「白い製品」に「白いケーブル」を添付できないメーカーの裏事情:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
機器本体と、ケーブルやACアダプターの色が一致していないことはよくある話。ユーザーから見ると「なぜそんな簡単なことができないのか」と不思議に思ったりもするが、企画担当や開発担当などからすると、そう簡単な話ではない。
気にならなくなるのは「感覚のマヒ」なのか
実際のところ、PC周辺機器などの開発に長年携わっていると、機器本体とケーブル、ACアダプターの色が一致していないことは、たとえ気付いてはいても、ほとんど気にならなくなってくる。
しかもよりによって、それらの変更に携わることが可能な企画担当者や開発担当であるほど、その傾向が強い。それは場数を踏むごとに、ここまで述べたようなハードルの高さを実感する機会が増え、いつしか考慮すべき対象からも外れてしまうからだ。
一般のユーザーから見るとこれは「感覚のマヒ」と捉えるかもしれないが、メーカーの側にいると最適化と効率化を突き詰めた結果でもある。ケーブルやACアダプターの色を統一することで原価が上がり、販売価格も上がっても、販売数量が逆に2割や3割増えるのか、という視点で考えるメーカーに対して、一般ユーザーはそうした視点を持たないというだけだ。
もし、これらの問題を度外視できるとすれば、それは製品をトップダウンで作れるメーカーくらいだろう。ずばり言うとAppleがそれに当たるわけだが、これにしても同社がそうした取り組みで実績を作り、ブランドイメージを構築できていることがバックボーンにあるからで、あるメーカーが突然同じ取り組みを始めても、目に見えて売り上げに影響を与えることはないだろう。
余談だが、Appleの製品の中でも、ケーブルやACアダプターと本体の色が統一できていない製品は存在している。つまり目立たないところはきっちり抜いているわけで、むしろそうした例外に目を向けてみる方が、ケーススタディーとしては面白いだろう。
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