もう「自称オリジナル」にダマされない 隠れ海外OEM製品の見抜き方:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
自社開発力がなく、リスクを回避して手っ取り早く知名度を上げたい新興メーカーは、海外OEM製品を自社製品として販売するケースがある。最近クラウドファンディングでも見られるOEM元隠しの手口には、メディア関係者ですらだまされることも少なくない。
メディアが好みそうなストーリーを用意する自称メーカー
以上、お決まりの「手口」を見てきたわけだが、ユーザーとしてはまず何よりも「この自称メーカーは、本当にこれだけの製品を開発する技術力があるのか」と疑ってかかるのが、こうしたOEM製品にダマされない第一歩だ。
そもそもこれまで名前も聞いたことのないメーカーが画期的なオリジナル製品を作れる技術力があるのなら、過去に類似の発表を行っているのが普通だし、もし長い下積み期間を経てようやく製品の発表に至ったのであれば、その開発ストーリーを自ら語りたくなるのが普通だ。それがないのは自社内に開発ストーリーがない、つまり技術力がないと自ら明かしているようなものである。
海外には、日本のOEMビジネス向けに製品を売り込む専門の商社も数多く存在しており、ある自称メーカーの製品ラインアップは実は全てがたった1つの商社経由で仕入れられている、というケースもある。
過去に他のメーカーで実務経験のあるスタッフが中にいると、こうしたOEMビジネスのルートを知らないわけはない。それゆえ大変な手間と時間をかけて自社開発を行うのではなく、既存のOEM製品を取り売りする方向を選択しがちだ。「将来は自社開発も行いたいが、まずは当面の利益を上げるため」とOEMビジネスに着手した結果、OEMしかできない自称メーカーになってしまった例は数知れずだ。
こうした製品を発表する際は、海外製品がベースであることが露見したときのために「自社なりのこだわりを持って海外製品に手を加えた」という、メディアが好みそうなストーリーを事前に用意し、それを逃げ口にするのが常とう手段である。
しかし、実は色やロゴしか変わっておらず、後は日本の法令に合わせるために施さざるを得なかった修正を、独自性と言い張ってしまうケースもしばしばだ。仕様を変えている場合でも、元のOEMメーカーがカスタマイズ可能としている範囲内で変えているだけなので、オリジナル性は極めて低い。
言い換えると、よほど「前職でできなかったことを実現させる」と息巻いているケースを除けば、こうしたメーカー出身者が母体となっているメーカーは、OEMビジネスを熟知しているゆえ、逃げに走りやすい。
むしろ大学発のベンチャーなどの方が、スケジュールやコスト面での経験値の低さから納品周りのトラブルが起こる可能性はあるものの、技術力をベースにしたオリジナル性の高い製品を生み出す可能性は高い。クラウドファンディングにせよ何にせよ、こうしたメーカーの方が開発ストーリーを語ることができ、ユーザーとしても納得して支援したくなる存在ではないだろうか。
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