超小型「VAIO type P」は「Netbookではない」 ソニーの狙いは(2/2 ページ)
ポケットサイズの超小型・軽量PC「VAIO type P」が登場。ソニーはミニノートやNetbookとは「全く違う」と強調する。「新市場を開拓する」というソニーの狙いは。
「Netbookとは発想が全く違う」
「低価格にフォーカスしたNetbookとは発想が全く違う」「ミニノートとは一線を画すつもりで開発を進めてきた」「PC市場に新しい風を吹き込む」──発表会でソニーは、type Pが「ミニノート」「Netbook」と呼ばれる製品ジャンルとは異なることを繰り返し強調した。
ミニノート・Netbookは昨年、4〜6万円といいう低価格でブームに火が付き、今や国内PC市場の2割を占めるまでに成長した。火付け役となった「Eee PC」のASUSTeKやAcer、Dell、Hewlett-Packardら海外の強豪メーカーに加え、東芝、NECなど日本メーカーの参入も相次いだ。
プレーヤーがひしめく同市場だが、「Netbook」という規格上の制限があるため、各社の製品はスペック的に差別化がしにくく、早々に価格競争という体力勝負に陥らざるを得ない側面もある。Netbook市場は急成長しており、メーカーとしては何らかの対応を迫られる必要がある一方、参入により通常のPCの需要低下と価格下落を招く恐れもある“諸刃の剣”だ。
ソニーが投入するtype Pは、Netbook市場が陥いる価格競争から「一線を画す」のも狙いだ。高解像度液晶や超小型・軽量ボディといった技術の結集を、「いつでも持ち出せる」「手放せないPC」というネット時代のライフスタイル提案につなげ、Netbookとの価格差以上の付加価値を訴求していく。不況のさなかの新市場立ち上げという困難が伴うが、成功すれば価格競争に巻き込まれず、「VAIO」に求められるブランドイメージも維持できる。
type Pの実売予想価格は10万円前後(米国では約900ドル)と、Windows XPを搭載した低価格なNetbookの倍以上だが、一般のNetbookとは異なる高密度な製品とあって「量販店からは『安い』という感想をもらっている」という。米国の家電見本市「CES」に合わせて世界で同時発表し、各国市場に順次投入。世界で一斉に新市場の立ち上げを図っていく。
ソニーは小型モバイルPCに先駆的に取り組み、カメラとワイド液晶を搭載した「VAIO C1」や、文庫本に近いサイズの「VAIO U」(type U)を発売してきた。VAIO Uは「熱狂的なファンに受け入れられた」が、キーボードが小さく、入力が難しいことなどから局地的な人気にとどまってきた。
Uの反省に基づき、type Pは小型軽量さに加え、高解像度なディスプレイや打ちやすいキーボードという特徴を備えた「携帯電話のように常に持ち歩けるポケットスタイルPC」というコンセプトを打ち出した。ブログやSNSなど、テキストコミュニケーションを駆使するネットユーザーのニーズをとらえ、新市場を開拓する狙いだ。
低価格Netbookへの当面の参入は「将来のことは分からないが、ユーザーがVAIOに期待しているのは『驚き』や『感動』。今はtype Pの普及に全力をつくしたい」(ソニーVAIO事業本部PC事業部の赤羽良介氏)と否定する。「今は全く新しい市場を作り、そこで伸ばしていきたい」と同社が意気込むtype Pの成否に、PC各社の注目が集まりそうだ。
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