RadeonはGeForceを追い越せたのか──「Radeon HD 4870 X2」を「GeForce GTX 280」にぶつけてみる:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
先日登場した“RV770”ことRadeon HD 4870は、「ミドルレンジ」クラスのGPUとAMDはいう。GeForce GTX 280と競うのは「8週間後に登場する」と予告されたデュアルGPUカードだった。その期待の“R700”が姿を現した。
重負荷条件で圧倒的な力を見せるRadeon HD 4870 X2
圧倒的な性能はCrossFireが前提になる
単体GPUのGeForce GTX 280に対して、デュアルGPUのRadeon HD 4870 X2は、やはり圧倒的な力を示した。3DMark VantegeのEntryテストや3DMark06のSM2.0 Scoreにおける低解像度条件(1600×1200ドット)、Crysis 1.1の軽負荷条件(画質設定がHigh)では、GeForce GTX 280とGeForce 9800 GX2を下回るものの、解像度が高くなり、負荷条件が重くなるにつれて、GeForce GTX 280とGeForce 9800 GX2のベンチマークテストの結果が落ち込むのに対して、Radeon HD 4870 X2の結果は高い値を維持し、相対的にGeForce陣営を超える傾向を示している。
グラフィックス関連のテスト結果が強調される3DMark Vantageの「Graphics Score」や、3DMark06のShaderModel 3.0テスト項目である「HDR/SM3.0 Score」、「Perlin Noise」におけるRadeon HD 4870 X2の結果は圧倒的ともいえる。この、GeForce GTX 280に対する力の差は、「Enemy Territory-QUAKE Wars Demo」と「Crysis 1.1」を用いたベンチマークテストの重負荷条件と2560×1600ドットという超高解像度条件でも見ることができる。
ただ、市販ゲームを用いたベンチマークテストの中には、Radeon HD 4870 X2の結果が思わしくないケースもある。その典型的な傾向がUnreal Tornament 3で確認できる。「vCTF-Suspense FlyThrough-PC」でも「DM-ShangriLa-FPS-PC」でも、Radeon HD 4870 X2はGeForce陣営のGPUに及ばない(超高解像度条件で、GeForce 9800 GX2を上回っているが)。また、軽負荷条件と低解像度条件においては、多くのゲームベンチマークテストでRadeon HD 4870 X2の結果はほかと比べて低い値となっている。
システム構成も消費電力もハイエンドが求められる
Radeon HD 4870 X2を搭載したグラフィックスカードの実売価格は、600ドル台から700ドル台になるとみられている。価格競争力という観点から見ても、Radeon HD 4870 X2は有利だ。
負荷が重くなればなるほど、解像度が高くなればなるほど、Radeon HD 4870 X2の性能はほかのGPUを圧倒するようになる。一方で、負荷が軽く、解像度が低い条件においては、抜きん出た性能を発揮できないでいる。デュアルGPUであるRadeon HD 4870 X2が高い性能を発揮できるのはCrossFireが前提になるのは避けられない。また、多くのユーザーは、依然として、超高解像度と重負荷条件で快適にゲームが稼働する環境を有してない(特にディスプレイ環境において)こともAMDは考えなければならない。
1920×1200ドット以上の解像度が表示できるディスプレイを所有しているゲームユーザーにとって、Radeon HD 4870 X2はゲーム環境を大きく改善してくれるだろ(ただし、ゲームタイトルがCrossFireに対応しているか確認しておくのを忘れないように)。また、ベンチマークテストの結果が気になるオーバークロッカーにも、Furturemark系のベンチマークテストでGeForce GTX 280を上回るRadeon HD 4870 X2は有力なGPUと評価できるはずだ。
ただ、「よしっ、Radeon HD 4870 X2を買いに行こう」と思い立ったユーザーは、自分のシステムに組んである電源ユニットの容量を確認してほしい。3DMark03で行ったシステムの消費電力測定では、1枚のグラフィックスカードとしては驚異的ともいえる、500ワット台目前まで達している。1000ワット級の電源ユニットは用意しておきたい。また、外部電源に6ピン+8ピンを必要となるため、使える電源ユニットも限られることになるだろう。
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