“コンピュータをもう1度我が手に”――HPのデザイン展望:青山祐介のデザインなしでは語れない(2/2 ページ)
語られるようでいて実は語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。PCメーカー編の第6回はヒューレット・パッカードだ。
今後はZEN-Design以外のパターンを積極的に展開する
ハードコートの透明層の内側に一体成型された模様を持つHP Imprint技術。現在、HP Pavilion Notebook PCシリーズのすべてがZEN-Designコンセプトの波形を採用しているが、アメリカでデザインワークを行うウルフ氏が、ワールドワイドに展開する同社のノートPCにあえて日本的なZEN-Designの波型模様を採用したのは、このデザインがいろいろな意味でほかのパターンよりも優れていたからだった。
ウルフ アイデアを探すためにいろいろなグラフィックブックを参考にしました。また、ファッションや家具、生地や織物といった異分野の要素も参考にしています。ZEN-Designの波形以外に植物のような有機的なパターンも検討しましたし、ネオロマンチックのようなかなり装飾性の強いものも試してみました。しかし最終的にZENに落ち着いたのは、地域性や男性や女性といった性差にも関係なく誰もが引きつけられるパターンだったからです。ほかのパターンは好き嫌いが二極化してしまいがちなのですが、このZEN-Designだけは誰もが気に入ってくれました。また、アジア、ヨーロッパ、アメリカのどの地域でも、見る人にいい印象を与えました。そういったニュートラルさが最終的にZEN-Designを選ぶ要因になったのです。
この波形を露骨に見せないのが、一連のHP-Imprint技術によるウルフ氏のデザインの真骨頂だ。確かにパッと見では分からないほどかすかな表現なのではあるが、よく見てみるとそこにとても豊かなパターンがあるということに気が付く。そのようなところに、ユーザーは魅力を感じるとウルフ氏は語る。もちろん、HP-Imprintの技術を使えば、現在の波形以外にもさまざまな表現ができる。事実、ウルフ氏によると、ZEN-designの波形以外にも限定版としていくつかのパターンも用意しているという。現在日本では販売されていないが、「Oder to Chaos(秩序から混沌へ)」というパターンや、Presarioシリーズに「Digicode(デジコード)」のパターンが用意されている。
ウルフ Presarioは普通のPCなのですが、Pavilionはもっと人生を豊かにするような高級感、洗練さ、強い印象を与える形を持っていますから、それぞれにデザインにも差別化を図っています。具体的にはPresarioの場合はデジコード、Pavilionの場合はZEN-Designの波型模様と、それぞれのブランドを強調するパターンを採用しています。
Pavilionシリーズは“プリンタのHP”のイメージを打ち破る
今回、HPのデザインと近未来のモバイル製品に関するコンセプトを説明するワールド・ツアーの一環として来日したウルフ氏。現在、HPは「The Computer is Personal Again」の標語を掲げ、新たなライフスタイルを提案すべく新製品の投入を開始した。先日日本でも公開された「HP TouchSmart PC」や、「HPモバイル・イノベーション・ツアー」も、このコンセプトに基づいている。
日本のPC市場に対しては、全体的に洗練されているという印象を持ったという。アメリカやヨーロッパではまだまだ関心の薄い12インチ以下の液晶ディスプレイを搭載したモバイルPCのデザインに関しては、特に洗練されているという印象を受けたそうだ。
また、日本では競争の激しい携帯電話とノートPCのデザインについてウルフ氏は比較する。もはや技術的な差がなく誰でも持っているのが当たり前の携帯電話では、個性的なデザインで差別化を図るしかないのに対して、PCの分野ではまた技術面での差別化が図れるためデザインでの競争はそれほど激しくないという。しかし、いつか技術が横並びになったときには、やはり個性的なデザインで差別化を図らなければならないと考えている。
ウルフ 今までのHP製PCのデザインでは素材や形といったデザイン面ではライバルとそれほど変わらないもので、それを打ち破るということが足りなかったと思います。しかし、今回発表した近未来のコンセプトワークと同じような形で、Pavilionのデザインを突き詰めてみました。それが、今の新しいHP Pavilion Notebook PCシリーズなのです。これまで、HPはプリンタの会社だと思われてきたかもしれませんが、決してそんなことはありません。それを、このPavilionシリーズによって技術やデザイン力のある会社だと印象付けられたのではないかと思っています。
関連記事
