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林信行のTouch Bar搭載「MacBook Pro」徹底レビューAppleが描いた未来(4/5 ページ)

新しいMacBook Proの魅力は? Touch Barは本当に便利なのか? Thunderbolt 3全面移行の是非は? 林信行氏が徹底レビュー。

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潔すぎるThunderbolt 3全面移行とその先に見える未来

 新しいMacBook Proには、もう1つ期待と不安が交じる仕様変更がある。周辺機器を接続するポートがThunderbolt 3(USB Type-C端子)に全面移行したことだ。とりあえず、これまでMacBook Proになんらかの外部機器を接続していた人は、すべてのケーブルやアダプタを買い換えることになる。バックアップ用に外付けHDDをつないでいた人は、ケーブルを取り替えるか900円(以下、価格はすべて税別)のUSB-C USBアダプタを間に挟まないといけない。Thunderbolt 2接続のHDDを使っていた場合は3200円のThunderbolt 3(USB-C)-Thunderbolt 2アダプタだ。

左右両側面、計4基のThunderbolt 3(USB Type-C端子)以外はヘッドフォン出力だけに整理されたインタフェース

 iPhone、iPadとの接続にはUSB-C Lightningケーブルが必要だし、出先でプロジェクターにつないでプレゼンテーションをする人や、自宅/オフィスで外部ディスプレイをつないでいる人はHDMIやVGAアダプターを買い直す必要がある。

 これまでのMacBook Proのように、デジタルカメラから取り出したSDメモリーカードを接続するスロットもなくなってしまったので、こちらもアダプタを買わなければならない(個人的には将来のMacBook Proには高速な無線データ転送技術「TransferJet」を採用してほしい。これがデジタルカメラでも標準化されれば、かなり便利になるはずだ)。

 これまでの接続がすべて使えなくなるというのは、日々の業務に追われているプロユーザーにはそれなりの負担になる。「ケーブルを忘れた!」に起因する失敗(しかも、しばらくは周囲の人に借りることもできない)になりかねないので、精神的負担も大きければ、金額的な負担も大きい。

 こうした声を受けてAppleは2016年内に限りThunderbolt 3関連のアダプタ類を約半額で提供するキャンペーンを実施している。先ほどの「USB-C−USBアダプタ」も通常価格は2200円なのでかなりお得だ。MacBook Proを今すぐ買わない人も、いずれ購入する気があるのならばこの機会に買っておくべきかもしれない。

Thunderbolt 3への移行により、周辺機器との接続は当面、変換アダプタが必要になる。このため各アダプタは値下げキャンペーン中

 Appleはなぜ負担を強いてまでThunderbolt 3(USB Type-C)に全面移行したのか。

 理由の1つは、これこそがケーブル接続の理想形と同社が考えているからだろう。何しろ電源をつなぐのも、HDDをつなぐのも、ディスプレイをつなぐのもケーブルは基本的に1種類だ。いずれ対応プロジェクターが出てきたとしよう。プロジェクター接続用ケーブルを忘れてしまったら、電源アダプタにつないでいるケーブルを片方引き抜いてプロジェクターに挿し直せばいい。パソコン史においても、ここまで柔軟性の高いインタフェースはこれまでになかった。まさにThunderbolt 3はすぐそこまでやってきた究極の接続技術なのだ。

 しかも、理論上の性能は最大40Gbps。最大2台の5Kディスプレイをドライブできる性能を持つ。最先端の高品質映像を作りたいほとんどのプロフェッショナルの要求に応えてくれるだろう。

 あいにく筆者の元にはこれだけのハイパフォーマンスを引き出すディスプレイやストレージ環境がないので、使い勝手や将来性の話に絞りたいが、ちょうど前回のMacBook Proレビューを行なったタイミングから集め始めていたThunderholt 3/USB Type-Cの周辺機器を2つほど借りることができたので、これらを通して少しだけ未来のワークスタイルを紹介しよう。

