SSDでは淘汰が進み、簡易水冷は群雄割拠、電源は各社が付加価値を模索中
その他のパーツで、2013年、大きく動いたのはSSDではないだろうか。SSDがコンシューマー市場に登場してしばらくは、新興メーカーや、ゲーミングブランド的メーカーなど、さまざまなメーカーがこの市場に参入していた。
ところが、ふと気づくと、あるメーカーではプロダクトラインアップからSSDが消え、あるメーカーは他社に買収されてブランドを失ったといった具合で、絞りこまれてきた印象を受ける。それは、COMPUTEXで広い会場を回った際にも抱いた感想だ。コントローラチップを含め、メーカーの淘汰、買収が進んだこともあるし、SSD事業自体の収益性という問題もあるだろう。そして年末12月初頭に飛び込んできたニュースが、東芝によるOCZ TechnologyのSSD事業の買収だ。
すでにSSDは、モバイルだけでなくデスクトップPCでも一般的になってきている。一方で、容量単価の下落が落ついた印象もある。128Gバイトが1万円前後、256Gバイトが2万円台半ば、512Gバイトが3万円台後半といった具合だ。
フラッシュメモリ側でも容量を増やす技術的な進歩が求められ、あるいはNANDフラッシュメモリ自体が、製造上の容量拡大の限界に近づいているという話もある。かといって次世代メモリ規格がすぐに登場するわけでもないので、しばらくは128Gバイト/256Gバイト/512Gバイトで落ち着き、1Tバイトクラスが出るにしてもまだプレミア製品という位置づけになるのではないだろうか。多くの自作PCユーザーの場合、システムドライブには128Gバイトまたは256Gバイト、データドライブにはHDDという組み合わせがベストと感じているだろう。
クーラーの分野では、簡易水冷キットを扱うメーカーが一気に増えてきた。SSDで数年前に起こったブームと同様、今は簡易水冷という流れなのだろうか。多くはAsetekのメカニズムを採用しているが、デザインに工夫をこらしたり、あるいはヘッド内部に熱輸送のための工夫を凝らしている。また、自作PCだけでなく、ショップブランドPC、あるいはPCメーカーにも、簡易水冷キットを採用する例が多くなってきているとも感じている。
ラジエータサイズで言えば、12×12センチがメインであるのは変わらないが、12×24センチ、14×14センチ、14×28センチと、面積のラインアップは増え、それを収めるケース側でも、こうした大型ラジエーターへの対応がトレンドとなりつつある。コンパクトでも大型ラジエーターに対応するというゲーミングPCケースも登場し、これまで大きいことが是とされてきたゲーミングPCが、もしかするとこれからはコンパクトという流れになる可能性だってあるだろう。
電源ユニットもちょうど面白くなってきたところだ。80PLUS Platinum製品が出そろい、効率面での競争はある意味で一段落ついた印象がある。また、現在の製品ラインアップをじっくり見てみると、80PLUS Platinumがフラッグシップに、80PLUS Goldが主力に、80PLUS Silver製品はほとんど姿を消し、エントリー向けに80PLUS Bronzeといった状況になっている。
80PLUS Silverが数を減らしているのは、ちょうど中間という微妙なポジションであるためと言われる。効率で選ぶなら80PLUS Gold、安さなら80PLUS Bronzeへと分かれてしまうからだ。また、効率面では限界まで引き上げられてきた状況下、付加価値として電圧や冷却ファンなどのステータス監視機能を盛り込んだり、あるいは高効率をより小型なSFXサイズに収めるといった各社の模索が面白い。特にSFX電源に関しては、数年前なら「作ったところで数が出ない」と言われていものたが、日本だけでなく世界的規模で広まったMini ITXベースの小型デスクトップ人気も後押ししてか、今年は定期的に新製品が登場していたのが印象的だった。
2014年のあなたのPCはどんな形で、どのくらいの性能で、何ができる?
