北京を旅するなら「Menlow」をお供に──Intel CEOのCES基調講演:2008 International CES
Intelの基調講演と聞くと「技術的優位性を力強くアピール」するイメージが強いが、デジタル家電の祭典であるCESでは「分かりやすくて面白い」内容で聴衆を楽しませてくれた。
2008 International CESが始まった。展示ブース会場は昼前から一般来場者であふれ、初日朝には、日本人のキーノートスピーカーとして注目されたPanasonic AVC ネットワーク 社長の坂本俊弘氏が登場する基調講演が行われている。初日午後の部の基調講演には、Intel CEOのポール・オッテリーニ氏が登場した。
CESが開幕する前、Intelは45ナノプロセスルールを採用したモバイル向けCPUの新製品の発表と、2008年に登場する予定でCESにも多数のサンプルが展示される「Menlow」(開発コード名)などのモバイル関連製品のアピールを大々的に行うと予想されていた。実際、前日に行われたプレイベント「Digital Experience」では、東芝製のサンプルをはじめとするMenlowプラットフォームを採用したUMPCのサンプルが展示されていた。
そのような期待の中、登場したオッテリーニ氏は、2008年にオリンピックが行われる北京の街をステージに再現し、超小型PCに助けられながら「快適な旅行」をするユーザーの姿を演じることで「パワフルなCPUを搭載した超小型PCの必要性」をアピールした。
オッテリーニ氏は、このような便利なサービスをユーザーに利用してもらうためには、UMPCにもハイパフォーマンスのCPUが必要であると、これまでも繰り返してアピールしてきた。そのCPUを提供するのがIntelの役目でもあるが、オッテリーニ氏は、「シリコンレベルの問題」「ワイヤレスネットワークインフラの問題」「情報共有の問題」「自然なマンマシンユーザーインタフェースの問題」といった高性能UMPCを実現を阻む4つのハードルを取り上げ、その解決に対するIntelの取り組みを紹介した。
「シリコンレベルの問題」では、当然ながら、2007年の後半に出荷された“Penryn”で採用されている45ナノメートルプロセスルールとHigh-Kメタルゲート、そして、現在開発が進んでいる「Nehalem」で取り入れられる「SOC」が紹介された。SOCについては、2007年の9月に行われたIDFで、2008 International CESでの公開が予告されていた「Canmore」(開発コード名)を搭載したシステムの実動デモが世界で初めて行われた。
Canmoreを搭載したシステムは、横置きのデスクトップPCのような形状で動画を再生していたが、これはCanmoreがデジタルホームプラットフォームのブランド“Viiv”のために開発されていた経緯を反映していると見ることもできる(Viivはまだ“生きている”というアピールだろうか)。
このほか、Menlowを採用した東芝のUMPC試作機も登場するなど、Intelが行う通常のスピーチならば、このあたりからクライマックスとなるはずだか、今回の基調講演では「こういうものがある」という紹介だけで、CanmoreやUMPC(とそれに搭載されているMenlow)の詳細な内容について言及しなかった。
その後、基調講演はスマッシュ・マウスのボーカルであるスティーブ・ハーウェルが加わって、楽器プレーヤーがネットワーク上でセッションを行える「eJAMMING AUDiiO」を使ったデモや、3枚の静止画から顔データを3Dモデルで生成してアバターに張り付ける「Bigstage」(現在も開発が進んでいて2008年第2四半期には運用を開始する予定)を使ったデモでは、オッテリーニ氏のアバターがロックンロールを踊るシーンが登場するなど、今回の基調講演は、PCの利用シーンのアピールとしては分かりやすいストーリーと演出で、聴衆も盛り上がっていた。
だが、当初予想されていた「新製品と開発中のモバイルプラットフォームのアピール」という視点では、「こういうものがある」という“紹介”だけで、この点に不満を感じた聴衆もいたかもしれない。とはいえ、International CESという「家電」的なアプローチを考えた場合、ユーザーに面白さを伝えやすい、今回の基調講演のような“分かりやすい”プロモーションが求められるのも確かだ。そういう意味では、「これもアリ」といえるオッテリーニ氏の基調講演だった。
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