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謎の中国HDD「Excelstor」で「中国製硬盤」に思いをはせる山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

世界一豊富な品揃えの秋葉原や日本橋でも購入できぬHDDがある。現地でこのHDDを入手してベンチマークをとってみた。

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そもそもExcelstorのHDDって何だ?

筆者が購入したExcelstorのパッケージ

 ExcelstorというメーカーのHDDを皆さん知っているだろうか。だいぶ前に一度だけ秋葉原で同社の「JUPITER J420」(40Gバイト、Ultra ATA/100対応)が流通したことがあるが、それ以外に日本でExcelstor製HDDが販売されているという話を聞いたことがない。

 正直、筆者もこのHDDの日本における影の薄さ(というかマニアックさ)から、そのメーカーの存在をすっかり忘れていたのだが、同社が中国のPC誌や電脳街で「6カ月試用して気に入ったら買ってくださいキャンペーン」なるものをやっていたため、その存在を思い出し購入した。「入手」でなく「購入」と書いたのは、筆者の滞在する都市はキャンペーン対象外だったため。ええぃ、なんでだ。

 購入したのは「JUPITER J880」。Ultra ATA/133、80Gバイト、7200rpm、キャッシュ2Mバイト。価格は6750円(450元)。購入したパーツショップにあった同容量他社製品HDDも含めた同容量HDDのなかでJUPITER J880がほんのわずかながら最も安かった。

 簡単に同社の紹介をしておこう。Excelstorは、PC用電源やコンシューマー向けPC、そしてサーバまで扱う中国総合ITメーカー「長城集団」の子会社だ。当初はIBM(現在の日立グローバルストレージテクノロジーズ、HGST)のHDDを委託されて生産する一方で、IBMのHDD技術を利用した独自ブランドのHDDを開発し販売まで行っていた。現在はExcelstor自身で米国コロラド州にR&Dセンターを持ち、独自ブランドの開発販売を行っている。

JUPITER J880の表面
そしてJUPITER J880の裏面

 ちなみに、同社は中国初のHDDメーカーではない。いまから3年前の8月末から日本市場に登場した容量2.2GバイトのCF型HDDをリリースしたGS Magic(当時の社名はMagicstor)が中国では初めてのHDDメーカーになる。GS Magicは「西部大開発」の号令のもと、中国南西部にある中国でもっとも経済発展が遅れている貴州省の省都、貴陽の郊外に作られた(ちなみにExcelstorは西部大開発と関係なく、広東省の深センで設立された)。ExcelstorもGS Magicもアメリカで研究開発して中国で量産するというシステムは共通している。3年前にGS Magicを取材で訪れたとき、同社が示したロードマップでは2.2Gバイトモデルに続いて4.4Gバイトを、そして1年以内に8Gバイトモデルをリリースし、それと並行で1.8インチと0.85インチのHDDをリリースすることになっていたが、現在GS Magic社のWebページで確認できるラインアップは、 2.2Gバイト、3.3Gバイト、4.0Gバイト、6.0Gバイトのモデルとなっている。中国のメディアによると、貴州省政府が1億ドルをGS Magicに投資したが、同社の業績は悪化し続け、GS Magicを再建するために同じHDDメーカーの米Corniceが買収するという話が出ている。

 Excelstorに話を戻そう。同社にはデザインや製品ラインアップがまったく異なる2つのWebページがある。1つは「Jupiter」シリーズと「Gemini」シリーズを扱うExcelstorのサイト。もう1つは「GStor Plus」ジリーズと「GStor」シリーズを扱うGStorのサイトだ。

Jupiter
モデルJ880SJ680SJ880J860J840
インタフェースSerial ATA IISerial ATAUltraATA133UltraATA133UltraATA133
容量80GB80GB80GB60GB40GB
回転数7200rpm7200rpm7200rpm7200rpm7200rpm
キャッシュ8MB8MB2MB2MB2MB
ディスク/ヘッド1 / 21 / 21 / 21 / 21 / 1

Gemini
モデルG280G160G140
インタフェースUltraATA100UltraATA100UltraATA100
容量80GB60GB40GB
回転数5400RPM5400RPM5400RPM
キャッシュ2MB2MB2MB
ディスク/ヘッド1 / 21 / 21 / 2

 GStorおよびGStor Plusシリーズは少し変り種で、同社はこのシリーズのHDDを「セキュリティHDD」と呼んでいる。これらの製品にはHDD自体にパスワードをかける「Hardware Encryption」、PCがウイルスに感染した場合に感染前のシステムに戻すことができる「Instant Restore」、マスターブートレコードやブートセクターなどブートに関わるエリアをほかのHDDの領域と隔離した「Multi-boot」からなるセキュリティ機能が実装されているのが特徴だ。Excelstorはこれらの機能を称して「ストレージファイアウォール機能」と呼んでいる。

GSor Plusは、その高いセキュリティ機能からドイツでInnovation Award 2006を受賞している。

 同社のWebページの情報によると、主な出荷先は中国大陸はもちろん、米国や東南アジア諸国、ヨーロッパ諸国など世界中に展開している。しかし、日本では今のところ販売はしていないようだ。

GStorPlusとGStor。日本ではまったく知られていないこのHDD、実はそのセキュリティ機能がヨーロッパで高く評価されているそうな。残念ながらそのスペックはWebページでも明らかにされていない

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