もう1つの“革命”という名の小型マウス:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
元麻布春男氏が最新PC事情を分析する本連載。今回は“革命”の名を与えられたもう1つのロジクール製マウスを見ていく。ノートPC用だからと言って侮ってはいけない。
アイルランド郊外でデザインと設計・ハードウェアの開発を手がける
前回と今回にわたって紹介してきたロジクールのRevolutionシリーズマウスだが、マウス本体のデザインと開発が行われたのはアイルランドである。アイルランドの首都ダブリン郊外にあるDesign Partnersで主にマウスの外形デザインが、南部の都市コーク郊外にあるLogitech(ロジクールはLogitechの日本法人だ)のエンジニアリングセンターで、MicroGearに代表される機構部分が開発された(ほかにソフトウェア開発を米国フリーモントの本社が担当する)。
Design Partnersは、1994年からLogitechとパートナーシップをむすぶインダストリアルデザインの会社で、Logitechの主要製品を広く手がけるほか、PalmのTreo(スマートフォン)や医療機器などを手がけている。Revolutionシリーズの開発にも初期段階からかかわり、デザインについて主要な役割を果たしている。
実は今回発売となるRevolutionシリーズは、Logitechの創立25周年を記念する製品だ。2年前から、25周年にふさわしい製品を検討しようではないかと副社長が提案したことから開発がスタートしたという。ちなみに、Logitech創業の地はスイス・ローザンヌ郊外で、現在生産拠点を置くのが中国だから、実にインターナショナルな企業ということになる。
Revolutionマウスシリーズは25年の集大成
25周年を記念するマウスに何がふさわしいのか。ユーザーからの意見は、マウスに余分な機能は要らない、というものが多かったようだ。しかし、何も要らなければ新製品もない。よくよく調べると、ユーザーがマウスに期待しているのは、スポーツカーのような無駄をそぎ落としたイメージの製品、というとだったらしい。MicroGearに採用された高速回転する金属製のホイールは、スポーツカーのイメージなのかもしれない。
この調査によるとLogitechのコアユーザー像は、
- 84%が男性
- 年齢は30代
- PCにかける予算はあり、20%の人が年に1個のマウスを購入する
- 同時に複数のアプリケーションを利用する
- 1日8時間以上、PCを使う
- Microsoft Officeのユーザー
というもので、長い文書、大きな画像と格闘する結果、マウスではデスクトップのナビゲーションがスムーズにできなくなりつつあるということが分かった。新製品の改善ポイントは、初期段階からスクロール性能の改善と、ナビゲーション性能の向上におかれた。トラッキングについては、2004年に採用したレーザーセンサーで一定の問題解決ができていた、ということもあっただろう。ナビゲーション強化という点から登場した機能がサムホイールとドキュメントフリップ、スクロール性能の改善から誕生したのがMicroGearだ。
開発はDesign Partnersが主導しつつ、それをコークのエンジニアリング部隊が具体的な機構に落とし込んでいく、という形で進められたようだ。その過程において、当初は360度回転するサムホイールがジョグ形式に改められたり、といった変更も加えられた。
2004年11月にスタートした開発は、2005年4月から試作が始まり、2005年6月にはフリースピンモードを備えたスクロールホイールのデモンストレーターが完成したという。その評価を行い、2005年8月にMicroGearとして製品化されることになるスクロールホイールの開発がスタートした。
この段階での開発は、単に機能や性能が一定水準を実現すればよいというものではなく、8秒ごとに1個のマウスを生産するというLogitechが求める量産性やコストを含めて、同社の基準を満たすことを前提に進められなければならない。14グラムある金属製のホイールが最高2000rpmで回転するホイールアッセンブリを3本のネジで構成すること、スペック上100万サイクルのモード切り替えに耐えられるモーターとするため、800万サイクルの実使用が可能なモーターを選定する、といった作業が積み重ねられ、完成に至った、というわけだ。
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