迷走する“EVD”を試しに購入してみた(前編):山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
中国の次世代光メディアの標準に「なりたい」EVD。なんだか2006年末に大セールをしているようだったので、思わず買ってしまったっ。吉となるか凶となるか今年初めの運試し。
国美電器を何店かまわってみたが、EVDプレーヤーは「新科」(シンコ)製のEVDプレーヤー数機種しか販売していなかった。EVDソフトに至っては店員に売っているか聞いて教えてもらわないと分からないような、隅にポツンとおいてある状況で、日本におけるHD DVD、BD対応コンテンツの販売状況のほうがかなりましである。なお、店内ではEVD2関連製品が発売されていない代わりに、HVD関連製品はけっこうあった。
「中国人の作った規格だ!」という理由で消費者が買うかどうかは不明だが、筆者が訪ねた国美電器においては「EVDを買おうとして“EVD”対応製品を購入すると実は旧バージョンの“地雷”を踏むことになる」「最新のEVD規格対応プレーヤーを購入したいなら“HVD”を購入しなくてはいけない」ということを告知するPOPなり店員の説明はなかった。ユーザーが事前に知っておかないと間違ってしまうわけで、これはずいぶんと不親切なことだ。
ところでHVD関連製品には、DVD上に焼かれたAdobeのFlashファイルのデータが再生できるというプレーヤーも販売されていた。その製品のキャッチコピーは「PCではなくリビングにおいた大画面TVでFlashの動画が見れますよ」だ。日本では「リビングでFlashが見れますよ」といわれても「それがなに?」と返されそうだが、Flashが人気な中国ならではの企画製品といえるだろう。
ちなみに国美電器でプレーヤーにおいてもソフトウェアにおいてもラインアップが一番豊富であったのが「DVD」だ(VCDは販売されていなかった)。DVDプレーヤーは300元〜400元のものが多い。この価格帯は「HVDで最も安い機種」のさらに半額になる。EVDはソフトもそろっていないばかりか、プレーヤーの価格は高嶺の花なので購入しずらい。なお、DVDばかりが売られている国美電器は中国全体の縮図か、というとそうでもない。都会の中の貧困地域「城中村」や地方に行けばVCDは現役で販売されている。
筆者は、この先ソフトが供給されないかもしれない不安をよりも、「中国の自信作!」というアピールが気になっていた。そこで「EVDが欲しいな〜」という中国人民になったつもりで、EVDに対応した新科の最新のEVDプレーヤーの購入することにした(決して地雷を踏んだわけではない)。
選んだのは新科の最新機種「EVD」。値段はEVDのラインアップの中でも最も高い1597元(約2万5000円)。本体のほかにメーカーのお土産として、映画タイトルなどのEVDビデオソフトが27枚詰め込まれたEVDソフトパックを貰った。お土産をつけない代わりに安くするという選択肢もあるだろうが、EVDの映像をアピールする目的でコンテンツをオマケにするのもアリだと思う。1本千円で本体の元が取れてしまうと思えば日本人ならばかなりお買い得に感じる。
ところで担当の店員はこんな高いプレーヤーが売れて相当嬉しかったのだろう、EVDソフトパック以外にも、次から次へとお土産を手渡してくれる。ホットプレート、新科のロゴ付の折りたたみ傘、さらにおまけで笑顔で「持ってけ泥棒!」といわんばかりに、何枚かの海賊版DVDを取り出して筆者に渡してくれたのである。
(後編へ続く)
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