デルが放つ“Puma”な「Studio 1536」を間近に見た:Studio×Puma(2/2 ページ)
デルの個人向けPCで「Inspiron以上、XPS未満」というポジションに位置付けられる「Studio」シリーズ。そのAMDモデルの実力はいかに。
AMD HD!エクスペリエンスに対応
Studio 1536はAMDが推進中の「AMD HD!エクスペリエンス」のロゴを取得している。地上デジタル放送、HDデジタルビデオカメラの標準フォーマットであるAVCHD、Blu-ray Discなど、HDクオリティのコンテンツはすでに身近な存在となってきているが、それらHDコンテンツの圧縮コーデックとして使われている高ビットレートのMPEG2やH.264(MPEG-4 AVC)などのデコードには強力なCPUパワーを必要とし、従来のPCで扱うにはハードルが高かった。これらのハードウェアデコードに対応した動画再生支援機能(UVD)をもち、HDコンテンツをスムーズに再生できることを示すのが、この「AMD HD!エクスペリエンス」のロゴである。
AMDがこのようなロゴでアピールするのは理由がある。HDの動画再生支援に関してインテルよりもAMDのほうが先行していることをアピールする目的もあるが、何よりも対応状況が分かりにくいためである。UVDに限らず、この手の動画再生支援機能を利用するには、ハードウェア、ソフトウェアいずれもその動画再生支援機能に対応していることが条件なのだが、動画再生支援機能にはいくつも種類があり、また(特にソフトウェア側で)メーカーごとに表現の違いなどによって、事前に対応情報をはっきりと確認しにくい状況がある。例えば、Intel GM45 Expressチップセット(Intel GMA 4500MHDを統合している)もUVDと似たような動画再生支援機能をサポートしているが、今どのソフトウェアのどのバージョン以降ならその機能を利用できるのか、きちんと把握しているユーザーはほとんどいないだろう。
そういうあいまいさがある現況で、分かりやすい目印を提供したのが「AMD HD!エクスペリエンス」プログラムだ。UVDに対応した市販のソフトウェアにもこのロゴは添付されており、メーカーを問わずこの「AMD HD!エクスペリエンス」ロゴのあるハードウェアとソフトウェアを組み合わせれば、HDコンテンツを快適に楽しめるという目印となっている。前述したように本機は単体でHDコンテンツが楽しめる環境が整っているわけだが、市販ソフトウェアを利用する場合にこのような分かりやすい目印が用意されているのはありがたい。
BTOメニューでフルHD解像度のディスプレイも選択可能
液晶ディスプレイのサイズは15.4型ワイドで、1280×800ドット、1440×900ドット、1920×1200ドットと、画面解像度の異なる3種類のパネルが用意される。いずれも光沢タイプ(TrueLife)で、1440×900ドットのみLEDバックライトを採用している。1280×800ドットからの差額は1440×900ドットで3150円と安く、1920×1200ドットも1万4700円とかなりリーズナブルなため、その選択はいい意味で頭を悩ませそうだ。評価機では1440×900ドットのパネルを搭載していたが、鮮やかな発色で視野角も特に左右方向が広く、視認性は良好だった。なお、1440×900ドット(LEDバックライト)パネルでは液晶フレームの上部に200万画素Webカメラが標準装備されるが、ほかのパネルの場合はBTOで装備/非装備を選ぶことができる。
キーボードは、主要キーのピッチは約19ミリ確保する一方、右Shiftキーの小ささが目立つ。また、Enterキーの右側にHomeやEnd、PageUpやPageDownといったキーが並ぶレイアウトも気になる。Enterキーの右側に4ミリほど仕切りを設けているが、快適なタイプには慣れが必要だろう。
一方、2ボタン式のタッチパッドにはシナプティクス製ドライバを導入している。とくに多機能ではないが、右辺/下辺を使った上下/左右スクロールなど必要十分な機能は用意されており、デル用にカスタマイズされたユーティリティ画面も見やすくて好印象だ。
キーボード奥にはLEDで表示されるタッチセンサ式のワンタッチボタンがあり、内蔵ドライブのイジェクトやボリューム調整などが行なえる。また、BTOメニューでは右パームレストに指紋認証センサも追加できる。
バランスのとれたパフォーマンスを発揮
