高音質PCは立派なオーディオ機器になれるか?――オンキヨー「SPX-1」:Vistaに頼らず音を追究(3/4 ページ)
オンキヨーの「HDC-1.0」は高音質にこだわったVista搭載コンパクトPCだ。今回は3月10日に発売された専用スピーカーセットモデル「SPX-1」の実力をチェックした。
多彩な機能を持つジュークボックスソフト「CarryOn Music 10」
リモコンで操作できるジュークボックスソフトの「CarryOn Music 10」は、WAIVOシリーズにバンドルされているCarryOn MusicシリーズのHDC-1.0対応版だ。CarryOn Musicシリーズは、アナログ入力からの充実した録音機能が特徴の1つ。無音検出による曲分割や、録音した波形を見てインターネット上の曲名データベースと照合する「Gracenote MusicID」機能など、音楽CDのように直接リッピングできない音源もアナログ入力から録音することで、楽曲ライブラリへ手軽に登録することができる。録音後に自動分割できなかった曲の手動分割、ノーマライズ、ノイズ除去、フェードイン/アウト、最大24ビット/192kHzでの録音など、アナログ音源を取り込む機能は万全だ。
さらにCarryOn Music 10は、付属の双方向リモコンに対応したことに加えて、オンキヨー自身が運営する音楽配信サイト「e-onkyo music」からのダウンロードサービスを利用するためのWebブラウザ機能や、登録したポッドキャストのダウンロード機能も持つ。e-onkyo musicでは、CDクオリティ(16ビット/44.1kHz)を大きく上回る24ビット/96kHzの楽曲(WMA Pro Lossless)が配信されており、音質を重視したSPX-1にはうってつけだ。ポッドキャストのダウンロード機能は、登録したサイトの更新をチェックし、自動的にダウンロードしてくれるので、ポッドキャストフリークでなくても、手軽に音源の1つとして楽しむことができる。
なお、CarryOn Music 10で管理している音楽は、音楽CDとしてCD-Rに書き込んだり、Windows Mediaに対応したポータブルプレーヤー(USBマスストレージクラス/MTPデバイス)へ転送できる。
CarryOn Music 10が対応する音楽フォーマットはWAV/WMA/MP3/AAC/Ogg Vorbis/DGSと幅広く、Windows Media PlayerやiTuneでCDから読み込んだ音楽ファイルもCarryOn Music 10に登録することで、リモコン操作が行える。とくにWMAは著作権保護技術(DRM)にも対応しているので、e-onkyo musicに限らず、mora winやナップスタージャパンからダウンロード購入したWMA DRMの楽曲を扱うことも可能だ(ATRACは6月初旬のアップデートで対応予定、iTune storeで購入したMPEG-4 AACの楽曲は扱えない)。
ジュークボックスソフトとして豊富な機能をそろえたCarryOn Music 10だが、一般的な2フィートUIを用いた画面構成には少々疑問を覚える。せっかく高性能な双方向リモコンを用意したのだから、離れた場所からリモコンで操作できるようにWindows Media Centerのような10フィートUIを採用してもよかったと思う。また、製品コンセプトから動画や静止画に対応しないのは理解できるが、昨今のトレンドを考慮すると、アルバムアートを大きく表示してアルバムの楽曲をソートするような機能や、漢字を含む日本語楽曲の読み仮名登録機能などがあれば、なおよかった。
なお、CarryOn Music 10には、あらかじめCD音質で記録されたクラシック入門パック20曲や、24ビット/96kHz試聴用のクラシック4曲(各45秒)がプリインストールされている。また、再生にライセンスの取得が必要になる24ビット/96kHzのクラシック10曲とジャズ10曲のデータもインストールずみだ。これらはe-onkyo musicからライセンスを購入することで、楽曲データをダウンロードすることなく再生が可能になる。
高域から低域まで幅広く聞かせる専用スピーカー
以上はPC本体のHDC-1.0について紹介したが、今回入手したのは専用スピーカーとのセットモデルであるSPX-1なので、付属のスピーカーも見てみよう。付属の2ウェイバスレフ型スピーカー「D-P1」はHDC-1.0用に設計されたものだ。アンプはR側スピーカーに内蔵され、実用最大出力は40ワット+40ワット(4Ω)となっている。ウーファーは10センチ径のA-OMFモノコックコーン、ツイーターは3センチ径、周波数特性は50Hz〜100kHz、クロスオーバー周波数は3.5kHz、入力インピーダンスは10kΩ以上といったスペックだ。
スピーカーのインタフェースは、背面にRCAアナログ音声入力×2、光デジタル音声入力×1、RCAサブウーファ出力×1、前面にステレオミニのヘッドフォン出力×1を搭載している。外形寸法は、R側が169(幅)×240(奥行き)×263(高さ)ミリ、L側が169(幅)×215(奥行き)×263(高さ)ミリ。重量はR側が6.4キロ、L側が4.3キロだ。
この専用スピーカーは、小型ながら2ウェイユニットを採用し、PC本体を上回る重さがあることからもわかるように、ミニコンポ向けのステレオスピーカーとは違う本格的な造りをしている。
さて、ここからはあくまで筆者の主観になるが、肝心の音質について確認してみた。専用スピーカーの音質に関しては、クラッシックのオーケストラのような高域から低域まで幅広く聞かせる音楽でもしっかりと鳴り、デジタルアンプのキレのよさも相まって、サイズを超えたパワフルな音を聞かせる。ただし、幅広い帯域の再生にこだわったためか、逆に中域、とくに女性ボーカルの帯域は、相対的に引き気味に感じた。もっとも、これはイコライザーでの調整範囲だろう。
さらにHDC-1.0の真の実力を引き出すなら、別体のアンプに接続して聞いてほしい。手持ちのサンスイ(かなり古いが)のプリメインアンプにつないで聞いたところ、解像感こそピュアオーディオ機器にはおよばないものの、飾り気のない素直な音を聞かせてくれた。BGM的に鳴らしっぱなしにするHDDジュークボックスの用途に向いた音質だ。HDC-1.0のデザインを「INTEC 205」と共通化したわけが理解できる。このクラスのハイコンポにつないで使っても、遜色ない実力をHDC-1.0は持っているのだ。
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