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Windows 10よりSurface Bookが気になった2015年鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/4 ページ)

Windowsを中心として、Microsoftの最新動向を追い続けている本連載。今回は年末らしく2015年に登場したWindows 10と、それに関連する重要なトピックを考察する。

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第2のミッションは「プラットフォーム統合」

 Windows 10では複数のプラットフォームやフォームファクタにまたがる形で別々に存在していたOSコアやアプリストアを統合し、1つの「シングルOS」としての役割を明確化しようとしている。これが2つ目のミッションだ。

 より正確には、「Universal Windows Platform(UWP)」という単一の実行環境をプラットフォームごとに用意し、全てにおいて1つのアプリが共通して動作する「Write Once, Run Anywhere」という、かつて米Sun Microsystems(現在はOracleの一部)がJavaで提唱していたコンセプトを実現しようとしている

 Javaは現在やや混乱の途上にあるが、サーバからデスクトップ、モバイルアプリ、組み込み装置と、広い範囲での利用が進んでおり、実行環境はバラバラながらプログラミング言語としては、その役割をある程度果たしたように見える。UWPは、Windows OSでそれを実現しようとしているのだ。

Windows 10のコンセプト
MicrosoftはWindows 10で「単一のOSコア」と「1つのアプリストア」というコンセプトを実現しようとしている

 ただし、これには2つの大きな課題がある。1つは、シェアでライバルと大きく離されている「Windows 10 Mobile(Windows Phone)」の市場を拡大すること、もう1つは、アプリケーション開発者の目をUWPへと向かせることだ。

 前者はまず、事実上MicrosoftがNokiaから買収した「Lumia」だけになってしまったデバイス事情を改善し、サードパーティーの参入を促す必要がある。幸い、Windows 10を契機に参入を表明するベンダーが多数登場し、Windows Phone 8の時代に「ベンダーを絞り込む」という戦略で墓穴を掘ってしまった状況からは大幅に改善されることになった。

 幸い、日本国内でも既に7社が何らかの形で製品投入を発表しており、数年続いた「対応製品ゼロ」の状態から脱出できている。

NuAns NEO
日本国内でもWindows 10 Mobile搭載スマートフォンの参入が相次いでいる。こちらは、トリニティが「アクセサリー屋の発想で自分たちが使いたい製品を作った」という、ユニークなデザインが目を引く「NuAns NEO」。2016年1月に発売される予定だ

 ただ、依然としてプラットフォームがアプリ販売ビジネスとして成立するほどの水準には達していないのは確かだ。また、Windows 10 for PCにおいてもアプリ開発者の目はUWPにあまり向いておらず、そもそもPC向けアプリストアにおいても充実度の面では悲しいものがある。

 そこで後者の課題に対して、既存のUWPではないアプリケーションの移植を促したり、他のプラットフォームの開発者が参入しやすくなるよう、「Windows Bridge」というツールの提供を表明している。

 本来であれば2015年末までには表明された“4つ”のWindows Bridgeのうち、Project Centennial(Windows Bridge for Classic Windows apps)を除く3つが提供されているはずだったが、現在のところProject Westminster(Windows Bridge for Web apps)のみが提供され、他の予定は全てずれ込んでいる。2つ目のミッション達成にはまだ時間がかかるだろう。

Windows Bridge
Build 2015で発表された4つの「ブリッジ」。これらを踏まえ、Windows 10での10億台市場をターゲットにアプリ実行環境を整備する。しかし、Windows Bridge for Web apps以外の施策は予定が遅れている状況だ

 これが、現時点でのWindows 10の状況だ。2015年末時点では目標も道半ばで、ちょうど中間報告が上がってきた段階という、まさに折り返し地点にいる。1年後にあらためて振り返って、どこまで状況が進んだのか注視してみてほしい。もっとも、終わりのないマラソンなので、折り返し地点から戻ってきても最終的なゴールは存在しないのだが……。

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