NVIDIAが久しぶりに手掛けるWindows PC向けSoC「RTX Spark」を搭載するPCが、2026年秋以降に登場する。それに関連して、ITmedia PC USER読者の皆さんが疑問に思うであろうことに可能な限り回答しようと思う。
既報の通り、NVIDIAが6月1日(台湾時間)、Windows PC向けの新型SoC(プロセッサ)「NVIDIA RTX Spark」を発表した。
RTX Spark搭載PCは、従来のWindows PCと異なるポイントが複数ある。現時点で公開されている情報は限られているが、取材に基づいて現時点で分かっていることをまとめたい。
自らサインした「Surface Laptop Ultra」を手に、RTX Sparkのメリットを語るNVIDIAのジェンスン・フアンCEO(6月2日に行われた報道/投資/クリエイティブ関係者向けのイベントで撮影)RTX Sparkと、DGX Station for Windowsが搭載するSoC「NVIDIA GB300」には、ArmアーキテクチャのCPUコアが統合されている。具体的にはRTX SparkにはMediaTekが設計した“超高効率”なCPUコア「Grace CPU」が20基、GB300には36基搭載されている。
いずれにしても、RTX Spark搭載PCとDGX Spark for WindowsはArmアーキテクチャ向けのWindows 11(Arm版Windows 11)で稼働することになる。
6月2日に行われた報道/投資/クリエイティブ関係者向けのイベントでは、Grace CPUの設計を担当したMediaTekから蔡力行CEOがゲスト登壇し、NVIDIAとMediaTekのパートナーシップの強さをアピールしていた従来、Arm版Windows 11が正式にサポートするのはQualcomm製SoC「Snapdragon」に限られていた。今回、RTX SparkとGB300はArm版Windowsで正式サポートされる2社目のSoCということになる。
そうなると「Arm版Windows 11はRTX Spark/GB300に最適化されているのか?」という点が気になる。この点だが、Microsoftが5月31日(米国太平洋夏時間)に公開したブログエントリーによると、同社ではRTX Sparkが対応する最大128GBのユニファイドメモリ(※1)に対して最適化を行ったとしている。
少なくとも、OSの稼働面における不安要素はなさそうだ。
(※1)システムメモリとグラフィックスメモリが同じ空間を共有する(同じ領域にアクセスできる)設計のメモリ
RTX Spark搭載PCとDGX Station for WindowsのOSは大丈夫として、次なる心配はアプリだろう。
Arm版Windows 11では、ArmアーキテクチャのCPUに最適化された32bit/64bitアプリ(Arm32/Arm64アプリ)がネイティブ動作する他、x86アーキテクチャのCPUに最適化された32bit/64bitアプリ(x86/x64アプリ)もエミュレーションレイヤー「Prism」を通して実行可能だ。
Windowsに対応するArmアーキテクチャSoCで先行しているQualcommによると、2025年7月時点において、グローバルの利用者数でトップ100のWindowsアプリは全て、トップ200まで広げても99%以上のアプリはエミュレーションを含めてArm版Windows 11で稼働するという(参考記事)。
筆者もArmアーキテクチャのSoCを搭載するPCを常用しているが、固有のデバイスドライバに依存するアプリ以外は問題なく動作する。ジャストシステムの日本語入力ソフト(IME)「ATOK」がArm対応を果たすなど、日本市場固有のアプリのArmアーキテクチャへの最適化も行われている。
Microsoftも先に紹介したブログエントリーで「PrismをRTX Spark向けに最適化した」としている。
RTX Sparkには、NVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 50」シリーズと同じBlackwellアーキテクチャのGPUコアが統合されている。同社によると、RTX SparkはDLSS(Deep Learning Super Sampling)を活用することで1440p(2560×1440ピクセル)/100fpsのゲーミングも快適に楽しめるという。
しかし、ほぼ全てのWindows向けPCゲームは、GPUはともかくCPUはx86アーキテクチャに最適化されている。もしRTX Spark搭載PCでゲームを楽しむとなると、どうしてもPrismを介して動作することになる。「満足な動作パフォーマンスが出ないのでは?」と不安になる。
その点、MicrosoftはPrismの最適化について、先のブログエントリーで「エミュレーション下で稼働する開発者、クリエイター、そしてゲーミングのワークロードで素晴らしいパフォーマンスを発揮する」と説明している。
RTX Spark搭載PCは、エージェントを始めとするLLM(大規模言語モデル)ベースのAIをローカルで快適に稼働することにあるが、ゲーミング目的でも想像以上に良いパフォーマンスを発揮できそうだ。
6月1日(台湾時間)に行われたジェンスン・フアンCEOの基調講演では、Windows版の「007 First Light」(左)と「Forza Horizon 6」(右)が実際に稼働するRTX Spark搭載ノートPCを持ってくるデモンストレーションがあった。一般的なゲーミングノートPCよりも“薄い”ボディーでありながらも、ゲームが高品質なグラフィックスで滑らかに動く様子は“スゴい”のひと言だったNVIDIAは、Adobeと共同で動画編集アプリ「Adobe Premiere」とレタッチアプリ「Adobe Photshop」のRTX Sparkへの最適化を実施することも明らかにした。
同社によると、この最適化によってクリエイティブワークフローが従来比で最大2倍の速度で行えるようになるという。「薄型でも“強い”写真/動画編集用ノートPCが欲しい」という人にも、RTX Sparkは恩恵となりそうだ。
さて、強力なArmアーキテクチャのCPUコアと、強力なBlackwellアーキテクチャのGPUコアを統合したRTX Sparkだが、どのようなPCが登場するのだろうか。
RTX Sparkは14〜16型のプレミアムノートPCに搭載することを想定としたSoCで、一番薄いモデルは本体の厚さが約14mmと、外部GPUを搭載するノートPCと比べて持ち運びに適した形状での登場する。現時点では以下のモデルが2026年秋以降に順次発売される予定だ。
RTX Sparkを搭載するプレミアムノートPC。左からXPS 16、OmniBook X 14、ProArt P16、Yoga Pro 9n、Prestige N16 Flip AI+、Surface Laptop Ultra(フアンCEOのサイン入り)で、プロシューマーを含む個人向けブランド/モデルであるまた、RTX Sparkは超小型デスクトップPCでの利用も想定しており、基調講演ではDell Technologies、ASUSTeK Computer、Lenovo、MSIの4社の製品が参考展示されていた。超小型ながらもローカルLLMが実用的に稼働し、ゲームもそこそこ楽しめると考えると、かなり魅力的な選択肢といえる。
RTX Sparkを搭載するPCは、2026年秋から順次発売される。想定価格は提示されていないが、現時点で分かっているノートPCのラインアップを見る限り、高価格帯になることは間違いない。
ただ、外付けGPUを搭載するPCと比べると薄くて小さいという点は何にも代えがたいメリットといえる。個人的には1日でも早く使ってみたい。果たして、待ちきれるだろうか……?
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2026年6月30日