「ファミコンに負けてるよ」と言われたあの日──NEC製PCが“音”にこだわる理由:それは「PC-8801mkIISR」までさかのぼる(2/2 ページ)
NEC製AV PCはヤマハ共同開発の専用スピーカーシステム「YAMAHAサウンドシステム」を搭載する。実はPCとは思えないサウンド性能を持つ、“非常にぜいたく”な仕様なようだ。
小型サイズのPC用に、「FR-Port」も新規設計・開発
もう1つはVALUESTAR NとLaVie Lに採用する「FR-Port」。こちらも同じくPCでは損なわれがちな低音を豊かに再生するための技術を盛りこんだ、さらに設置スペースが限られるモデル用のフルレンジユニットだ。NEC製PC用のYAMAHAスピーカーシステムを、より小型で設置スペースの限られるモデルにも搭載するために開発された。
FR-Portは、エンクロージャ内部の空気バネとバスレフポート内の空気の質量によりヘルムホルツ共鳴を起こす仕組みは同じながら、一般的な円筒型バスレフポートとは異なる、上下はフラット/左右がラッパ状(Radial)な特殊形状のバスレフポートを内蔵する。特殊形状のバスレフポートは一定の容積を確保しつつエンクロージャを薄くできる点のほか、円形のラッパ形状より“出口に空気流が表れない”メリットがある。
空気流とは──米村でんじろう氏の空気砲実験で見たことがあるであろう、穴の空いた箱をポンとたたくと空気が渦輪となって飛び出す現象のこと。小型のPC、特にノートPCに搭載するスピーカーは、搭載スペースの確保はもちろん、利用時の破損など対ユーザーの安全性確保のためパンチングメタルなどでカバーするが、これが空気流をせき止めて抵抗となり、音圧が低下してしまう。この点、出口にその要因がなければ効率は落ちないというわけだ。
また、出口が近いことで低音と中高音を定位させやすいのもポイントの1つとし、絢香×コブクロの混声三部楽曲『Winding Road』を例に、それぞれのパートが著作者の意図した音圧/音量できちんと出力できる(低音域が足りない/定位していないスピーカーでは、この楽曲の場合、低音域のコブクロ・黒田氏のパートが小さい音で聞こえることになる)=そもそも音楽を楽しむために必要なスピーカー性能と、開発・設計したヤマハの新井技師補は強調する。
「FR-PortはPCに最適な超小型サイズとしながら、非常に効率よく豊かに低音を発生させられる。あるPCのスピーカーは、バスレフポートがあるのにバスレフからの低音をボディ内部に捨ててしまっている(結果、利用者には届かない)、じつにもったいない設計のものもあった。ソフトウェア処理でサウンド補正もできるのである程度ごまかせてしまうのかもしれないが、ヤマハとNECはそうとは思わない。その機能もスピーカーの基本設計がしっかりなされていることを前提に生きてくる。」(ヤマハ エレクトロニクス事業本部技術開発室の新井明技師補)
ヤマハとNECが目指したのは「ナチュラルサウンド」。楽器、ヴォーカルを演奏や音楽ソース/制作者の意図した音色で忠実に再現するのが根底にある。目線はAV機器である。
「すべてがそうではないが、全世界のPCの中には、音さえ出ればよい、スピーカーさえ付いていればよいという仕様の製品は正直、かなりあると思う。思い出すとヤマハさんとの共同取り組みはかなり古くから──1980年代、ヤマハ製FM音源LSIを初採用した“PC-8801mkIISR”までさかのぼる。これまでパソコンは(かなり高額なホビー用機器なのに)“ファミリーコンピュータより音がチープ”などと言われていたが、これによりPCゲームの質が一気に変わったと高く評価され、ゲーマーはもちろん作曲家なども導入するようになるほど、パソコンの利用シーン、ひいてはパソコンという機器全体の利用価値そのものが高められたと自負する。この思いは2013年現在の現行モデルにも当然受け継がれている。
当時のファミコンと同じように現代も“ミニコンポに負けるわけにはいかない”し、今後もPCのユーザー利用価値を高める技術や機能は惜しみなく投入していく。たかがPCの音──と思っている人ほど、この豊かなサウンド出力性能に驚いてもらえると思う。NEC製PC+ヤマハスピーカーの組み合わせを、自宅で音楽を楽しむ人全員に勧めたい」(NECパーソナルコンピュータ 商品企画本部の栗山浩一本部長)
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
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