不況は“追い風”?――日本エイサーの野望2009
Aspire oneの成功によって日本市場での存在感を増すエイサーが2009年の事業戦略について説明した。2008年の本格参入から「5年以内に国内PC市場でトップ5へ」は実現するのか。
2009年はNetbookを1500万〜2000万台出荷する
ヒューレット・パッカードやデルと肩を並べる世界的なPCメーカーでありながら、日本市場の特殊性を「最後の牙城(がじょう)」という言葉で表現し、2008年にようやく日本市場への本格参入を始めたエイサー。「5年以内に日本市場のトップ5をめざす」(日本エイサー)という野心的な目標を達成するための足がかりとなったのは、2008年のPC業界で最も注目されたキーワードの1つ「Netbook」だった。
日本エイサーは、当時低価格ミニPC市場で先行していたASUSTeKやMSIといった台湾勢のひとりとして「Aspire one」をいち早く投入。8月の発売から12月までというわずかな期間で、ワールドワイドの出荷台数で500万台、日本でも20万台という爆発的なヒットを記録し、日本エイサーの国内売上高は前年比で240%を超える成長を達成したという。
日本エイサー代表取締役社長のボブ・セン氏は、先日行われた事業戦略説明会において、「2008年はPCリテラシーの高い層へリーチできた。続く第2のターゲットは一般のユーザー」と語り、2009年はNetbookを中心として顧客層を一般ユーザーへ拡大し、Netbook分野での主導的立場を獲得する方針を示した。「今年はNetbookだけで1500万台から2000万台の出荷をめざす」(同氏)と自信を見せる。
もっとも、2008年における同社の総PC出荷台数はワールドワイドで約3000万台。現在の世界的な景気後退を考えると、「Netbookだけで2000万台」という目標はかなり野心的に思える。
ボブ・セン氏はこの世界情勢について「これからはより効率が重視される時代になる」と予想したうえで、人的リソースを製品開発に注力し、販売は各国のパートナーにまかせるチャンネルビジネスに徹底してきた同社の強みを強調する。従業員数を約5000人ほど(企業規模でみれば圧倒的に少ない)にしぼったスリムな経営や、コストパフォーマンスでスケールメリットを持つエイサーは、この不況はチャンスになる、という主張だ。確かに(日本のような)エイサーのシェアがまだ低い市場においては、不況を“追い風”ととらえる見方もできるかもしれない。このほか、さらなる成長を実現するための施策として、ターゲットごとに細分化した製品ブランドの展開や、法人向けビジネスの取り組みを強化していくと説明した。
同社初のスマートフォンを投入、4月には「Aspire one」の“次世代モデル”も
今回実施された事業説明会では、現行の新製品が会場に展示されるとともに、近日リリース予定の参考出品も行われている。まず目を引いたのが「Aspire one」の10.1型モデルだ。詳細なスペックは明かされていないが、液晶解像度は現行機と同じ1024×600ドット表示になる見込み(同社)で、8.9型モデルと比べて大幅な仕様変更はなさそうだ。Netbookのターゲットを一般層へ拡大するという戦略にあわせて、第1世代のラインアップを拡充する位置付けになるのだろう。なお、天板カラーとしてホワイト、ブラック、ブルー、レッドを用意した4色展開になる。2月にリリースされる予定だ。
もう1つの注目製品は、Windows Home Serverを採用したアプライアンス型サーバ「Aspire easyStore Home Server」だ。モバイルPCからのリモートアクセスや、デジタルコンテンツの管理・共有、自動バックアップなどの用途を想定した特化型サーバで、入出力デバイスを省き、ネットワークに接続するだけで簡単に導入できるのが特徴。CPUにはAtomを採用し、ホットスワップに対応した4基のHDDベイを備えるほか、拡張ポートとしてeSATAと4基のUSB 2.0を搭載する。こちらも2月のリリースを予定している。
また、ボブ・セン氏は直近のスケジュールとして、2月中旬にスペイン・バルセロナで行われるMobile World Congressにおいて、同社初のスマートフォンを発表する(関連記事:Acer、台湾のスマートフォンメーカーを買収)ほか、4月にはNetbookの次世代モデルをリリースする予定であることも明らかにした。
関連記事
- 「次に狙うのは日本だ」――16:9大画面ノートで“最後の牙城”に挑むエイサー
日本エイサーは、ホームシアター向けノートPC「Gemstone Blue」(Aspire 6920)を発表した。アスペクト比16:9の16インチワイド液晶パネルを採用したノートPCは世界で初めて。 - 世界第3位のエイサーに聞く:「日本市場で“5本指”に入るPCメーカーに」――エイサーの野望
世界シェア第3位のPCメーカーである台湾エイサーが日本のコンシューマーPC市場に本格的に参入する。その第一弾がいよいよ4月25日から発売されるホームシアター向けノートPC「Gemstone Blue」だ。日本エイサーのトップ、ボブ・セン氏に今後の日本戦略を聞いた。 - PCを選ぶ理由はスペックじゃない──ACERが示す「このユーザーにはこのブランド」
Gateway、eMachines、Packard BellとPCベンダーを積極的に吸収していくACER。そこには、ただ膨張するだけではない、PC市場の変化を見据えた戦略があった。 - むきました:低価格ミニノートPC「Aspire one」を2枚におろしてみた
Eee PC対抗機として人気を集めている日本エイサーの「Aspire one」。上質なボディに隠されたAtomをのぞいてみた。 - 8月23日発売:安くて“カッコイイ”ほうの新型Eee PCキラー「Aspire one」発売直前レビュー
日本エイサーが低価格ミニPC市場に投入する新型Eee PCキラーの最右翼「Aspire one」がいよいよ発売される。その実力を検証していこう。 - 5万4800円で新型Eee PCに対抗できる?:Atom搭載の低価格ミニPC「Aspire one」発表会
日本エイサーのNetbook「Aspire one」が8月中旬より国内で販売される。発表会には眞鍋かをりさんが登場し、“ブログ更新ツール”として「Aspire one」のメリットをアピールした。 - AcerとMSIのEee PC対抗Atomノートも触ってみた
Eee PCに負けじと、ライバル機も続々と登場した2008年のCOMPUTEX。Acerの「Aspire one」とMSIの「Wind Notebook U100」に勝算はあるのか? - ASUSとガチ勝負!(ただし発表会の時間が)──AcerのNetBook「Aspire One」登場
Eee PCが登場して世界中に衝撃を与えたのがCOMPUTEX TAIPEI 2007。そして2008もNetBookで盛り上がる。ASUSに続いて、AcerもAtomを搭載するノートPCを発表した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.