2007年のGPUはやっぱり「弩」:イマドキのイタモノ
年末といえば、大掃除に年越しソバに除夜の鐘(レコードとくれば大笑)。そして、しみじみと2007年のGPUを振り返ってみたりする。
すべての既存GPUを撃破したGeForce 8800 GT
2007年のイマドキのイタモノレビューで取り上げた最初の新製品GPUは、ミドルレンジクラスで統合型シェーダユニットを搭載した「新世代ミドルレンジ「GeForce 8600GTS」を「GeForce 7950GT」「GeForce 7900GS」と比較する」と「2万台の新世代ミドルレンジGPU「GeForce 8600GT」と「GeForce 7600GT」と比較する」だった。グラフィックスカードのボリュームゾーンである2万円台半ばから3万円台のモデルで統合型シェーダユニットを搭載したDirectX 10対応GPUのゲームベンチにおけるパフォーマンスは、軽負荷条件で従来の「GeForce 7600 GT」と同等なれど、重負荷条件では倍近い性能向上を見せてくれた。この新世代ミドルレンジGPUの特徴はパフォーマンスだけでなく、第2世代となったPureVideo HDを実装したことでも注目を集めた。
このように、ミドルレンジクラスに新世代を投入する一方で、NVIDIAのハイエンドラインアップは、GeForce 8800 GTXのクロックアップ版とも言うべき「GeForce 8800 UltraとGeForce 8800 GTXを「特別なG-Tune」で比較する」をAMD(ATI Technologies)の新世代GPUの登場に合わせて投入するなど、“G80”コアの延命で乗り切ろうとしていた。この状況は、G92世代のGPUが登場した2007年の年末においても(その差はほとんど詰められているが)続いており、GeForce 8800 Ultra/GTXは依然として最もハイエンドでパフォーマンスも高いGPUとして君臨している。
しかし、“G92”世代のGPUとして最初に登場した「これぞ真の“ド級”GPU──GeForce 8800 GTで「Crysis」ベンチマークを動かす」のコストパフォーマンスがユーザーに与えた衝撃は大きかった。DirectX 10対応のゲームベンチマークテストにおいて3万円半ばという価格帯でGeForce 8800 GTXに匹敵する(オーバークロックならテストによってGTXを上回る)結果をたたき出したGeForce 8800 GTは、リファレンスカードに採用されたワンスロット厚クーラーユニットの冷却能力と12月初めまで続いた供給不足という不安材料を抱えながらも、近年まれに見る成功を収めたと評価されている。その後に登場した「“G92”世代「GeForce 8800 GTS 512M」の微妙な立ち位置を探る」では、GeForce 8800 GTXとの差がさらに縮まった。
そしてRadeonの苦闘は2007年も続いた
対するAMD(ATI Technologies)も、5月になって統合型シェーダユニットを実装した「「Radeon HD 2900 XT」を「GeForce 8800」シリーズと比較する」「「Radeon HD 2600 XT」を「GeForce 8600 GT」と比較する」「ASUS「EAH2600XT D4」で“GDDR4”Radeon HD 2600 XTの実力を知る」を登場させ、11月には、DirectX 10.1に対応した「これはバランスのいい“ハイエンド”GPU──「Radeon HD 3870」ゲームベンチレビュー」「こいつは意外と使えるかも──実売2万円台半ばに落ち着いてきた「Radeon HD 3850」を試す」を投入するなど、2007年の中盤から終盤にかけて急速に代替わりを進めている。そのペースは2006年から2007におけるNVIDIAに負けていない。
しかし、Radeon HD 2000シリーズでもRadeon HD 3800シリーズでも、同クラスにおけるNVIDIA製GPUとのパフォーマンス比較で明確な差をつけられてしまったのと、リリースから出荷開始までの製品供給が順調でなかったことなどがひびいて、NVIDIAに十分対抗しきれていなかった感じは否めない。
限界はどこにあるか──2008年のGPU
NVIDIAもAMD(ATI Technologies)も、2008年に新しいGPUの投入を予定している。ただ、両者ともに、最初に予定しているのは、「1枚のグラフィックスカードに2つのGPUを搭載したデュアルGPUカード」という形態だ。“デュアルGPUカード”となると、NVIDIAの正式ラインアップにあった「GeForce 7950 GX2」や、カードベンダーが独自に開発する「誰がためのデュアルGPUカード──GECUBE GC-D26XT2-F5 Gemini 3」のような製品が継続して登場していたが、いまひとつ、ユーザーへの浸透度は低い。2008年に登場するといわれているNVIDIAとAMD(ATI Technologies)の新しいデュアルGPUカードがどれだけユーザーに受け入れられるのかは「未知数」だ。
2007年の終盤になって、NVIDIAもAMD(ATI Technologes)も、それぞれ新しいマルチGPU技術「3-way NVIDIA SLIを「nForce 780i SLI」と「nForce 680i SLI」で比べる」「CrossFireX」を発表した。3-way NVIDIA SLIは超高解像度におけるゲーム環境で実用的なパフォーマンスを発揮させるためのソリューションともいえるが、対応するGPUがGeForce 8800 Ultra/GTXのみという、コスト的にはなかなか気力のいる仕掛けでもある。CrossFireXは、4つまでのGPUに対応したマルチGPU技術で、ネイティブCrossFireに対応するすべてのGPUで構成可能だ。そのため、コスト的には3-way NVIDIA SLIよりも現実的ともいえるが、こちらは、ドライバの対応が進んでおらず、いまだ利用できる状況にない。
AMD(ATI Technologies)の製品投入遅延は、今や常態化したようにも思えてしまう状況で、それが、AMD(ATI Technologie)の苦境の大きな原因ともいえるが、NVIDIAだって安穏としていられない。いつどのようなきっかけで、NV3xのときのような状況になるやもしれない。2007年の終盤、好評だったGeForce 8800 GTでさえ、リリース直後の出荷状況にその兆候をかすかに感じてしまったといったら、それは、うがった考えだろうか。
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