- 真の創造とは複雑なモノを簡単にすることだ――HPのデザイン哲学
日本HPが、製品デザインと未来のモバイル製品に関するコンセプトの説明会を行った。同社が考えるデザインとは? 近未来のビジョンとは? - ThinkPadは“黒いBento Box”である(後編)――黒くて四角いアイデンティティ
語られるようでいて実は語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。PCメーカー編の第5回はレノボ・ジャパンの「ThinkPad」シリーズ後編だ。 - ThinkPadは“黒いBento Box”である(前編)――ThinkPadのデザイン思想
語られるようでいて実は語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。PCメーカー編の第4回はレノボ・ジャパンの「ThinkPad」シリーズ前編だ。 - 「これでいい」より、「これがいい」――NECデザインの意気込み
語られるようでいて実は語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。PCメーカー編の第3回はNECの「LaVie C/Lシリーズ」だ。 - NとEとCを忘れずに――NECデザインの取り組み
語られるようでいて実は語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。PCメーカー編の第2回はNECの「VALUESTAR Sシリーズ」だ。 - 「デザインは生活を変えられる」――日立Priusシリーズの挑戦
製品レビューもいいけど、それだけじゃ物足りない……。語られるようでいて実は語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。PCメーカー編の第1回を飾るのは日立製作所の「Priusシリーズ」だ。 - まずは2けたのシェア獲得を目指す――日本HPがコンシューマー向けデスクトップPCを発表
日本HPが発表会を開催し、ほぼ4年ぶりにコンシューマー向けデスクトップPCをお披露目した。また、会場ではCESで公開されたコンセプトPCも登場した。 - 国内シェア拡大の布石――「HP Directplus Station」を体験
日本HPはデスクトップPCの新機種投入とともに、ビックカメラ3店舗で同社製品の常設展示スペース「HP Directplus Station」を展開している。 - 日本HP、「HP Pavilion」シリーズにデスクトップ/ノートPC計5製品を追加
日本ヒューレット・パッカードは、個人向けPC「HP Pavilion」シリーズにデスクトップPC4製品およびノートPC1製品の計5製品を追加した。 - HDMI付きで16万円台を実現したパワフルノートPC――「HP Pavilion Notebook PC dv9200/CT」
日本ヒューレット・パッカードのPavilionシリーズに、待望のフラッグシップ機が登場した。17インチワイド液晶ディスプレイとHDMI端子を備えているのが特徴だ。 - HDMI端子付き17インチワイドノートPCから低価格タブレットPCまで全4モデル――日本HP 2007春モデル
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は1月15日、Windows Vista搭載の個人向けノートPC「Pavilionシリーズ」3モデルと、低価格ノートPC「G5000シリーズ」1モデルを発表した。 - 日本HPが提案する“生活エンジンPC”は何馬力!?――「HP Pavilion Notebook PC dv6100/CT」
今年の6月に日本HPが国内の個人向けPC市場に再参入を果たしてから早4カ月弱が経過した。その流れを受け継ぐ新モデルが、この“生活エンジンPC”と呼ばれる「dv6100/CT」だ。 - 次世代HP Pavilionはエンターテインメント色が濃厚に
米Hewlett-Packardのアジア・パシフィック地域向けコンシューマー製品発表会が、中国の北京で開かれた。今後の日本市場を占う製品が多数登場したが、まずはPCの動向を見ていこう。 - “MADE IN TOKYO”のVista搭載ミニPC現る――「HP Pavilion Desktop PC s3040jp/CT」
日本HPが昨年6月のノートPCに続き、デスクトップPCでも個人向け市場に再参入を果たす。この「HP Pavilion Desktop PC s3000」シリーズは、その成否を占う注目のモデルとなりそうだ。 - 2007年春 Vista搭載PC特集
メーカー各社からVista搭載PCも同時公開され、いよいよ次世代Windowsが離陸する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.