Facebookが描く今後10年の成長戦略とは?:文字、写真、動画、そしてVRへ(2/3 ページ)
Facebookの年次開発者イベント「F8」。マーク・ザッカーバーグCEOは、Facebookのこれまでとこれからをプラットフォーム、プロダクト、テクノロジーの3つに分けて語った。
メッセンジャー中心のプラットフォーム拡充
コネクティビティーの話に加えて、F8のテーマとなったのは「メッセンジャー」の強化だ。2015年のF8から「Messenger Platform」を披露し、メッセンジャーでのコミュニケーションに、サードパーティーのアプリのコンテンツを活用できる仕組みを作り出した。
Facebookが2016年のF8で披露したのは、チャットボットを活用したサービス提供の手段だ。
チャットボットというと、2016年のトレンドでは人工知能を思い浮かべる方も多いかもしれないが、必ずしも人工知能を活用する必要はない。どちらかというと、これまでモバイルWebやアプリで提供してきたサービスを、対話型に置き換えてメッセンジャー上で提供できるようにするアイデア、と捉えた方がよい。
例えば、航空会社であれば、持っている航空券のチェックインをメッセンジャーの企業アカウントから済ませることができる。あるいはコマースサイトであれば、ユーザーが欲しい商品のジャンルや価格帯などの選択肢をボタンで返信し、オススメの商品を絞り込んだ状態で表示できる。もちろんレシートもメッセンジャーで受け取れる。
これまで、モバイルWebからアプリへと、モバイル活用の方法が進化してきたが、ここにきてメッセンジャーでの対話型インタフェースへと歩みを戻したように見える。このことは、前述したフルサイズのモバイル体験ができる人々の方が、世界的には少ない点への対応とみている。
メッセンジャーがビジネスのインタフェースになる
アプリではなくメッセンジャーを活用する手段を提供したのは、非常に簡単な理由だ。ターゲットとしている人々が、メッセンジャーしか持っていないからだ。
例えば、2G回線でモバイルを利用している人々にとっては、新たなアプリのダウンロードは非常に大きな負担になる。また使用しているスマートフォンの空き容量が少ない人々は、一度入れたアプリも、使い終わったらすぐに消してしまう。しかし、メッセンジャーのように、継続的に友人とコミュニケーションをとるためのアプリは、消されず端末に残り続ける。
同じことが、若者のモバイル利用にも現れる。頻繁に出張に行くビジネスパーソンとは違い、たまにできるだけ安いチケットで帰省する程度の若者が、果たして航空会社のアプリやマイレージプログラムに興味を持つだろうか。よりインスタントに、しかし関係性を結びたい場合、メッセンジャーでの会話を有効な手段として活用できるようにすることは、先進国におけるメリットもあるだろう。
同じことは、既に日本で起きている。
LINEはスタンプの送受信機能を持っており、ユーザーにとってはコミュニケーションに欠かせない手段として、またクリエイターや企業にとっては、活躍やプロモーションの手段として、定着している。またLINEには企業アカウントが既に存在しており、企業から個人への情報提供の手段として役立ってきた。
3月24日には、ビジネス向けにプラットフォームのオープン化をアナウンスしており、ショップカードやクーポン、オンラインショップ、ビーコン受信など、どちらかというとリアルな店舗での連携機能を強化している。
Facebookと比較すると、LINEの取り組みの方がより先進的だ。よりマーケティング志向に、あるいはリアル連携を意識した機能を投入できているからだ。筆者は個人的に、日本の方がモバイル活用が5年単位で進んでいると捉えており、さほど不思議には思わない。
FacebookもLINEを後追いする可能性は高いと思うが、現在Facebookは、モバイルWeb、アプリに続く新たな顧客との窓口として、メッセンジャーを活用できるようにすることの、世界におけるインパクトを評価しての施策であると考えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.