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“カラバリ”マウスはここから始まる──エレコム「EGG MOUSE M-20」山口真弘の「PC周辺機器クロニクル」第1回

あまたの製品が現れては消えていくPC周辺機器にも、記憶に残したい逸品がある。現代に影響を与えた伝説を紹介するこの連載。第1回は1990年代前半に登場したマウスを取り上げる。

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マウスは近未来の象徴だった

 筆者が生まれて初めて使ったマウスは、スーパーファミコンの「マリオペイント」に付属していた2ボタンのボール式マウスだった。1992年のことだ。

 すでに、NECのPC-98シリーズやアップルのMacintoshでマウスは採用されていたが、そのころはまだ、PCを使う機会自体がほとんどなかった筆者にとっては、マウスはまさに未知のデバイスであった。マリオペイントに付属していたマウスは、筆者の手が届くところに初めて登場したマウスだったのである。

 マリオペイント発売の翌年、1993年に公開されたアニメ映画「パトレイバー 2」にも、マウスらしきデバイスでコンピュータを操作しているシーンが出てくる。この映画の時代設定は2002年とされていた。マウスを使いこなしていることが、未来チックな雰囲気を表現できていた時期の終わりごろだったのかもしれない。

そのころPC界では何があった?

1991年:NEC、「バザールでござーる」のCM開始

1992年:アップル、「漢字Talk7.1」「Macintosh Performa」登場


EGG MOUSEは「コロンブスの卵」だった

 PC周辺機器としてのマウスを振り返ると、時代時代でターニングポイントとなった製品は多い。エレコムの「EGG MOUSE」シリーズは、1990年代前半のマウスで主役を務めた製品だ。

 EGG MOUSEが誕生したのは1988年で、先に紹介したマリオペイントからさかのぼること4年となる(編注:掲載当初は誕生年を1990年としていましたが、エレコムの正式な調査によると1988年に初代製品が登場していることが判明しましたので、記事を訂正しました)。当時はNECのPC-98が全盛で、先進的なデバイスであるマウスは、システムを構成する主要なパーツという扱いで、存在するのはPC本体メーカーがセットに付属させる純正品しかなかった。NEC純正の2ボタンマウスに象徴されるように、当時のマウスはデザインが無骨そのもので、「装置」といったほうがふさわしい外観だった。

 これが、多くのPCユーザーにGUIが普及するきっかけとなるWindows 3.1が登場する3年前における、マウスを取り巻く状況だ。

 そういう中で登場したエレコムの「EGG MOUSE」は、その名の通り「卵」をモチーフにした曲線主体のデザインで、多くのユーザーの心をつかんだ。卵をイメージさせる黄色い初代モデル「M-20」は、NECのPC-9801M、同 VF、同 VMなどに加え、エプソンの「98互換機」であるPC-286シリーズにも対応していた。

 3980円という、当時としては破格の価格設定も多くのユーザーから支持された。この価格設定により、それまでショウケースの中で大事に陳列されていたマウスが、店頭でフック吊りされるきっかけにもなった。

マウスのバリエーション戦略が始まる

 「M-20」の大ヒットを受け、EGG MOUSEシリーズは多数のバリエーションモデルを生み出した。直接の後継機種となる200カウントモデル「M-21G」以外にも、1989年に登場して企業ユーザーを中心にヒットしていた東芝のJ-3100用ブラックモデル「M-3100」、FM-TOWNS用のグレーイッシュモデル「M-70」、Macintosh用の「M-80MA」など、同社が「EGG MOUSE ブラザーズ」と呼称するバリエーション展開を図り、他社からも多数の類似商品を生み出すほどの成功をおさめた。その後、ホイールを搭載したマウスが登場する1990年代後半まで、「EGG MOUSE」は長期にわたって家電量販店の定番製品となったのである。

 EGG MOUSEが「マウスのターニングポイント」と評されるべき最も重要な役割は、それまで単なる入力装置でしかなかったマウスに、デザインという概念を持ち込んだことだ。当時のマウスにおいて、機能の違いといえばせいぜいカウント数の切り替えしかなく(Windows 95より世代が前のOSでは、カウント数の切り替え機能を持たなかった)、EGG MOUSEほど突飛なコンセプトを持った製品は存在しなかった。

 EGG MOUSEが切り開いた「マウスのデザインで違いを見せる」という考え方は、カラーや本体サイズごとにバリエーション展開を行う現代のマウスプロモーションへとつながっていく。


「M-20」は卵をモチーフとした「EGG MOUSEシリーズ」の元祖に当たる。ボタン部についても黄身に似せた色を採用するなど、当時、PC本体メーカーが生産していた純正マウスとは一線を画すデザインであった。本文で紹介した、東芝J-3100対応の「M-3100」や、富士通FM-TOWNS用の「M-70」以外にも、1996年に登場したリニューアルモデル「EGG MOUSE Classico」にいたるまで、多数のバリエーションが出現した

山口真弘氏のプロフィール

1971年生まれ。PC周辺機器メーカー2社で10年近く販促と広報を担当した経歴から、業界内におけるユニークな製品やサービスに明るい。現在はPC周辺機器関連のレビュー記事を執筆しつつ、Webユーザビリティのコンサルタントとしてセミナー講師を務めるなど、活動は多岐に渡る。ITmedia Biz.IDでは「3分LifeHacking」の執筆も担当している


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