無駄じゃない? 小さな製品のパッケージが巨大になる理由:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
本体が小型化し、マニュアルの簡略化やドライバCDの省略も進んだが、店頭で目にするPC周辺製品のパッケージは相変わらず巨大だ。パッケージの小型化が進まない理由について、メーカー側と販売店側それぞれの事情を探ってみよう。
パッケージは輸送箱のサイズから逆算して作られる
さて、パッケージサイズが肥大化するもう1つの理由は、メーカーが定める「規定梱包」の関係によるものだ。パッケージが小さくならない理由の本命は、むしろこちらといっていい。
あらゆる製品には、輸送箱ごとの封入数を定めた「規定梱包数」なる単位が存在している。規定梱包数は少なければ数個、多ければ100個とかなりの幅があるが、1つの輸送箱にその数がぴったり収まるよう計算されている。
身近なところだと、食玩などで10個のパッケージが1つの展示箱に入ってコンビニの店頭に置かれているのは、「規定梱包数=10」ということになる(食玩は、実際にはさらにカートン単位の規定梱包があるが、ここでは話を単純化するため省略する)。
販売店からの注文をこの規定梱包単位で請けるようにすれば、メーカーは工場から納入された輸送箱をわざわざ開梱して数量を調整しなくて済むので、発送時の手間がかからないほか、荷受をする販売店側にとっても検品が容易になる。特に食品や化粧品などでは、規定梱包以外の端数での注文はNGというケースがほとんどだ。
規定梱包数はメーカーのWebサイトやカタログにも、取引先向けの情報として「規定梱包数=12」などと書かれていたりするので、これまで知らなかった人は、意識して見てみると面白いかもしれない。
さて、規定梱包数は輸送箱のサイズを統一して物流コストを下げるのを目的に考え出されたものであり、パッケージサイズは全く異なる製品でも、規定梱包単位だと同じ体積になるよう設計されている。
例えば、製品Aのパッケージの体積が製品Bの2倍であれば、製品Aの規定梱包数を5、製品Bの規定梱包数を10にすることで、体積は同じになる。こうすれば同一の輸送箱が使えるため、輸送コストも等しくなる。混在してパレットに積んだり、コンテナに詰め込んだりするのも容易になるというわけだ。
現実的には、ありとあらゆる製品を1種類の輸送箱でまかなうのは難しいため、数種類の輸送箱を用意し、どれかに適合するようにしておくのが常である。
もし、イレギュラーに小さい製品が出てきた場合でも、最終的には輸送箱にぴったり収まるサイズにする必要があるため、パッケージのむやみな小型化はできない。あくまでも輸送箱ありきで、そこから逆算してパッケージサイズは割り出されるのだ。
これが、製品の小型化や付属品の減少にもかかわらず、パッケージがなかなか小さくならない最大の理由だ。戦略的な事情で特殊なパッケージサイズを採用するといった判断がない限り、この原則が崩れることはない。
不ぞろいなパッケージサイズが意味するもの
もっともこれは、製品開発のほとんどのプロセスを自社主導で行っているメーカーの場合だ。OEM(ODMを含む。以下同)製品の場合、OEM元からパッケージの型紙が提供され、それに合わせて国内向けのパッケージデザインが起こされる。こうした場合、どんな詰め方をしても自社の輸送箱にぴったり収まることのない、イレギュラーなサイズのパッケージが誕生することになる。
それゆえ、不ぞろいなパッケージサイズを見ると、その製品がOEMかどうか判別する1つの手掛かりになる。OEM製品でも自社オリジナルのパッケージを起こす場合もあるので「パッケージサイズがきっちりそろっていればOEMではなくオリジナル」というわけではないが、その逆、つまり「他とはパッケージサイズが不ぞろいな製品はOEM」である可能性は、かなり高い。
もちろん「OEM製品=悪」というわけではないが、他社製品のOEMであれば同一製品が他のルートで流通していることも多く、そちらの方が安価に入手できることもあるので、必要以上にこだわらなくともよい。自社のオリジナル製品なのか、それともOEM製品なのかは、こうした思いもよらないところからも判別できるのだ。
関連記事
- 牧ノブユキの「ワークアラウンド」バックナンバー
- 反則スレスレの手口で店舗に新製品をねじ込むメーカー営業マン
店頭に製品を並べたのに売れないならまだしも、店舗に製品を導入することさえできなければ、それはメーカーの営業マンの責任だ。そのため、会社に対して責任を果たしたことをアピールするため、あの手この手を使って店舗に製品を送り込もうとする。 - もう「自称オリジナル」にダマされない 隠れ海外OEM製品の見抜き方
自社開発力がなく、リスクを回避して手っ取り早く知名度を上げたい新興メーカーは、海外OEM製品を自社製品として販売するケースがある。最近クラウドファンディングでも見られるOEM元隠しの手口には、メディア関係者ですらだまされることも少なくない。 - 「これまでなかった新発想の製品」をライバルメーカーはなぜ軽視するのか?
「これまでなかった新発想」などと華々しいうたい文句で登場する新製品に対して、ライバルとなるメーカーは意外なほど興味を示さず、静観していることがほとんどだ。これは決して製品化するための技術力や企画力がないわけではない。 - 同じ型番の製品を買ったら仕様が違っていた そんなのアリ?
製品の仕様が変わると型番も変わるのが常識だが、さまざまな事情から同じ型番のまま販売が継続されることもある。中にはメーカーのサポート担当者が知らないうちに、製品の仕様がこっそりと変えられているケースまで存在するのだ。 - PC周辺機器界に「ペヨング」は生まれない?
「ペヨング」のような特売を意識したブランドは多くの業界に存在するが、PC周辺機器業界では、量販店で特売に使われるという意味では同様ながら、明らかな格落ち製品となるケースがしばしばだ。その理由について見ていこう。 - 言うだけ無駄? こんな要望はメーカーに採用されない
メーカーにどれだけ適切な方法で意見や要望を伝えても、全く相手にされないのには理由がある。言っても無駄な要望とは? - 「なぜ、この製品をこうしないのか」 メーカーがあなたの要望を聞かないワケ
製品に対する意見や要望をメーカーに伝える際、その表現や伝達ツールの選び方が間違っていると、せっかくの伝えようとする努力も無に帰してしまう。今回はこうした、メーカーに対する効果的な要望の出し方について、あらためて考えてみたい。 - 「これじゃ日本では売れないよ」 海外のPC周辺機器にありがちな残念ポイント
海外のPC周辺機器やアクセサリは、そのままでは国内で販売できないものも多い。色や形状、製品の特性など、思わぬところに日本のユーザーから敬遠されるポイントがあったりするからだ。 - 「どうしてこうなった……」という製品がロングセラーになる理由
「こんなの売れるわけないじゃん」という製品が、意外と延命できてしまうことは、PC周辺機器やアクセサリの業界では少なくない。こうした場合、コンシューマー市場とはまた異なる、表からは見えにくい販路が存在しているケースは少なくない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.