「アキバは圧縮し、さらに密度を上げていく」――ソフマップが描く未来像:5年後の秋葉原を歩く 第8回(2/2 ページ)
いよいよソフマップタウンを始動させるソフマップに、アキバの展望を語ってもらった。その目には、より凝縮されたコアな街の姿が映っている。
アキバは恵まれた土地
――ソフマップタウンの計画が持ち上がったのは、いつごろですか?
米澤氏 2006年の10月に今回オープンする本館の最初のリリースをさせていただいてからですね。それから今年の3月に本店・13号店の自社物件の売却とソフマップソフト(ヤマギワソフト)の吸収合併の発表と同時に再編のご案内をさせて頂きつつ、その後も具体的な検討を重ねてきました。
この間にも、これまで秋葉原に来られなかったような人がたくさん訪れるようになりました。当店に来てもらえる人も前年比で増え続けていまして、諸々の土壌が整って8月16日に発表させていただいた次第です。
――具体的には、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの影響ですか?
米澤氏 それも含めて、アキバに人が増えた大きな要因は3つあると思います。つくばエクスプレス(TX)の開通と、秋葉原クロスフィールドのオープン。何よりも当社が今回の再編に取り組む1番大きな理由は、街の表情が一変するくらいの中央通りの劇的な変化ですね。
――なるほど。しかし、一方でいくつかのPCパーツショップや家電量販店が閉店している背景もあります。このあたりはマイナス材料になりませんか?
米澤氏 アキバはほかの商業地にくらべて恵まれていると思うんです。秋葉原クロスフィールドや旧日通ビルに建つ予定のオフィスビルなどの影響で、ビジネスマン層が増えていきます。都心部への人口の集中や、TX沿線の人口の増加、加えてサブカルチャーも市民権を得てきました。今後街に来る人が増加する要因が非常に多い。ただ、そういった環境下であっても、秋葉原のPCパーツ市場も成長市場から成熟市場に移行しているので、何もしないと盛り下がってもおかしくないですね。
成長過程の市場はどれもそうですが、ズドーンっと盛り上がりはするものの、成熟市場になった現状でそれを期待するのは難しい。だから、PCや家電店が厳しい時代を迎えているのは必然の流れだと思います。
家電量販店はまさにそうで、価格競争を経て吸収合併が進み、大きな数グループに再編されています。PCや家電製品という大きな視点で見ればまだまだ伸びる余地は大きいと思いますが、秋葉原のPCパーツショップも再編があるかどうかは別として、同じような厳しい道をまさにいま辿っていると思うんです。
しかし、実際にPCパーツショップ密集地を歩いてみると、盛り上がっていないわけではないですよね。いま経営しているショップは、厳しい市場環境を生き残って、どこも個性的でよくやっているところばかりではないでしょうか。もしかしたらすでに成熟しているかもしれませんし、また、完全に成熟市場となるまでに、もうしばらく辛い期間が続くのかもしれませんが。
――入れ替わりのように閉店するLAOXザ・コンピュータ館については?
米澤氏 たまたま時期的に重なった形となりましたが、アキバを盛り上げていくうえで、重い責任も感じます。
――秋葉原は変化が激しくて、家電が成熟市場になったころにPCブームが来て、PCが成熟し始めたころにサブカルチャーが来たという歴史があります。このサブカルチャーが成熟し始めたら、次は何がくると思いますか?
米澤氏 うーん。サブカルチャーと言っても幅広いですよね。個々のサブカルチャーに集まるコアな人々は、さらに細分化していっていると感じます。そういった人とは別に、個々のサブカルチャーに詳しくない人が非常に増えているのが現状ですよね。
――コアじゃない人が増えていると。
米澤氏 そうです。また、観光地化もここ数年でものすごく進んでいます。サブカルチャーに詳しいというより、興味があるという段階の方々が非常に多く来られてます。外国の方もよく見るようになりましたし。
水野氏 店舗によっては午前中は外国の方が集中していますね。現在の店舗では1号店が、デューティーフリーを掲げているので、多いです。
エリアが圧縮されながら、アキバはより密度が濃くなる
――ちなみに、アキバに新しいブームが到来したとき、ソフマップタウンは店舗を増やしますか? それとも現店舗を変更していく?
米澤氏 変化があれば、現在の構成にこだわることなく、現店舗の構成を変えて対応すると思います。新店舗というのは、物件との巡り合わせですね。空き物件が出れば検討しますが、アキバの現状の物件や、大きな再開発が落ち着いた状況を考えると難しいでしょう。
――末広町駅あたりや、旧交通博物館あたりまで“アキバ”を拡大するという手は?
米澤氏 いまは人の流れが狭いエリアで閉じていますよね。秋葉原駅電気街口から出て、中央通りと神田明神通りの交差点に集まり、TSKUMO eXさんや秋葉原UDXあたりまでを回遊するという流れです。
交通博物館が閉鎖されてから、万世橋周辺に人がぐっと少なくなりました。日曜日の歩行者天国を見ても、人の流れ方が大きく違う。だから、5年前に比べると“アキバ”といえるエリアが変わってきたのかもしれません。
――その変化は、街の衰退を表しているのでしょうか?
米澤氏 いえ、密度が高くなったんでしょう。回遊人口が増えて、狭いエリアにぎゅっと凝縮されたような感覚です。実際、意図しないながらも、我々も14号店(末広町駅付近にある中央通り沿線のソフト系店舗)を閉店するなどして、全体的に中央に集まっている感じもします。
――なるほど。それでは、最後に5年後の秋葉原像を聞かせてください。
米澤氏 いまよりも街の価値が高まっていると思います。TXにより東京とつくば方面を結ぶハブとしての機能が高まり、秋葉原クロスフィールドや旧日通ビルの影響でビジネス街としての色も出てくるでしょう。
繰り返しになりますが、土壌の価値が上がっても、我々販売店が頑張っていかないと、安穏としてはいられないでしょうね。ただ、街の範囲は狭まりながらも凝縮されていくので、秋葉原に来られる方にとってはさらに楽しみやすい環境になるのではないでしょうか。
水野氏 (秋葉原という街が)これだけ色々な方面から注目されていると、常に何か新しい情報発信の場になっていくと思います。
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