老舗のこだわりを凝縮した一手――定番ドキュメントスキャナの新モデル「ScanSnap iX500」を試す:買い替える価値アリ(2/3 ページ)
“自炊派”層から圧倒的な支持を得ているPFUのドキュメントスキャナ「ScanSnap」シリーズに約3年9カ月ぶりのフラッグシップ機が登場した。光学系を変更し、専用画像処理プロセッサを搭載するなど、飛躍的な進化を遂げている。
「タメ」のない読取り速度
iX500の読取り速度は、S1500と比較してスーパーファインモードまでは20枚/分から25枚/分に、エクセレントモードで5枚/分から7枚/分になった。S1500登場時は、ノーマル、ファイン、スーパーファインで読取り速度に差があった旧機種「S510」から一気に最大3倍以上の高速化が図られ、多大なインパクトを与えた。それに比べると最大25%の速度向上はいささか控えめに感じるかもしれない。だが、実際に読み込んでみると、S1500までにあった原稿と原稿の間の「タメ」がなくなっていることに気づく。
これはiX500に搭載された画像処理エンジン「GI」プロセッサによるものだ。「GI」プロセッサはデュアルコアCPUを搭載したSoCで、今までPCで行っていた画像処理をScanSnap側で行うことができるようになった。そのことによる恩恵は単なる読取りの高速化のほかにもいくつかある。
1つはPCレスでの取り込みを可能にしたことだ。今までもスマートフォンやタブレット端末に読取りデータを取り込むことはできたが、これはあくまでPCを媒介して実現していた。一方、iX500では自身が画像処理まで行うため、ネットワークに接続したスマホなどから直接スキャンし、データ保存ができるようになった。ただし、PC側で処理することによって実現している一部機能、データ容量が大きいエクセレントモードなどは、Wi-Fi接続時には対応しない。
若干の制限があるとはいえ、PCレスで直接スマホやタブレットにスキャンデータが取り込まれるのは思いのほか便利だ。例えば、外出前のわずかな時間にチラシや地図、電車の中で目を通しておきたい資料などを、スマホやタブレットにさっと取り込める。家族でScanSnapを共有できる点も活用シーンを広げてくれそうだ。もちろん、数十ページ以上におよぶPDFファイルなどはPCに保存しておいたほうが後々活用しやすいが、そのような用途にはPCを経由させる「モバイルに保存」機能も従来どおり利用できる。
機能比較 | Wi-Fi接続時 | USB接続時 |
---|---|---|
出力解像度 | ノーマル/ファイン/スーパーファイン | ノーマル/ファイン/スーパーファイン/エクセレント |
カラー判別機能 | カラー/グレー | カラー/グレー/白黒 |
傾き補正機能 | 原稿用紙の傾きで判断 | 原稿内文字列の傾きによる判断 |
向き補正機能 | × | ○ |
検索可能なPDF変換 | × | ○ |
長尺読取り | × | ○ |
マルチフィード検出 | 重なり検出 | 重なり検出/長さ検出 |
A3キャリアシート | × | ○ |
インテリジェント・インデックス機能 | × | ○ |
パスワード付PDF作成 | × | ○ |
PDF/A作成 | × | ○ |
タイムスタンプ付PDF作成 | × | ○ |
高圧縮PDF作成 | × | ○ |
なお、Wi-Fiでの接続はScanSnapと直接接続するのではなく、あくまでScanSnapとスマホがWi-Fiを使って同じネットワークに接続することで実現される。そのため、ScanSnap、スマホともアクセスポイントに接続することになる。このような仕組みなので、iX500はIPアドレスを持つのだが、現在のところネットワーク経由でScanSnapを使うことができるのは「ScanSnap connect application」をインストールしたAndroidおよびiOSに限られる。「ScanSnap connect application」のWindows版やMac版をリリースする、あるいはその機能をScanSnap Managerに統合すればより活用のシーンが広がるので、今後に期待したい。ちなみに、Wi-Fiインタフェースも「GI」プロセッサによって実現されている。
そのほかUSB 3.0も「GI」プロセッサによる機能だが、前述のように本体で画像処理まで行うため、USB 3.0による高速化の恩恵はほとんどない。取扱説明書にはUSB 3.0接続時にはiX500が認識されないこともあり、その場合にはUSB 2.0を使用するよう注意書きがある。このあたり、メーカー自身あまり積極的ではないようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.