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第1回 「IEEE802.11ac」とは何か特集「ついにやってくるギガビット無線LAN」(2/3 ページ)

無線で100Mbpsを超えた802.11nドラフト対応製品が市場に登場してから約6年、ついにギガビットを超える無線LAN規格「IEEE802.11ac」対応製品の登場が間近に迫った。家庭向けとしては有線接続を超える──仕様となる802.11ac、まずはどんな特長があるか、これまでと何が違うかを解説しよう。

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802.11nの技術を基礎に、「802.11ac」は高い互換性を確保したまま高速化

photo バッファローの802.11ac(Draft)対応モデル「WZR-1750DHP」

 802.11acは、802.11a/gおよび802.11nで採用された技術を基礎に仕様を拡張し、高速化を果たしている。既存規格と高い相互互換性を確保することで移行期間を見込んで新旧規格を混在した使い方を可能とし、かつ投入初期から比較的製品製造コストも抑えられる。ユーザーもベンダーも、移行をスムーズに進められる可能性が高いだろう。

 802.11acでの高速化の一部は、802.11nの技術の延長上にある。802.11nは「チャネルボンディング」(隣接するチャネルを束ねて送受信することで高速化を果たす機能。例えると、道路の車線数を増やすことに相当する)として20MHz幅×2で「最大40MHz幅」を使用していた。対して802.11acでは、これは20MHz幅×4の「80MHz幅」、あるいは20MHz幅×8の「160MHz幅」まで拡大できる。これだけでも理論上802.11nの4倍の高速化・大容量化が果たされることになる。チャネルボンディングは極めてシンプルな高速化の手法のため、ほぼ理論通りの高速化が期待できるといえる。

 また、802.11acで用いる周波数帯は「5GHz帯のみ」に限定し、長らく無線LANで利用されてきた2.4GHz帯はサポートしないのも大きな違いだ。2.4GHz帯はISM(Industry Science Medical/産業化学医療用)バンドと呼ばれ、無線LAN以外にも広く解放されていた周波数帯。このため、同じ周波数帯を使う無線通信機器と相互干渉する可能性が高いほか、そもそも全体でも約80MHz幅分しか電波を利用できず、結果として802.11acの高速性を生かすことができないためだ。

 もっとも、これから登場する802.11ac対応の無線LAN機器の多くはスマートフォンやベーシック志向のノートPC、携帯ゲーム機などで現在も広く使われている2.4GHz帯での802.11b/g/n規格も一緒にサポートするだろう。このため、ルータ/親機を802.11ac対応製品に交換したからといって、これまで使っていた2.4GHz帯対応無線LAN機器が使えなくなる心配はほとんどないと思われる。逆に、802.11ac対応製品が今後も長く2.4GHz帯もサポートし続けるためにも、802.11a/g/nの技術を応用している点がとても重要になる。


photo 5GHz帯でのチャネル割り当て。5GHz帯であれば80MHz幅で4つ、160MHz幅でも2つの干渉しないチャンネルの利用が可能になる
photo 一方、2.4GHz帯のチャネル割り当て。20MHz幅で隣のチャネルとすでに干渉しており、40MHz幅ですでに2つしか干渉しないチャネルを確保できない

 802.11acが5GHz帯のみのサポートとなることでエリアカバレッジが気になる人もいるだろう。一般に電波は周波数が高いほど直進性が強く、かつ距離に対しての減衰が早くなる特性があり、結果として電波が届く範囲にも影響するとされている。ただ、この点については現実的にはほとんど心配はないと思われる。

 802.11acは802.11nに引き続いて反射波も積極的に利用するマルチアンテナ技術のMIMOが採用されており、回り込みにもかなり強い。また802.11acで利用する5GHz帯は事実上無線LAN専用の帯域なので、2.4GHz帯のように他の無線機器(および電子レンジのような同一周波数帯の電波を発する機器)からの干渉がほとんどないので、距離に対する減衰もこの点である程度カバーできると言える。

 実際、「特集:5GHz帯無線LANルータ導入のススメ」などで何度か802.11nでの2.4GHz帯/5GHz帯別速度比較を行ったが、ほぼ同一条件下における通信速度や到達距離で5GHz帯が見劣りすることはなく、むしろ良好な結果が得られている。もちろん何も障害物(反射するもの)がない広大な野原のような場所で測定すれば違う結果になる可能性はあるが、家庭内での実利用においてはということでご理解いただきたい。

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