第8回 Vistaにおけるデバイスドライバのゆくえ:元麻布春男のWatchTower「Windows Vista編」(2/2 ページ)
PCウオッチャーの元麻布春男氏が、さまざまな切り口で最新PC事情を分析する本連載。今回はWindows Vistaにおけるデバイスドライバの扱いをチェックした。
11月の製品リリースに向けて困難な道のりが続く
というわけでWindows Vistaではデバイスドライバ環境が大きく変わる。だからこそ、広いユーザーに新しいドライバをできる限り使ってもらい、性能、互換性、安定性についてフィードバックを得なければならないはずだ。しかし実際には広く配布されたβ2ではデバイスドライバのサポートが限られており、追加配布も行われていないのが実情だ。
次にMicrosoftが広くディストリビューションするVistaのプレリリース版は、RC(リリース候補)になると言われて、実際9月2日に公開された(ビルド5600)。しかし、現状を考えればRCで初めてユーザーに試されるデバイスドライバも少なくないはずだ。リリース、テスト、リポート、フィックス、再リリースによる確認のプロセスを経ないコードを出荷するのが大きなリスクであることを考えれば、RCの次にもう1度評価の機会が必要なのではないだろうか。そう考えると、11月の製品リリース(企業向け)がいかに困難なスケジュールであるか分かってくる。
Column 〜Microsoft Flight Simulator Xを試す〜
上でも述べたように、Windows Vistaではデバイスドライバ環境が大きく変わる。なかでもディスプレイドライバは、WDDM(Windows Display Driver Model、以前はWindows Vista Driver Modelと呼ばれていた)と呼ばれる新しいアーキテクチャへ移行することが強く求められる。WDDM準拠のドライバがWindows Vistaのプレミアムロゴの条件になっていることでも、これがどれだけ重要か分かろうというものだ。また、MicrosoftはDirectX 10以降について、WDDM環境以外をサポートしない(DirectX 10はWindows Vista/WDDM専用となる)ことを明言している。
このWDDM環境に対応した(潜在的なDirectX 10対応)アプリケーションと考えられているのが、Microsoft Flight Simulator Xだ(システム要件に、Windows XP SP2またはVistaと明記してある)。Microsoft Flight Simulatorと言えば、同社エンターテインメントソフトの代表格の1つで、現在2006年のホリデーシーズン(2006年のクリスマス商戦)のリリースを目標に開発中のタイトルである。もちろん、WDDM/DirectX 10専用タイトルではなく、DirectX 9環境にも対応したアプリケーションなのだが、DirectX 10関連のホワイトペーパーなどに明らかにMicrosoft Flight Simulator Xのものと思われる画面が用いられおり、注目されている。
このMicrosoft Flight Simulator Xのデモ版がリリースされたので、早速ダウンロードしてみた。もちろん、Vistaのβ版で動かしてみるためだ。636Mバイトもあるデモ版をようやくダウンロードし、Windows Vista Build 5472にインストールしたのだが、致命的エラーでどうしても実行できない。グラフィックスカードは、ATIとNVIDIA、両方とも試したのだが結果は同じ。OS、アプリケーション、両方ともβ版だからどちらが悪いとも言えず、非常に残念だ。あまりにも悔しいので、Windows XP(SP2)で動かした際のスクリーンショットを最後に掲載しておこう。

左はFlight Simulator Xのホームページで、対応OSにはVistaの文字が見える。右はデモ画面で、実行環境はWindows XP(SP2)上のDirectX 9(グラフィックスカードはATI RADEON X850XT)だ。飛行中にビューを切り替えて自機を外側から見たところをキャプチャしたものだが、コクピット描写が無人というのはいただけない
元麻布春男氏のプロフィール
フリーライター。IBM PC/AT互換機以前からPCの世界に入り、さまざまなメディアでPCに関する評論やレビュー、コラムなどを執筆。とくに技術面での造詣が深く、独特の切り口による分析記事は人気が高い。
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