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ビットコインの仕組みとMt.Goxの事件――仮想通貨に未来はあるか信用できる? できない?(2/5 ページ)

一連のビットコイン事件は何が問題なのか。分かりやすくまとめてみた。

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ビットコインの仕組み

 さて、物理的な姿を持たず、中央機関もないビットコインは、どうやって通貨の流通システムを実現しているのだろうか。ここでは慣例にしたがって送信元をアリス(Alice)、送信先をボブ(Bob)として解説する。名前の由来は送信元A、送信先Bというアルファベットを擬人化したものだと思えばよい。

 まず、送金について。ビットコインの財布にはそれぞれ秘密鍵と公開鍵がある。ちょっと乱暴だがこれらは印鑑と印影、と考えてもらいたい。印影の方は公の情報として誰もが知っているものとしよう。しかし、印鑑はアリスが大事に持っている。アリスはボブにビットコインを送るため、送金指示書に印鑑を押してビットコインのネットワークに流す。

図1

 ネットワークを構成しているコンピュータ(ノード)は送金指示書の押印を印影と見比べ、正しいものであることを確認する。もし正しくなかったら受理されない(図2)。

 これが「人のビットコインを勝手に盗むことができない」仕組みだ。偽造することは難しいが、偽造したものを見破るのは簡単なのだ。

図2

 次にこれを承認するわけだが、ここがビットコインの「肝」になる。

 送金指示書は頻繁に世界のあちこちから申請される。それを10分ごとに1つのブロックとしてファイリングし、まとめて承認を行う(図3)。もちろん、その前の10分にまとめられ、承認されたブロックもあり、さらにその前の10分にまとめられた承認済みブロックもある。こうして10分単位のブロックは時系列で一列に並ぶ親子関係となる(図4)。なお、すでに承認済みのブロックに含まれている送金指示書を含んだブロックは無効なものとして承認されない。それによって取引が二重に実行されることを防いでいる。

図3

図4

 最新の子である未承認ブロックを承認する際には最新の(未承認の)ブロックの情報だけでなく、その直前の承認済みブロックの情報も合わせて承認印を捺印する。確かにこの子の親は正当な後継者である、だから、その子もまた「正当な後継者」である、というわけだ(図5)。

図5

 その結果、送金したビットコインは送金先のボブのものである、と認めることになる。もし、そのビットコインを送金元のアリスや第三者のキャロルが送金しようとしても、本来の持ち主ボブ以外のところからの送金指示書は受理されない。当該のビットコインを送金元のアリスが送金できず、ボブが送金できるようになったということはつまり、送金が完了した、ということになる。

 さて、この承認印の印影もまた、最初のアリスの印鑑と同じように「正しいかどうか」を簡単に見分けることができる。

 違う点といえば、この承認印が正しいだけでは承認されない、というところだ。親の情報、子の情報、承認者の情報、それにナンス(nonce)をある計算式に突っ込めばハッシュと呼ばれる数値が出てくる(図7)

図7

 こうして計算されたハッシュが「ある条件」を満たす場合だけ、ナンスは有効なものとなる。この計算式がやっかいで、入れる情報が少しでも違うとまったく異なるハッシュになる、ハッシュから逆計算で元の情報を得ることはできない、という特徴がある。そのため、承認印として使えるナンスを見つけるためにはひたすら試行錯誤するしかない。

 そうして条件を満たすナンスを見つけることができたら、承認印としてナンスをつけた送金指示書(兼受領書)を全員に送る。1番最初にナンスをつけることができた人にはアリスから手数料が送金されるほか、新規のビットコインが付与される。これこそが「採掘」と呼ばれている作業の正体だ。平たくいえば、ビットコインの流通システムを支える「業務」に対する報酬ということになる。マイナー(採掘者)は銀行そのものでもある。

ブロック#289631の取引内容。当取引時点のハッシュの条件が「64桁のハッシュの先頭16桁が0であること」であるため、Hashにはずらりと0が並ぶ。全体の計算能力が上がればこれが「先頭17桁が0」「先頭18桁が0」というように厳しくなってくる

 この「ある条件」というのはビットコインのノード全体の計算能力から算出され、常に10分ほどかかる難易度に設定される。そのため、「5年前だったら1時間かかっていたのに、今だと1分もかからなくなった」というようなことにはならない。むしろ本気で新規ビットコインの取得に動いている人たちの計算力は尋常ではないので、一般人の環境に照らし合わせると「1年前だったら1週間以内では見つけられていたのに、今は1年かかっても見つけられない」という状況になっている。難易度が高まっているだけでなく、彼らを出し抜いて真っ先に見つけなければならないからだ。

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