Appleが「HomePod」を作った理由:ITはみ出しコラム
AmazonやGoogleが先行するスマートスピーカー。Appleの「HomePod」は後発になりますが、違いはやはり音楽へのこだわりのようです。
米AppleがWWDC 2017でSiri搭載のホームスピーカーを発表しましたね。名前はSiriスピーカーではなく、「HomePod」でした。MP3プレーヤーの「iPod」やワイヤレスイヤフォン「AirPods」の系譜です。
名前からして、「このスピーカーは(スマートスピーカーというよりも)音楽のためのものだ」と主張しています。HomePodに入っているSiriの役割は、主に「musicologist(音楽学者)」としてユーザーのニーズに合った音楽を提供することであって、家電の操作や天気予報は“ついで”のような感じです。
WWDCでフィル・シラー上級副社長は「無線で素晴らしい音を届けられるけれど、スマート機能がないスピーカーを作るメーカーもあれば、話しかけられるけれど、音質はそれほどでもないスマートスピーカーを作るメーカーもある」と言いながら、SonosとAmazonのスピーカーの絵を見せて、「Appleはこれを統合させたかった」と説明しました。
その後も主に音についての説明が中心でした。最後に価格を発表するときも、「無線オーディオスピーカーとスマートスピーカーの価格を足したら400〜700ドルになるけど、HomePodはわずか349ドル」と説明。競合とみられるAmazon EchoやGoogle Homeよりずっと高いのに、この説明に会場からは拍手が起きました。
音のよさについては、実際に聴いてみないことには何とも言えませんが、WWDCのセッションルームで試聴会に参加した米Mashableは、HomePodの音は(比較用に部屋に置かれていた)Sonosの「Play:3」よりずっとよかったと書いています。「音は単に大きいのではなくリッチだ。高音はシャープだがひずまず、低音は深く、朗々としているが主張しすぎない」そうです。
オーディオ専門メディアの米What Hi-Fiは、ペアにした2台のHomePodで「ホテルカリフォルニア」のライブ版を聴いたところ、「楽器の音が立体的で、ライブ会場にいるようだとまでは言えないが、非常に印象的だった」としています。なんだかよさげです。
ちょっと意地悪な見方ですが、音楽サービスの「Apple Music」を抱えるAppleとしては、AmazonとGoogleがApple Music以外の音楽サービスと連係するスマートスピーカーを普及させていくのを手をこまぬいて見ているわけにもいかず、かといってただの後追いもできず、でこういう路線になったんじゃないでしょうか。Apple Musicがなければ、スマートスピーカーなんて作らなくてもよかったんじゃないかと、ちょっと思います。
ティム・クックCEOは米Bloomberg Businessweekのインタビューで、HomePodをスマートスピーカーとしてよりもホームスピーカーとして紹介したのはなぜかと問われ、「家でのSiriへの命令ならiPhoneで十分だ」と語りました。
「私の目覚ましはiPhoneだし、iPhoneにおはようと言うと部屋の照明や空調がセットされるようにしています。Apple TVも、iPadも、Macも、家でのそれぞれの役割を果たしています。足りなかったのは家での音楽だけ」だったので、HomePodを作ることにしたのだそうです。
HomePodに349ドルも払うと思うかという質問には、「iPodを発表したときのことを覚えていますか? 多くの人がMP3プレーヤーなんかに399ドルも払う人がいるのか、と言いました。iPhoneのときも、iPadのときも同じでした。Appleには、人々が欲しくなることを理解できないような製品を提供してきた実績があります」と答えました。確かに。
「私の若いころは、オーディオが必携アイテムリストのトップでした」と56歳のクックさん。この世代だと大学のころにウォークマンが登場したので、それまでは部屋でのオーディオセットにお金を掛けていたのでしょう。
今どきの若者はどうなんでしょう。家でもiPhoneだったりしないのかな。
HomePod、米国(と英国とオーストラリア)では12月発売予定で、日本での発売についてはまだ発表されていません。Apple Musicユーザーの皆さんは買いますか?
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