“飛越”して“天瀑”──中国第2位PCメーカー「方正」ラインアップも面白い:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
「中華PCといえばレノボ」と知られるようになったが、中国第2のPCメーカー「方正」もUMPCでツウなPCユーザーなら気になるところ。今回は方正PCのラインアップを紹介しよう。
デスクトップPCを「コンシューマー向け」「ビジネス向け」「ネットカフェ向け」に分けて、それぞれに複数の製品をリリースする姿勢はレノボも同様であるが、そこに搭載するCPUに関する考え方は、レノボがAMD製CPUを積極的に採用しているのに対し、方正はごく一部の機種でのみAMD製CPUを採用して残りはすべてインテル製CPUを搭載するなど、両者で異なっている(ただし、7月9日に、方正がAMDと提携して、AMD製CPU搭載PC1000元値下げキャンペーンを行うことが発表された)。
CPUといえば、方正は、沈没してしまった中国独自CPUの「方舟」を搭載したPC「網拓」を過去にリリースしていた(中国PCメーカーの例に漏れず、レノボも方舟CPU搭載PCをリリースしている)。現在、方正のWebページに「網拓PC」の情報は掲載されていない。
レノボと方正のコンシューマー向けデスクトップPCの“ベクトル”も両者で異なっている。レノボがLenovo 3000シリーズなど「中華PCとしては」性能と機能を洗練したシンプルな製品をリリースするのに対し、方正はリビングルームや寝室においても「中国的に見栄えのする」デザインのタワー型PCをリリースしている。方正の“ベクトル’は、先進的な機能を採用するというよりも中国の感性あわせたデザインに注力しているように感じる。
2006年4月、中国国内に正規版OSを普及するため、方正はレノボとともに、Microsoft製OSをインストールしたPC本体をリリースすることを発表した。海賊版を撲滅するように海外から中国へ圧力が高まるなか、中国は正規版OSのプリインストールを国内のPCメーカーに働きかけたが、その結果、方正はローエンドモデルにDOSを、それ以外のモデルにWindows Vista、ないしWindows XPをインストールしたモデルをリリースしている。
最近、北京に住むある中国人が中国の家電量販店最大手「国美」(Gome)で方正のDOSインストールPCを購入したところ、国美が海賊版Windowsをインストールし、それが原因で、その中国人がMicrosoftと国美に損害賠償請求を起こす裁判があった。この裁判では購入者に国美が交通費と正規版Windowsを与えるという判決が下された。
コンシューマー向けデスクトップPCの“ベクトル”で違いが見られた方正とレノボだが、ともに「方舟CPU搭載PC」をリリースするなど、中国の有力PCメーカーとして共通する点も多々ある。レノボがPCのほかにもサーバやデジカメ、プリンタ、ストレージ、シリコンオーディオプレーヤーまで多様な製品をリリースしているように、方正もまたPC以外の製品を出荷している。ただ、以前はデジカメも扱っていたが、現在、方正のWebページにデジカメ製品は掲載されていない。サーバもXeonやCore 2 Duoを採用したタワータイプのみで、最近流行りのブレードサーバやレノボが扱っているようなItanium 2搭載の本格的な基幹システムなどはない。
PC事業以外にも手がける北大方正集団
ここ数年で、レノボや百度、キングソフトなどが相次いで日本に進出したため、日本でも中国のIT企業が認知されつつある。しかし、方正はそれらの企業が登場するはるか前の1996年に日本に進出していた。
「ええ、方正のPCが日本で売られていたんですかっ!」
いやいや、そうではない。方正の日本支社は漢字圏向けのDTPソフトやシステムソリューション、中国語フォントを販売しており、毎日新聞社や角川書店や日刊スポーツ印刷社に同社のシステムを出荷していたのだ。
方正は「北大方正グループ」傘下の企業の1つに過ぎない。北京大学を意味する“北大”が頭にあることから分かるように、この企業グループは産学提携で誕生した。「グループ傘下の関連企業」とはいえ、中国第2位のシェアを誇るコンシューマーPCメーカーとして、方正の中国における知名度は北大方正グループの中でも群を抜いている。ただし、方正という企業そのものも、先の“日本進出”にもあるようにDTP関連にも力を入れている企業グループを形成しているのだ。最近では、インターネットパブリッシングにも進出している。PCメーカーであるのは方正グループの中の「方正科技」となる。
方正の製品ラインアップには、同社が独自に開発した電子ドキュメント「Apabi」ファイル(アドビでいうところのpdfファイルに相当するもの)を読むためのソフトウェア「Apabiリーダー」があるかと思えば、Apabiファイルやテキストファイル、各種画像ファイルをサポートする電子ブック端末「e-book」を2003年にリリースしている。方正はe-bookに絡んだビジネスに「毎年1000万元を投資する」という強気のコメントを中国のビジネス雑誌で述べており、e-bookを利用するソリューションを一部の図書館が導入するという話も中国メディアが報じていたが、こちらのほうはその後具体的に話が進んでいないようで、e-bookの新製品もリリースされていないなど、なかなか苦戦している状況がうかがえる。
北大方正集団は、ここで紹介したPCや出版関連のほかにも、医療関連へと事業範囲を広げている。そんな北大方正集団が、2007年中に韓国の証券取引市場に上場しようとしていることが中国メディアで取り上げられ、中国国内でちょっとした話題になっている。
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