 まず1つ目は、TUNEWEARの「TUNEWEAR ALMIGHTY DOCK C1」という製品。名刺入れを一回り細くしたサイズのアダプタに、HDMI端子(Ver 1.4/4K対応)と3つのUSB Type Aポート(うち外部機器の充電に対応しているのは1つのみで1A)、有線LANポート(1000Base-T)、SDメモリーカードおよびmicro SDカードのリーダー/ライターが凝縮されており、さらにUSB Type-C端子も1つついている。MacBook Proの電源アダプタの先にこれをつないでおけば、なくなってしまったSDメモリーカードの読み書きはもちろん、これまでのMacBook Proになかったmicro SDカードの読み書きや、別途アダプターが必要だったネットワークケーブルの接続まで可能になる。

 外装はアルミ削り出しで重量は74g、税込8980円だが、11月末までは1000円引きで販売される。本体のサイズ、取り回しのよさ、そして価格的にも、3〜4個のアダプタをバラバラに買うよりよさそうだ。

TUNEWEAR ALMIGHTY DOCK C1

 G-Driveからは、iPhone 7とiPhone 7 Plusの間くらいのサイズの超薄型SSDドライブ「G-Drive slim SSD USB-C」を借りた。実売価格は3万5000円弱。USB 3.1規格のUSB Type-C接続で最大540MB/秒と、屋外ビデオ編集などの頼もしいお供になりそうだ。しかも、ケーブルを忘れても、MacBook Proの電源アダプタケーブルを挿し直すだけで接続できる。

G-Drive slim SSD USB-C

 こうした周辺機器に加えて、最近ではUSB Type-C接続の液晶ディスプレイも発表され始めている。これらのディスプレイの多くが電源アダプタとしての機能も備える。つまり、ディスプレイから伸びたUSB Type-CケーブルをMacBook Proに挿すだけで、充電とディスプレイ接続が同時にできるのだ。さらに製品によっては、ディスプレイ側にUSB Type AやCのハブがあるので、これまで使っていたUSB Type A接続の外付けHDDなどをディスプレイ側に接続しておけば、1本のケーブルで電源から映像出力、ストレージ接続までできる。

 まさに未来の理想のワークスタイルと言えそうだ。ただし、本当にこの理想通りになるかどうかで注意すべきことがある。それはディスプレイからの電源供給が何W(ワット)に設定されているかだ。

 13インチMacBook Proに付属する電源アダプタは61Wで、ディスプレイ出力と充電を同時にまかなうためには、これ以上の電力供給ができる製品を選ぶ必要がある。15インチモデルはさらに消費電力が高く、付属のアダプターは87Wだ。

 USB Type-C対応のディスプレイは多いが、これだけの電力で電源供給できる製品はまだ少なく、他のディスプレイを購入するとせっかくUSB Type-C対応ディスプレイなのに、ディスプレイ接続用とは別に電源用のUSB Type-Cケーブルも接続しないといけないことになる(それほど大きな手間ではないかもしれないが……)。

 ちなみに、ここまですべてThunderbolt 3でもない、Thunderbolt 3規格が内包するUSB Type-C仕様の中だけの話だ。それでもこれだけの恩恵がある。ここにThunderbolt 3の高速接続を生かした周辺機器が出始めたらと想像すると夢は広がる。

 現在、ビデオ機器やRAIDの外部ドライブなどでガチガチにシステムを固めている人は、忙しい年末の時期に慌てて新型MacBook Proに移行をするのはリスクが大きいかもしれない。しかし、2017年以降のもう少し落ち着いた時期になったら、周辺機器の増加状況も見つつ、Thunderbolt 3/USB Type-Cに移行するメリットをじっくり考えてみるのもいいかもしれない。

 周辺機器が充実するまでには、もう少し時間がかかりそうだが、今すぐにでも感じ取れるメリットはある。Touch Bar付きMacBook Proの左右両側面に2つずつ搭載されたThunderbolt 3ポートは、いずれも充電にも給電にも対応している。これまで電源アダプタのケーブルといえば、本体の左側面に接続するのがMacユーザーの常だったが、これからは左右どちらでも都合のいいポートを利用できる。

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