今回の評価機は、Turion Ultra ZM-82(2.2GHz)、メモリ2Gバイト(1Gバイト×2)、HDD容量120Gバイト、液晶ディスプレイの解像度は1440×900ドット、GPUにMobility Radeon HD 3450(グラフィックスメモリは256Mバイト)、内蔵ドライブはDVD±RWドライブという構成で、OSはWindows Vista Home Premium(SP1)だ。この評価機でベンチマークテストを実施してみた。PC USERではインテルプラットフォームのStudio 15のレビューを以前に掲載している。同じGPUを搭載しており、そちらとの比較が興味深いところだ。
まず、Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは、Studio 15と比較するとメモリが5.9と高く、プロセッサが4.9と若干低いものの、最低スコアがグラフィックス/ゲーム用グラフィックスの4.0と全体的にレベルの高い結果といえる。
PCMark05 1.2.0のスコアは、Studio 15より全体的にひと回りダウンするが、ノートPCではスコアが低下しがちなGraphicsでも2712と及第点以上のスコアをマークしており、バランスのよさは評価できる。3DMark06 1.1.0のスコアは1549と、Studio 15と同じGPUだけに互角のスコアを示す。いずれにしてもDirect X 9.0C以降の技術を活用した最新タイトルの本格的なゲームプレイは厳しいだろう。FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3では、CPU性能が影響してか、Studio 15と比べると若干見劣りするが、スコア自体はHIGH(高解像度)で3234と、このレベルのライトなゲームなら十分プレイできるといえる。
ちなみに、同じPumaプラットフォームということでは以前に「HP Pavilion Notebook PC tx2505/CT」のレビューをしている。あくまで参考までにこれと比較してみると、AMD M780Gチップセット内蔵のRadeon HD 3200の3D描画瀬能はMobility Radeon HD 3450と比べてほとんど引け目がないことが分かる。本機のBTOでの差額(1万500円)を考えると、チップセット内蔵グラフィックスのほうがコストパフォーマンスが高いかもしれない。
最後に、本機の発熱や騒音は全体的に高めの印象だ。低負荷状態でも冷却ファンの風切り音は確認でき、高負荷状態でははっきりと音量が上がる。比較的低い音のためそれほど耳障りではなかったものの、ベンチマークテスト中は常に大きな風切り音が発生した。手の触れる部分は全体的に暖かいという印象で、ベンチマークテスト後はパームレスト、キーボードともに43〜45度まで上昇していた(室温は26度)。
HDレディでカラフルなパーソナルPC
Turion X2 Ultra ZM-80(2.1GHz)を搭載したプラチナパッケージをベースにCPU、液晶解像度を強化して評価機に近い構成(現時点では120GB HDDが選べず250GBになる)にしても11万円以下で購入できる。ベンチマークテストの結果はそれほど高性能というわけではないがバランスよくまとまっており、コストパフォーマンスは上々だろう。AMD HD!エクスペリエンスに対応するHDコンテンツ再生能力を持つだけに、BTOメニューの選択肢にフルHD解像度の液晶やブルーレイコンボドライブが用意されているのもうれしい。
もっとも、AMDプラットフォームを採用しているメリットがよりはっきり分かるのは、もっと下の価格帯かもしれない。8万4979円から買えるプレミアムパッケージでは、CPUがAMD Athlon X2 QL-60(1.9GHz)となるが、メモリは2Gバイト、HDDは250Gバイトと十分な基本性能を持つうえ、AMD HD!エクスペリエンスに対応する点は変わらない。この価格帯でHDコンテンツの再生環境が手に入るのは、AMD M780Gチップセットを中心とした“Puma”プラットフォームならではのアドバンテージといえる。もちろん、Studioシリーズならではの上品なボディ、豊富なカラーバリエーションで個性を演出できる点もうれしい。パーソナルPCとして大きな魅力を持った製品といえるのではないだろうか。
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