2013年はCPU、GPUともにインパクトが薄かったと書いたが、CPUは2014年にチャレンジを控えており、GPUもハイエンドはもちろん、ミドルレンジもお買い得度は十分に増した。
まして、現在、CPUはすでに普段使いであれば十分なパフォーマンスを得ており、GPUもアッパーミドルクラスのGPUなら、ほとんどのゲームをフルHDで、かなり高画質で楽しめるという状況ができあがっている。
例年と比べてみても、かなりお買い得度の高いタイミングではないかと個人的には感じた。もっとも、コスト視点では、円安傾向により個別のパーツは確かに値上がりしている。とはいえ、今が適正価格と言うべきだろう。異常な円高と爆安メモリという数年前の状況の方が特殊だったのだ。
また、CPUやGPUで満足してしまったとしても、自作PCはそれだけではない。機能的なケースやリムーバブルキットなどによる利便性の追求、冷却パーツやケーブルマネジメント機能付きケースによる静音性の追求、逆にCPUやGPUのパフォーマンスを多少落としてでも低消費電力を追求するというスタイルもある。また、かつてMini ITXがそうだったように、NUCのような小さなフォームファクターが、新しいデスクトップPCのスタイルを築く可能性もある。
PCを自作するというのは“妄想”すること、手に入るパーツから自分なりの形を作っていくことだ。2014年のあなたのPCは、もしかしたら今使っているPCとはまったく異なる形かもしれない。そう考えると、楽しみでワクワクしてこないだろうか。
関連記事
- 自作派必読:第4世代Coreの性能は? 「Core i7-4770K」で速攻検証!!
“Haswell”こと第4世代Coreプロセッサーで自作マシンを組むなら、まず気になるのがその性能だ。見せてみろ新世代CPUの実力とやらを! - Haswellで何が変わる?:「第4世代Coreプロセッサー」の強化ポイントを解説
“Haswell”の開発コード名で知られるIntelの「第4世代Coreプロセッサー」がついに登場した。新世代CPUの特徴を見ていこう。 - 販売解禁:第4世代Core発売、深夜のアキバに300人超が集結
6月2日午前0時。“Haswell”ことインテルの最新CPU「第4世代Coreプロセッサー」が秋葉原で発売された。 - “Haswell”主役のCOMPUTEX TAIPEI 2013、明後日から始まるよ!
2013年もやってきましたCOMPUTEX TAIPEI 2013。開幕前前日の状況を現地から報告する。今回の主役はなんと言っても“Haswell”。もちろん新CPUを搭載したPCやマザーボードも続々と登場する予定だ。 - 「Richland」はリッチなパフォーマンスを見せてくれるのか
“Haswell”解禁でPC業界が慌ただしい中、AMDも第3世代デスクトップPC向けAPU「Richland」を投入。早速ベンチマークテストで性能を検証するぞ!! - 古田雄介のアキバPickUp!:AMDのことも忘れないであげてください――“Richland”こと新世代AMD Aシリーズの評判
Trinityの後継となる新しいAPUがAMDから7モデル登場した。性能を知る店員さんからはまずまずの評価を聞くが、Haswellデビューのインパクトから登場に気づかれていない節もあるとかないとか。 - グラフィックスコアは最大844MHz動作:AMDが第3世代のデスクトップ向けAPU「Richland」を投入
AMDは6月5日、“Richland”の名で知られる次世代デスクトップ向けAPUとして、最大4.4GHz動作の「A10-6800K」などを発表した。 - 「GTX 780 Ti」vs.「Radeon R9 290X」ガチ対決:TITANを超える2880コア!「GeForce GTX 780 Ti」が頂上決戦を制す
NVIDIAの新たな最上位GPU「GeForce GTX 780 Ti」が発売された。サンプルカードを入手したので、Radeon R9 290X対抗と言われる同GPUのパフォーマンスをチェックしていこう。 - GTX 780を上回る性能:AMD Radeonの新たな最上位モデル「Radeon R9 290X」を徹底比較
リニューアルされたRadeonで、シングルGPUの最上位に位置する「Radeon R9 290X」がついに姿を表した。 - 先手、AMD:AMDの最新GPU「Radeon R9/R7」シリーズ「280X/270X/260X」の性能を徹底検証
今回も先手を打って出るのはAMD。名称も新たに登場したGCNアーキテクチャの最新GPU「Radeon R9/R7」シリーズはどのような製品なのだろうか。ベンチマークで検証してみよう。 - 7970との比較も:「GeForce GTX 780」はどれだけ速い? パフォーマンスを徹底検証
5月23日から販売が始まった最新ハイエンドGPU「GeForce GTX 780」の実力をベンチマークで見ていこう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.