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3〜4年で色あせない価値をノートPCに──LaVie開発スタッフに聞く山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(2/2 ページ)

携帯性と堅牢性に注目しながら「理想のノートPC」を求めてメーカーを行脚してきたが、最近は「個人で使う」ノートで重要になる“もう1つ”が気になってしょうがない。

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ホームノートはオールマイティでなければならない

──ホームユースのノートPCの付加価値についてどのような考えをお持ちですか。

樫本氏 こういう商品は昔のオーディオでいうところのレシーバーやラジカセを目指すべきだと思います。オールマイティということですね。PCは大抵のことはできるけれどできないこともある。その“できない”部分が強調されては困るんです。大抵のことができることを強調するためにも、すべてのカテゴリを網羅して、なおかつ、水準以上の完成度を提供する必要があります。

 例えばこれは、AVに対してまじめに取り組んでいるかどうかがキーになりますね。スピーカーの良しあしでプレーヤーの印象はすごく違ってきます。ちゃんとした音が出なければ、オーディオ機器としては成立しません。

漆原氏 私はひとり暮らしでPCを使っています。音楽もPCで聴くんです。普段はノートPCを閉じた状態で置いてあって、使うときに開くのですが、実際、外付けのスピーカーがついているのが邪魔に感じています。

 ノートPCですけど基本的に定位置から動かすことはなくて、ちょっとネットで動画を見たりするにも自分がノートPCのあるところに移動するのです。TVこそPCで見ていませんが、これは、アナログ放送をPCで視聴するには画質にちょっと抵抗があったためで、デジタル放送になったら、PCでもいいかなと思う画質になりました。

 ようやくという印象もありますが、いろんなことが、水準以上にこなせるオールマイティなノートPCが、個人ユーザーに求められているのではないでしょうか。

──オールマイティ機器として使うには、15インチ程度のディスプレイは、ちょっと小さすぎませんか。

樫本氏 なぜLaVieのラインアップに17インチがないのかというと、そのサイズを求める市場が日本で大きくないのです。日本以外の地域では別ですよ。でも、日本ではかなり厳しいです。このサイズでは画質をよくするのにもコストがかかります。それより、15インチワイドのバリエーションを広げることが日本の市場では重要だと考えています。日本のユーザーは小さいことに価値を認めてくれるようなところがありますから。

 いずれにしても、ユーザーが求めるノートPCの使い方に技術が追いついていないように感じています。東芝の「レグザリンク」やパナソニックの「ビエラリンク」など、HDMIのコマンドを使ったソリューションは将来性がありますね。それをAV系で生かしていけば、PCでTVが制御できるはずです。HDMIコマンドをPCのプログラムに作り込めるようになれば簡単にできます。そうした状況が整うまでに、技術を練っておく必要がありますね。こういう準備を重ねて技術が熟せば、PCとTVがシームレスにつながる世界が実現します。家電をコントロールできるPCです。これが、われわれが本当にやりたいことなんですが、それを実現するためには難しいハードルがたくさんあります。しかし、そういう世界が1つのゴールでもありますね。

ホームユースPCの決め手は“HDMI”と“FeliCa”

──3年くらいの近未来だと、ホームユースのノートPCはどのようになっているでしょうか。

樫本氏 3年後だと、まだ、フットプリントは15インチくらいじゃないでしょうか。基本的にはそれを軽くしたり、薄くしたりというようになるでしょうね。もっとも、Windows Vistaは解像度が高いと有利ですから、もっとドットピッチが狭くなっている可能性はありますね。

漆原氏 個人的には15インチでもちょっと大きいと思っています。とはいっても12インチじゃ小さいですから、13インチワイドくらいでしょうか。15インチでは、たとえ薄くしたとしても大きすぎますね。

樫本氏 ノートPCではインターネットを楽しめるだけの画面サイズがあればいいですから。大画面を楽しみたいならTVで見ればいいんです。「見る」行為と「読む」行為はぜんぜん違うと思います。問題は読んで(その内容を)認知するときです。この場合は、確実に文字としてのフォントが識別できなくてはなりません。大型ディスプレイで10フィート離れて文字を読むような行為は人間工学的にもありえません。だからディスプレイとユーザーが2フィートを離れてPCを操作するという行為はずっと残るはずです。そういう意味では、ワイヤレスHDの世界が広がることを期待しています。PCであれこれブラウズしていて、見つけたコンテンツを大型TVにワイヤレスで送信するような使い方です。

──地デジに関してはどうなるでしょう。

樫本氏 先のことを考えたら、(LaVie L スタンダードに導入したけれども)ワンセグへ積極的に持って行きたくないんです。本当は強引にフルセグにもっていきたいと考えています。それに、PCだとデジタルコンテンツにおける「コピー10回」(JEITAがいうところの“ダビング10”)問題などで、過去にさかのぼってコピー制御を解除するようなこともできるかもしれません。いずれにしても、これから先もTVとPCの世界は、きちんとやっていかなければなりませんね。

 あとは、今後、高解像度の画像が増えていくでしょうから、それに対応できる環境を提供していかなければならないでしょう。これからのPCのキーワードは“HDMI”で決まりです。あとは“FeliCa”かな。PC以上にFeliCaを扱える家電ってないじゃないですか。

 今後、ますますネットワークコンテンツが増えていくなかで、安物買いの銭失いにならないようにノートPCを選んでほしいですね。いずれにしても、ユーザーがPCを使う目的は多様化する一方なので、切り口は1つではないと思います。

LaVieのフラッグシップモデルとなるLaVie Cシリーズ。競合するメーカーのハイエンドノートが17インチワイド液晶ディスプレイを採用する中、LaVieは「確固たる理由で」最大でも15.4インチワイド液晶ディスプレイにとどめている
LaVie Cは全モデルで地上デジタル/地上アナログのTVチューナーを搭載してる。チューナーユニットは筐体背面よりに実装されている(銀色のシールドで覆われた部分)。


 多くのユーザーがノートPCの「買い換え/買い増し」の段階に入っている。PCの買い換えサイクルとしてどのくらいの期間を想定しているのかを尋ねたところ、3〜4年で買い換えてほしいところだという答えが戻ってきた。その3〜4年間に登場した新しいサービスで、高い価格で手に入れた“付加価値”が色あせてしまうようでは、次に購入するノートPCでは、同じメーカーの製品は選ばれず、価格の安い製品にユーザーは流れてしまうだろう。その悪循環をどこかで断ち切ることが「メーカー製ノートPCの復権」において重要ではないだろうか。

 そのことを十分理解しているNECのノートPCが、これからどのように進化していこうとしているのか。今回のインタビューで、その一端がうかがえたのではないかと思う。

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