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スマホやPCの周辺機器はこうして「突然死」する牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

PC、スマホ、タブレットの周辺機器やアクセサリーは、それまで絶好調で販売されていたにもかかわらず、本体機器のモデルチェンジによって終息を迎えることが日常茶飯事。しかし中には、製品のモデルチェンジなどとは異なるイレギュラーな理由によって、販売を打ち切らざるを得ないケースも出てくる。

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 PCやスマートフォン、タブレットの周辺機器やアクセサリーは、どれだけ販売が好調な製品であっても、本体機器のモデルチェンジによって、ある日いきなり終息を迎える。これは特性上どうしようもないことで、サードパーティーメーカー各社も、それを見込んだ上で価格設定をするのが普通だ。

 もっとも中には、本体機器の終息以外のイレギュラーな理由で、製品の生産や販売を打ち切らなくてはいけないケースもある。いわば「突然死」だ。想定していたよりも早く終息を迎えることから、メーカー社内では上を下への大騒ぎとなる。具体的にどのようなケースがあるのか、今回はその事例を、タイプ別に紹介しよう。

どちらが先に終息させる? ライバルメーカーとのチキンレース

 まず一つは、本体機器の進化によって、周辺機器やアクセサリーのニーズがなくなる場合だ。例えばノートPCにおけるWi-Fiの搭載率が高まったことで、外付けのWi-Fiカードやアダプターが単体で売れなくなったケースがこれに当たる。対応製品がピンポイントで消滅するのではなく、市場全体でニーズがなくなっていくことが特徴だ。

 これらについては、一気に切り替わるわけではないので、サードパーティーのメーカーとしても大慌てというわけではない。ただし後継製品を出せば売り上げがある程度維持できるケースと異なり、ニーズ自体がなくなることから、同等の売り上げを稼げる商材を急いで確立させなくてはいけないという、別の意味で難しい対応を強いられる。

 また厄介なのは、新新品に対するニーズはなくなっても、古い製品に対するニーズはいまだ残っており、完全に廃番にできないことだ。前述のケースであれば、Wi-Fiを搭載しない旧来のノートPCは市場にゴマンとあり、それらと組み合わせて使いたいユーザー向けには、まだしばらく製品を提供し続けなくてはいけない。

 「そんなの早めに損切りしてしまえばよいのでは」と思うかもしれないが、現実的には難しい。なぜなら、数量や売り上げベースでは微々たるものであっても、客が要望する製品がラインアップにないと、そこにライバルメーカーが製品をねじ込んできて、下手をすると定番の座を乗っ取られかねないからだ。そのため、ライバルメーカーが終息するまでは自らも終息させないという、チキンレースが展開されることになる。

 もうひとつは、周辺機器自体が進化して旧世代の製品が淘汰(とうた)される場合だ。例えば光学式マウスの普及によってボールマウスが淘汰されるような事例がそれに当たる。旧世代の製品の欠点をカバーした新世代の製品が登場することで、完全に代替わりしてしまうパターンだ。

 これは旧世代の製品がすぐに使えなくなるわけではないので、慌てて切り替える必要はないとはいえ、ライバルメーカーに後れを取らないためには一刻も早いモデルチェンジが必要で、結果的につい先日までバリバリの現行品だった品が、それ以前は考えられなかった処分特価で流通することになる。結果的に「突然死」に似た現象が発生するというわけだ。

まさに「突然死」の典型例だった、Dockコネクター対応周辺機器

 一方、本体機器メーカーがインタフェースを変更したことで、従来の周辺機器が使えなくなるケースでは、文字通りの「突然死」が起こりがちだ。iPhoneやiPadがDockコネクターをLightningコネクターに切り替えた場合がその典型例で、あらゆる製品のインタフェースが一斉に切り替わるので、被害は甚大だ。

 中でもダメージが大きかったのは、iPhone本体をセットして使う外付けのスピーカーのように、Dockコネクターでの接続を前提とした周辺機器だ。これらは一体感を売りにしていただけにダメージは図り知れず、投げ売りするも買い手が現れないという悲惨な状況に陥った。iPhoneユーザーは一つの製品を長期にわたって使うことはあまりなく、新製品に乗り換える傾向が強いことも、マイナスの方向に働いた印象だ。

 コネクター形状が変わるかもしれないという情報を事前に察知していたメーカーは、ラインアップを拡充せずにダメージを最小限にとどめることができたようだが、中にはLightning搭載iPhoneの発表後にDockコネクター搭載スピーカーの新製品を発表するサードパーティーメーカーがあったりと、企画にストップをかけられなかったケースもあったようだ。

 Appleはその後、「Made for iPhone」プログラムを本格的に稼働させたわけだが、この件はサードパーティー各社にとって、特定の製品にべったり依存する周辺機器を作るリスクを知らされる出来事になったことだけは間違いない。近年、iPhoneと組み合わせて使う周辺機器は、まずクラウドファンディングから出発するケースが増えたのも、この件と決して無関係ではないだろう。

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