Apple Watchが腕時計とウェアラブルの概念を変える:林信行による世界先行レビュー(2/5 ページ)
明後日、4月10日金曜日からの予約開始にあわせて、ついにApple Watchの展示がスタートする。日本ではアップルストア銀座や表参道、そして新宿の伊勢丹に新しくできるApple Watch Storeにて展示が行われる予定だ。どうしてもウェアラブルというくくりにされがちな本製品の本当の魅力を、これまで1週間に渡って製品を試用してきた林信行が解説する。
TAPTICエンジンが生み出す触覚コミュニケーション
Apple Watchは工夫と洗練の塊だと言っていい。これまでネットで言われていたような(そして簡単に思いつくような)懸念に対しては、熟考された工夫が用意がされている。そして、「この程度だろう」と甘く見ていた部分には、想像を超える喜びが仕掛けられていることが多い。
例えば、冒頭で触れた振動もその1つだろう。
これまで腕時計でもアラーム用としてバイブレーション機能などを搭載している製品はあった。しかし、これはただブルブル震えるだけの単純な振動だった。
一方、アップルはこの時計のためにTAPTICエンジンという人の触感に語りかけるエンジンを開発。これが時計のフェースを押し込んでカスタマイズするときのゴツっという鈍い感じの触感から、メッセージが届いたときの軽やかに叩かれる感じの触感など、さまざまな振動のバリエーションを生み出している。
アップルはこれを活用するため、先に挙げた“メッセージが届くときの感触”以外でも、「右折ってどんな触感だろう。左折はどうだろう」とディスカッションを重ねてきたようで、例えば、ルート案内中も右折の指示と、左折の指示では異なる振動を用意している。
最初はApple Watchの細かな振動の違いはなかなか分からないが、使っているうちに触覚が開いていき、たとえ音を消し画面を見ない状態でも、振動だけで道が分かるようになる。
これまでのデジタル機器は、あまりにも情報の提示の仕方が視覚一辺倒に偏りすぎていたが、これからは触覚を使ったシンプルな情報伝達が面白くなるのかもしれない。
なお、MacBookやMacBook Proでも、操作している指にクリック感を感じさせるためにTAPTICエンジンを採用しているが、Apple Watchの振動は操作をする側の指ではなく、装着している腕だけに振動を発するようだ。
「どうできるか?」の進化で生活が変わる
Apple Watchで衝撃を受けたことをとりとめもなく書いてしまったが、ここで製品としてのApple Watchにもう一度、目を向けてみよう。
そもそもApple Watchは何のためのデバイスなのか。
よくインターネット上では、Apple Watchでできる大半のことは、すでにスマートフォンで実現しているという人がいる。確かにその通りだ。しかし、スマートフォンの登場以来、デジタル製品で重要なのは、「What(何ができるか)」から「How(どうできるか?)」に移り始めている。
そもそもそれをいったらスマートフォンでできることだって、大半はすでにパソコンでできていたのだから、スマートフォンはいらない、という話になる。だが、スマートフォンはいつでもポケットに入れて持ち運べ、すぐに電源が入り、すぐにインターネットにつながるといったメリットがあった。だからこそ数多くの新しい使われ方や文化を生み出した。
その視点に立てば、常に腕に巻かれており、そもそもポケットから取り出す必要がないApple Watchも、普段の生活に大きな違いを生み出すことが想像できるだろう。
Apple WatchがリリースされればiPhoneが不要になると勘違いしている声も見かけるが、事実はその逆で、Apple WatchはiPhoneがなければ、使える機能が制限されてしまう。
Apple Watchは、iPhoneの自然な延長をなす連携製品で、iPhoneとの距離感や情報とのつきあい方を少しだけ“リバランス”する、つまりいい具合に距離感を整えてくれる製品なのだ。
iPhoneが近くにないときに代わりに電話を受けたり、話が長くなってきたらスムーズにiPhoneに切り替えられることはすでに書いたが、それ以外にもiPhoneに届いたすべての通知は基本的にApple Watchにも表示される。
iPhoneへの通知が多い人は、しょっちゅう腕が振動して大変かもしれないが、筆者は1日の通知が10件くらいに収まるようにiPhoneの通知を片っ端から切っていたので心地よく使えている。必要であればApple WatchとペアリングしたiPhone側で個別にApple Watchでも表示するか否かを設定することもできる。
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