バックアップソリューションを導入する際に考慮すべき点はいくつかあるが、ここでは特に重要な8つのポイントを挙げる。
いざというときにバックアップから復元できなかったり、復元できても時間がかかるようであれば意味がない。例えば、前回からの差分だけを記録する「増分バックアップ」しかできない場合、最新バックアップに至るまでのファイルのうち、どれか1つでも欠けていたら復元できない恐れがある。
バックアップしたデータの信頼性と、その復元性の確保は欠かせない。
手動でのバックアップは作業漏れやミスを招く。特に個人に貸与したPCでは、従業員が面倒臭がってバックアップをやめてしまうこともある。ユーザーの負担を減らしつつ、確実なバックアップを行うためには、作業の自動化は必須といえる。
通常のファイルは安全に管理していても、バックアップデータから情報が流出することもある。
バックアップデータの保存やデータ転送にも、暗号化などの安全対策はセキュリティ対策は欠かせない。
現在の企業では、データをバックアップすべき対象はPCからクラウドストレージまで、多岐にわたる。それらのバックアップソリューションを個別に用意するのはコストも手間もかかる。
幅広い対象のデータをバックアップできるソリューションが必要だ。
企業の成長や、蓄積したデータの肥大化にも応えられるよう、バックアップの対象/範囲が広がっても容易に拡張できる「スケーラビリティ」は考慮したい。
スケーラビリティを考慮したソリューションを導入すれば、初期投資はもちろん、将来の追加投資も抑えやすくなる。
必要なバックアップ方式は、機器のパフォーマンスや利用環境などによって変わる。
増分バックアップやフルバックアップなど、柔軟な設定が可能だと管理者はもちろん、利用者への負担も軽くなる。
特に中小企業の場合、情報システムの管理部門がなかったり、あったとしても別業務との兼任だったりすることが多い。そうなると、バックアップソリューションに関する知識を習得するための時間やコストを捻出しづらいこともある。
学習/運用コストが小さく、属人化しない利便性や操作性の高いUI(ユーザーインタフェース)を備えるソリューションを選びたい。
コストは初期投資だけでなく、運用過程でも掛かる。特にライセンス料やサポート費用は、いったん利用を始めてしまうと減ることがなく、じわじわと負担が重くなっていく。
コストの計算は、運用開始後も見据えて行おう。
これらのポイントの中には、相反するものもある。ゆえに、全ての条件を満足するソリューションを見つけることは難しかった。
だが、QNAPのバックアップソリューションであれば、全てのポイントをクリアできる。
QNAPのバックアップソリューションの機軸となるのは、NASだ。
同社のNASは、別途ストレージ(HDD/SSD)を追加する必要のある「NASキット」と呼ばれる製品となるが、企業や組織の規模に合わせてストレージの容量を調整しやすいというメリットを持つ。
加えて同社のNASは、管理者がニーズに応じてさまざまなアプリケーションを追加できる多機能さも魅力だ。バックアップソリューションは、アプリを追加できるという柔軟性に支えられている。
ここでは、主要なバックアップソリューション(アプリ)を4つを紹介しよう。
「Hyper Data Protector」(HDP)はサーバを含むWindows PCや仮想PC(VMWare/Hyper-V)に対応したバックアップツールだ。従業員のWindows PCを含めたオンプレミス機器の総括的なバックアップを行うツールと考えればいい。
バックアップ対象となる各Windows PCにはエージェントアプリ「NetBak PC Agent」をインストールしておく必要がある。NetBak PC Agentは、ファイルやフォルダ単位でのバックアップ/復元が可能なので、日々のバックアップ処理の短縮になるだけでなく、誤操作などで消してしまったり、上書きしてしまったファイルも容易に復元できる。
さらに、システムの完全バックアップ/復元にも対応しているので、リモートワーク中の従業員のPCが故障しても、オフィスに同じ構成のPCがあればバックアップデータを書き戻した上で「先出しセンドバック」することで、すぐに業務に復帰させることができる。
バックアップの実行タイミングは「毎日」「毎月」といった定期スケジュールの他、「システムロック」「ログアウト」といったイベントに合わせて実行するように設定することも可能だ。バックアップの完了後にPCを自動シャットダウンすることもできるので、従業員は事実上“ほったらかし”でもバックアップが進むこともうれしいポイントだ。
保持するバックアップのバージョン(世代)は、最大6万5536世代まで設定できる。これだけバージョンを保持できれば、よほどのことがない限り困らないだろう。
複数バージョンのデータを保存する場合、内部的に「フルバックアップ」と「増分バックアップ」が混在する。増分バックアップには必要な容量を節約できるメリットがあるものの、先述の通りバージョンが1つでも欠けると正常に復元できないというデメリットもある。
その点、NetBak PC Agentには増分バックアップを自動的に“合成”して完全なデータ化をする「Synthetic Incremental Backup」という機能が搭載されている。これにより、効率的なバックアップとデータ復元のしやすさを両立している。
復元操作は「Backup Explorer」からバックアップ日時とファイルを指定するだけと簡単だ。
対象PCが多いとストレージやネットワークの効率が気になるところだが、HDPは組織単位で重複排除を行うGlobal Deduplicationが搭載されている。PC上のデータはOSやアプリケーションなど、異なる端末でも共通に含まれているファイルも多いため、PCの台数が増えても効率的なバックアップが可能だ。
