「WinHEC 2008 Tokyo」でアピールされたWindows 7:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
東京都内で「WinHEC 2008 Tokyo」が開催され、Windows Vistaの後継OSとなるWindows 7について講演が行われた。その模様をお届けする。
Netbookの台頭がWindows 7に軌道修正を強いた!?
Windows 7では、こういった新しいデバイスのサポートが追加され、使い勝手を高めるためのデバイスドライバの拡張(Device Stage)も行われるわけだが、互換性を維持するために過去のデバイスサポートをバッサリと切るわけにもいかない。つまりWindowsが抱えているドライバは増加の一途で、すでにプリンタドライバだけで300Mバイトを超えるようになっている。こうしたWindowsが内蔵する標準ドライバ(In Boxドライバ)の増加も、Windowsのインストールサイズが肥大化する一因となっている。
基本的に、ストレージデバイスの容量は時間とともに増加するため、In Boxドライバの肥大化は黙認されてきたが、2008年のヒット商品となったULCPC(Ultra Low Cost PC/Netbookはその代表的なプラットフォーム)が状況を変えた。SSDを採用したULCPCは、その容量が4Gバイト〜16Gバイトしかなく、HDDを搭載した通常のPCとは大きく異なる。テンポラリファイルやページングファイルまで含めると、決してストレージスペースは潤沢ではない。
そこでWindows 7ではIn Boxドライバを減らして、インストールサイズを小さくすることが検討されている。といっても、サポートするドライバを減らすわけにはいかないから、古い製品のもの、システムの起動に直接関係しないものについては、Windows Updateのようなクラウド経由での提供を考えているという。
さらにULCPCのようなハードウェア資源の限られたプラットフォームでの動作を可能にするため、Windows 7では画面描画の際のダブルバッファリングをやめる模様だ。これにより、Windows上でウィンドウを開く際に、ウィンドウ当たりに必要なメモリ量が半分になる(Windowsの動作に必要なメモリ量が半分になるわけではない)。しかし、描画品質が落ちること(描画すべきオブジェクトをすべて書き終わらない状態の画面を見せてしまうティアリングなど)も考えられる。画面描画をダブルバッファリングするかどうかについては、Windows Vistaの際にも議論があり、メリット(高い表示品質)とデメリット(メモリ使用量の増大)をはかりにかけた上でダブルバッファリングを行うと決めた経緯がある。ULCPCという新しいジャンルの台頭が、マイクロソフトに軌道修正を余儀なくさせた、というところだろうか。
2009年早々に登場する予定のβ版に注目
陣内氏がもう1つ強調したのは、Open Box Experience(OBE)を改善したい、ということだ。OBEというのは、商品を買ったユーザーが、箱から商品を取り出して使い始めるまでの体験であり、これが商品としての満足度を大きく左右するといわれている。しかしWindows PC(Vista)の場合、ネットワークに接続したとたん、Windows Updateが始まり、セキュリティソフトの登録と更新が始まる。さらにシステムではインデックス作成やスーパーフェッチが行われ、PCの体感速度が低下しがちだ。
ベテランユーザーの中には、一晩放っておけばいい、という人もいるが、それはOBEとして最悪だ。以前に比べれば安価になったとはいえ、今でも普通の人にとって決して安い買い物ではないPCを購入して、一番ワクワクしたい時に使い物にならない商品の満足度が高くなるはずがない。
この問題に関する陣内氏の答えは、PCメーカーに対し、インストールイメージの作り方などで改善できる部分がないか検討したい、というものだった。PCベンダーやセキュリティソフトベンダー(2009年7月からマイクロソフトは無償でアンチウイルスソフトを提供すると発表しているが)と協力して、買ってすぐに使えるPCを実現してほしい。
話が横道にそれてしまったが、基本的にWindows 7はWindows Vistaを改良したものである。当然、Windows Vistaとは高い互換性を持ち、スムーズな移行が期待される。一方で、Windows XPからの移行は一概にスムーズとはいかないかもしれない。Windows XPは最初のリリース以来7年を経た今も出荷され続けているOSであり、その動作するハードウェアも多岐にわたる。現実問題として、すべてをカバーし、移行させるというのは難しいだろう。せめてULCPCのような、新しいけれど非力なマシンでも、十分に利用可能なOSにしてもらいたいと思う。それをうかがうきっかけになるのが、2009年早々のβ版ということになりそうだ。
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