「Pokemon GO」の人気によって脚光を浴びるAR(Augmented Reality:拡張現実)。しかし、開発元の米NianticはARをいわゆる「現実にデータを付加した世界」とは考えていないという――。
NianticにとってのARは“Adventures on foot”
11月16日に行われた、グリーと一般社団法人VRコンソーシアムが共同開催する「Japan VR Summit 2」のトークセッションに米NianticのPokemon GOゲームディレクター野村達雄氏が登壇した。
もともとはGoogleで「Google Map」を作っていた野村氏。エイプリルフールネタでGoogle Map上にポケモンを出現させたところ受けが良かったので、そこからポケモンGOを作ることになったという。
そんな野村氏は「Nianticは“AR”を『Adventures on foot』(自分で歩いて冒険しよう)と再定義しています」という。
一般的に“AR”というと、現実世界のある位置にアイテムやポケモンなどを置くような、いわゆる“拡張現実”を思い浮かべる方が多いだろう。しかし野村氏によれば、ポケモンGOやIngressによってユーザーを外に連れ出し、「ユーザー自身の現実が拡張される」ことこそが「NianticにとってのAR」と説明した。
つまり、単なる「現実+データ」をARと捉えているのではなく、「ゲームなどの手段によって活動領域が広がった現実世界」こそARだと考えているということだ。
そういう意味でポケモンGOやIngressは、彼らの拡張現実にユーザーをうまく連れ出せたといえる。
HoloLensでMRの世界は到来する?
「ARという分野は裾野が広い。広義に考えるとマップのナビゲーションだってARの1つです。一見関係なさそうなものもARに関連してきます。例えば自動車の自動運転。自動運転を実現するための情報技術と『HoloLens』のような眼鏡型の端末が組み合わさると、世界の情報がぱっと目の前に映る世界が割とすぐに来るのではないでしょうか」と野村氏はMR(複合現実)の世界が近いと考えるのに対し、セッションに登壇したコロプラの社長である馬場功淳氏は「私はどちらかというと否定的です」と逆の考えを示した。
「現実世界に100%正確にデータを配置するような、人々が思い描くARの実現にはまだまだ時間がかかると思います。位置情報を現実と仮想とで完全に同期させるには技術が足りません。ただ、ポケモンGOのなにがすごいかというと位置が100%正確ではなくてもいいところ。そんなに合っていなくても面白い」(馬場氏)
「正確に合わせるのはその通り無理だと思います。ですが、子どもがポケモンGOをすれば本当にそこにポケモンがいると信じてもらえますし、技術が進化していく中でいろいろなアプリケーションが出てくると、このように説得力のあるものが出てくるんだろうなと思います」と野村氏はARやMRの未来について明るく語った。
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