HDPとNetBak PC Agentは共にライセンスフリー(無料)で使えるので、金銭的な負担も増えることはない。
従業員の一部、または全員がMac(macOS)を使用している企業も多いだろう。macOSにはバックアップ機能として「Time Machine」が標準搭載されているが、そのバックアップ保存先にもQNAP NASが利用できる。NASの基本的な機能であるファイル共有を使うこともできるが、「Hybrid Backup Sync 3」(HBS3)を使った一元管理も可能だ。
HBS3のバックアップ対象は、Macだけではない。バックアップには「3-2-1ルール」という考え方があることをご存じだろうか。これは以下のようなバックアップの考え方だ。
今ではデータ損失のリスク低減に非常に効果的な手法として、US-CERT(米コンピュータ緊急事態対策チーム)や米国土安全保障省などもベストプラクティスとして提唱している。
HBS3を使えば、この3-2-1ルールを簡単に実践できる。HBS3は遠隔地のQNAP NASの他、「Amazon S3」「Azure」「Dropbox」など、主要なクラウドストレージにも対応している。例えば、PC/MacのバックアップをQNAP NASに保存した上で、HBS3を使ってNASのデータをクラウドストレージにバックアップすれば、3(本番+QNAP NAS+クラウドストレージ)-2(オンプレミスNAS+クラウドストレージ)-1(クラウドストレージ)ルールを満たせる。
PCの故障が発生した場合はQNAP NASから復元し、自然災害や物理障害などでQNAP NASのデータが失われた場合は、遠隔地にあるクラウドストレージから復旧できる。
なお、QNAP自身もHBS3から利用できるクラウドストレージサービス「myQNAPcloud Storage」を提供している。myQNAPcloudは全世界12カ所のデータセンターで運営されており、99.999999999%の耐久性を誇る信頼性の高いサービスだ。
それでいて、月額料金は1GB当たりわずか0.0049ドル(約0.735円:1ドル150円換算)という破格で提供されている。これはAmazon S3やGoogle Cloud Standard Storage、Azure Blob Storageなどと比べると8割程度安い。加えて、データ転送料は無料(他のサービスでは1GBあたり0.08〜0.12ドル)なので、実際のコスト差はもっと大きくなる。
なお、HBS3もライセンスフリーで利用できる。
事業継続計画(BCP)の観点で、SaaSを利用することは有効な対策の1つではある。しかし、SaaSに過度に依存することも、事業継続では障害となりうる。
特にクラウドサービスでは、データの管理は企業側の責任とする「責任共有モデル」が採用されていることが多い。完全にデータがロストしなくても、大規模な基盤の障害が発生すれば数時間〜数日にわたってサービスを利用できなくなることもある。「クラウドサービスであればデータも機器も冗長化されているから安心」という考えを持つ人も多いが、ネットワーク機器の設定ミスによって全サービスが停止した、という事故は過去に何度も発生している。
また、従量制契約のサービスでは、データが無制限に増大していく可能性もある。退職した社員が持っていたデータを削除してもよいか判断できず、仕方なくそのままにしておく――そんなケースは意外に多い。
このような場合に有効な対策が、クラウドサーバからオンプレミスサーバへのデータバックアップだ。QNAP NASで利用できる「Boxafe」アプリでは、企業で多く利用されている「Microsoft 365」と「Google Workspace」の両方のバックアップに対応する。バックアップ/復元できるデータは以下の通りだ。
バックアップからいつでも取り出せる、となれば退職者だけでなく完了したプロジェクトのサイトやデータもクラウド上から削除しやすくなる。
なお、Boxafeは30ユーザーまでライセンスフリーなので、中小企業なら無料で利用できるのもうれしい。それ以上の規模の企業では、1000ユーザーまでなら30日間無料トライアルがあるので、試してみるといい。
自社で企業情報サイトを運用している企業の中には、CMSエンジンとして「WordPress」を使っているケースが多い。WordPressは手軽に使える一方で、サーバ運用に慣れたエンジニアがいない企業だと、障害やサイバー攻撃が発生したときにサイトを復旧できなくなる事例もある。
そこで使いたいのが「MARS」(Multi-Application Recovery Service)だ。企業側でWordPressで構築したサイトを簡単にバックアップ/復元できる。
QNAP NASにMARSをインストールし、WordPressに「QNAP NAS Backup」プラグインを適用するだけでシンプルに使い始められる。QNAP NASのMARS管理画面からバックアップの対象(ファイル、データベース)を選択し、スケジュールを設定するだけで定期的にバックアップを行える。
復元先を変更して復元すれば、サーバの引っ越しにも利用できる。
MARSは「Google フォト」のバックアップにも対応している。QNAP NASにバックアップしておけば、Google フォトの無料分である15GBを残り容量を気にせずに利用できる。
次のページでは、これらのソリューションを使う上でお勧めのQNAP NASを紹介する。
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提供:QNAP株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2024年4月30日