「これこそVAIOだね」というアイデンティティ――VAIO 10年の歩みとこれから:青山祐介のデザインなしでは語れない(1/3 ページ)
語られるようでいて語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。PCメーカー編の第7回は、VAIO 10周年記念モデル「VAIO type T」とVAIO 10年の歩みについてだ。
これまでのバックナンバー
第1回 「デザインは生活を変えられる」――日立Priusシリーズの挑戦
第3回 「これでいい」より、「これがいい」――NECデザインの意気込み
第4回 ThinkPadは“黒いBento Box”である(前編)――ThinkPadのデザイン思想
第5回 ThinkPadは“黒いBento Box”である(後編)――黒くて四角いアイデンティティ
第6回 “コンピュータをもう1度我が手に”――HPのデザイン展望
シリンダーデザインをまとってVAIOノート505が再来
ソニーのVAIO 10周年記念モデル「新VAIO type T」は、1997年に登場した初代「VAIOノート505」をほうふつとさせる「シリンダーデザイン」をまとった、まさにVAIOシリーズ10年にわたる歴史の集大成ともいうべきデザインとなっている。
今回は、このVAIO type Tのデザインを担当した井関大介氏(ソニークリエイティブセンター VAIOデザインチーム)と、商品企画を担当した後藤剛氏(ソニー VAIO事業本部 企画部プロダクト プロデューサー)、そして、モバイルPCを中心にVAIOノートのデザインに関わってきて、この春からVAIOデザインスタジオのチーフアートディレクターとして、VAIOデザインの指揮を振るう小笠原伸一氏に、VAIOのデザインコンセプトについて話を聞いた。
熱心なVAIOファンには言わずもがなだが、新VAIO type Tは1997年に登場した初代VAIOノート「PCG-505」のデザインモチーフを、現代風にアレンジしている。VAIOノート505はシルバーパープルのカラーリングが“銀パソ”のはしりとなるとともに、当時のノートPCに一石を投じた画期的なデザインだった。
キーボード側と液晶ディスプレイ側のボディをそれぞれフラットにして、これらをつなぐヒンジ部にバッテリーを配置し、あえて象徴的な太い筒とした「シリンダーデザイン」が最大の特徴だ。どうしても厚みを取ってしまうバッテリーを本体から外に出して“シリンダー”を構成し、これを最小寸法として、その延長線上にキーボードと液晶ディスプレイを収めて1枚の板のようにする手法である。この考えかたは最も効率的で、カバンに入れるときにスマートに入り、ユーザーにとっても使いやすい厚みなのだという。
小笠原 VAIOノート505というのは、VAIOノートの中でも「VAIO」というコンセプトを表明した非常に完成度の高い特徴的なモデルです。ポイントは「シリンダー」のテーマで、機能的にもヒンジとして使える中にバッテリーを融合させ、全体として非常に均整の取れた機能美の原型を作りました。結果として“VAIO”ブランドとしての強いインパクトを与えることができたのです。このVAIOノート505が登場してから2007年で満10年になりますが、B5サイズのモデルをデザインするたびに、それぞれがVAIOノート505のように個性を出せないか、ということを毎回チャレンジしてきました。そのような中で10年めにして、いろいろなデバイスの条件がやっとそろってVAIOノート505の原型を再現できることになり、このVAIO type Tが完成しました。
2003年には「VAIOノート505エクストリーム」を投入しましたが、このモデルはかなり先鋭的すぎて、バッテリー駆動時間の短さやキーボード配置の制約など、いくつかの機能性を我慢したうえで重量が約785グラムの超軽量ボディと、最薄部9.7ミリという超薄型を実現した特殊なモデルでした。今回のVAIO type Tは実用的機能を備え、本当の意味で改めて初代VAIOノート505の再来という、新旧のVAIOファンに認めてもらえるものができたかなと思います。VAIOノート505のシリンダーと液晶ディスプレイ、そしてキーボード部分の均整の取れた美しい姿を再現するために、細部に至るまで吟味を重ね完成度を上げてきました。全体の方向としては、小型で高性能な機能美の代表としてのVAIOノート505の新たな復活とも言えるでしょう。
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