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安価に構築できる電脳ナビ「PEC」で海を渡る勝手に連載「海で使うIT」(1/3 ページ)

まもなく春分。昼が長くなって「海を越えてクルージング」の季節がやってくる。これまで「電脳航海システム」を紹介してきたこの連載であるが、今回は「とりあえず始める」PECを取り上げる。

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小型船舶で求められる電脳ナビゲーションの機能とは

PCによるGPSプロッタが安価に実現できる「PEC」

 なぜ、「とりあえずPEC」なのかというと、それはやはり「導入コストの安さ」につきる。電子海図のフォーマットやハードウェアの種類はいろいろあれど、PCで使える電脳ナビゲーションシステムとしては、海図データとナビゲーションソフトがセットになって(一体になって、が正しい表現かもしれない)1万2600円というのは最も安い部類に入る。ノートPCがあれば、低価格のハンディGPSと組み合わせて「とりあえず」電脳ナビゲーションシステムが構築できる。

 プレジャーボートに乗る「小型船舶操縦士」が利用する電脳ナビゲーションでは、航海計画段階において「地図としての海図情報」「ユーザーによる情報のカスタマイズ機能」「航路策定機能」が重要になる。「海図情報」なんて当たり前ではないか、と思うかもしれないが、その対象が本船ではなく小さいプレジャーボートであるPECでは、必要とされる情報も変わってくる。灯台や浮標などがもれなく収録されているのは当然として、海図で重視される大規模な本船用の港湾ではなく、プレジャーボードの利用が多いマリーナや漁港という小規模な港の情報がPECには求められる。

 さらに、航海中においては「少ない操作で利用したい機能が呼び出せるUIレイアウト」「現在位置から任意位置への針路と距離が表示できるドラフター機能」「任意目標の属性情報がすばやく表示できる」といった機能が求められる。「少ない操作で利用したい機能が呼び出せるUIレイアウト」は動揺が激しい小型船舶において非常に重要であるし、事前にプロットした航路に沿ってGPSで場所を表示しながら航海するといっても、海が時化て避難港へ向かうことになったら急遽新しい針路と距離を割り出さなければならない状況では、簡単に新しい針路を設定できるかが電脳ナビゲーションシステムに求められる。また、ヨットでは、風向きによって事前に設定している航路から外れたコースを進むこともありえる(というか、そういう場合のほうが多い)。この場合、風向きの変化によって航路は刻一刻と変化するので、そのたびに、本来の目的に向かうための針路を求めなければならない(もっとも、事前に設定したコースから外れるような状況では迷わず機走する、というヨット乗りならその限りではないが)。

航海計画段階におけるPECの使い勝手

 「紙海図の電子版」といわれるENCほどではないにしろ、PECには、海図をプレジャーボード用に再編集して作成されている「ヨット・モータボード用参考図」に準ずる情報が収録されている。海岸線や岩礁の表示精度は、基となる海図やPECが発行されてから数度にわたって行われたアップデート作業が行われた結果、「海域と港」によって大きく異なっている。関東近海のデータを収録している「東京湾および付近」で見ると、例えば三崎港とその周辺における海岸線や岩礁の表示は非常に精密であるが、その対岸にある内房や伊豆諸島の島々になると、基データとなっている海図と同等の精度でしか海岸線が記入されていない。

左と中央はPECとENC(JP34NC9C)で新島北部を表示したところで、どちらも若郷漁港は描かれていないがPECには(とりあえず)漁港のアイコンと防波堤先端に設置されている灯台(YLt)が記載されている。一方でPECは三浦半島や東京湾の西側が細かく表現されている

ただし、同じ伊豆半島でも例えば神津島のようにENCより詳細な港の線が収録されている(画面左はPECで中はJP34NC9C)場合や、同じPECでも三宅島の阿古漁港(画面右の左寄り)と坪田漁港(画面右の右寄り)のように規模によって精度が異なるケースがある

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