフォーマンスを発揮できている。ただ、現像前のRAWファイルや解像度の高い動画を転送するとなると、もうちょっと速度は改善したい所である。
より高速な読み書きをすべく、挟み込むスイッチをQNAP製の2.5GBASE-T/10GBASE-T対応スイッチ「QSW-2104-2T」に取り換えた上で、2.5GBASE-T接続時の速度を計測してみよう。結果は以下の通りだ。
写真のバックアップは20秒ほど早くなった。この状態でCrystalDiskMark 8.0.4でシーケンシャル(SEQ1M Q8T1)の読み書き速度を計測した所、結果は以下の通りである。
bps換算すると2.4Gbps程度となるので、理論値に近い性能を発揮できている。
今回は端末1台のみでのテストだが、TS-464は4コア4スレッドのCPUを搭載し、2.5GBASE-Tポートを2基搭載しているため、複数クライアントからの同時アクセスやバックグラウンド処理中にもパフォーマンスが落ちにくい。家庭での利用を前提とするなら、素の状態でも十分なパフォーマンスを期待できる。
先のテストからも分かる通り、同時にアクセスするデバイスが1〜2台程度ならLANを2.5Gbps対応とするだけで十分なパフォーマンスを確保できる。しかし、デバイスの台数がより多い場合は、もう少し余裕を持たせたい。
そこで、TS-464にQNAP製の10GBASE-T対応ネットワークカード「QXG-10G1T」を増設し、より高速な10GBASE-T(10Gbps)環境でパフォーマンスをチェックしてみよう。
TS-464に10GBASE-Tカードを搭載し、10Gbpsで通信可能な607枚の写真を転送すると、結果は以下の通りとなった。
先の結果からさらに13秒短縮している。ただ、素の状態から2.5Gbps環境に変更した場合と比べると、伸びは少ない。理論上の通信速度は2.5Gbps→10Gbpsと4倍となっているので、もうちょっと早くなっても良さそうなのだが……。
そこで、CrystalDiskMark 8.0.4を使ってシーケンシャル(SEQ1M Q8T1)の読み書き速度を計測してみると、以下のような結果となった。
bps換算すると、読み出しは5.4Gbps弱、書き込みは3.2Gbps弱である。理論上の通信速度との開きが大きくなっている。
これはネットワークの速度に対して、ストレージの速度が足りていないことを意味する。言い換えれば、ボトルネックのポイントが「ネットワーク」から「ストレージ」に変わったということである。
読み書きをさらに速くするには、ストレージの高速化を検討するしかない。
ストレージをさらに高速にするには、HDDの代わりにSSDを使うと良い。ただし、通常のストレージベイに装着できる2.5インチSSDは、どんなに頑張っても単体では6Gbps(Serial ATA 3.0規格の理論上の最高速度)で頭打ちとなり、RAIDを使って高速化したとしても、効果はに限界がある。何より、コストの面で不利になる。
そこで注目すべきなのがPCI Express接続のM.2 SSDである。TS-464にはM.2スロットが2つ用意されており、ここにPCI Express接続のM.2 SSD(Type 2280)を装着可能だ。
通常、NASにおけるPCI Express接続のSSDは、ベイに装着したストレージに対するキャッシュとして利用することが多い。だが、今回はあえて“ストレージ”として使ってみて、そのポテンシャルをチェックしてみよう。
用意したのは、Samsung Electronics(サムスン電子)製の「Samsung 970 EVO Plus」の250GBモデル2枚。これらで「RAID0」構成の直接静的ボリュームを作成し、読み書きの速度を計測してみよう(※2)。
(※2)本来は、冗長性を確保する観点から「RAID1」で構成すべきだが、今回は“スピード”を重視したのであえてRAID0で構成している
まず、607枚の写真を転送した結果は以下の通りとなった。
月並みだがとても早くなった。先のテストからは24秒、最初のテストからは57秒も短縮している。ファイルの数がより多い場合は、差がより鮮明になるだろう。
この状態でCrystalDiskMark 8.0.4を使ってシーケンシャル(SEQ1M Q8T1)の読み書き速度を計測した結果は以下の通りだ。
bps換算すると、書き込みは5.6Gbps程度と伸び悩んでいるように見えるが、読み出しは9.8Gbpsと、ネットワークの理論最高速度に近いパフォーマンスを引き出せている。これは「読み出しを高速化しやすい」というRAID0のメリットも発揮できた結果でもある。より高速なSSDなら、書き込み速度もより向上できる可能性がある。
これだけのスピードが出るなら、RAWデータや解像度の高い動画データを複数台の端末でやり取りをしても、非常に快適に使える。
最小限の用意にとどめる「スモールスタート」をしたとしても、TS-464は素のスペックも高いため、そこそこ良好なパフォーマンスを発揮する。
接続するデバイスの台数が増えたり、より大容量のデータをやりとりしたりするようになったとしても、拡張性もあるためNASを買い換えずに対処できる。長く使うことを考えると、ランニングコスト面で非常に有利なのである。
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提供:QNAP株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2023年3月27日